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 第200話 『 昨夜はお楽しみでしたね 』



 「……………………朝、か」


 ……窓から射し込む朝日の眩しさで俺は目を覚ました。

 セシルさんと中庭で月光浴をした後、部屋に戻ってすぐ眠りについた為目覚めは悪くなかった。


 (……遂に今日は決勝戦か)


 俺は自分の頬を叩いて気合いを入れ直した。


 「……よし、取り敢えず朝ごはんでもしましょうか、セシルさん」


 隣で寝ているセシルさんを起こして朝食に誘う。


 「――」


 ……そして、言葉を失った。


 「……おや、もう朝でしたか?」


 セシルさんが身を起こして眠たげに目を擦る。



 ――裸で……。



 「……? 私の顔に何か付いていますか?」


 まじまじと見つめる俺にセシルさんは可愛らしく首を傾げ、俺の視線が顔ではなく身体へ注がれていることに気づく。

 そのまま視線は下へ降りて行き……。


 「――」


 ……そして、固まった。


 「どっ、どどどどどうして裸なんれすかぁっ!!?」


 セシルさんは顔を真っ赤しにて俺に問い詰める。


 「いやいや、俺の方こそ聞きたいですよ! 昨晩一体何があったんですか!?」


 俺も心当たりが無かった為、逆に訊ね返す。


 「昨晩はあの後は二人で寝室に戻ってすぐに就寝しました、よね?」

 「はい、そこまでは俺も覚えてます」


 問題はその後であった。


 「その後、二三言話して眠りました、よね?」

 「はい……いや、ちょっと待ってください!」


 ……そこで俺は思い出した。


 昨晩は満月であったこと。

 過去にペルシャが言っていた言葉。


 ――セシルさんは淫魔の家系で満月の夜になると性欲が高まって、無意識に男の子を襲いだすんだよ!


 「……えっ? では、私が眠っている甲くんを夜這いしてしまった、ということでしょうか?」

 「どストレートに言えばそうなりますね」


 セシルさんは現状を理解したようで、みるみると顔を紅潮させた。


 「~~~~~~~~っ!(///」


 「こっ、これはスーパーストロングローリングサンダー!?」


 毛布にくるまりながらスーパーストロングローリングサンダーをするセシルさんに俺は腰を抜かした。


 「取り敢えず落ち着きましょう!」


 「これが落ち着いていられますかぁーっ!」


 宥めようとしたが、セシルさんは心の整理がついていないようでスーパーストロングローリングサンダーをやめてくれなかった。


 (……てか、俺達昨日シたのか? まったく覚えてないけど)


 キャンディやクリスと同衾したときも言われたが、俺は寝ていると近くにいる異性に襲い掛かる嫌いがあるらしい。


 (……シたのか……あのセシルさんと?)


 可愛くて、


 「……」


 エッチで、


 「……」


 皆の憧れのセシルさんと?



 「――うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ……!」



 ――理解が追い付き、俺は床でスーパーストロングローリングサンダーをした。


 何を!


 何をやってんだよ! 俺ェ!!


 それは越えちゃいけないラインだろ、馬鹿野郎ッ!


 初めてだったのに、こんなあっさりでいいのかよ! いや、良くなかったよ! ダメダメだよ!


 いや、何より許せないっていうか悔しいことは――何で俺は何一つ覚えてないんだよ!


 覚えてたらまだ使えたのに! 俺の心に永久保存して何度だって再利用したのに! 何にーとは言わないけどォ!


 (――いや、諦めるな伊墨甲平!)


 俺は閃き、スーパーストロングローリングサンダーをやめた。


 「絞り出すんだ! 俺の記憶の底からァッッッ……!」


 「いけませんわ、甲くんっ!」


 俺の呟きにセシルさんがスーパーストロングローリングサンダーをやめて制止する。


 「そんなことをしたら消されますよ、運営に!」


 「急にメタいなッ!!?」


 ……消されたくないので回想は始まらなかった。


 「それじゃあ、決勝戦頑張りましょうか! ねっ、セシルさん!」


 「今っ! その台詞、今言う状況じゃないですよね!?」


 「えいえいおーっ!」


 「現実逃避しないでください!」


 ツッコミを入れるセシルさんを無視して、俺は一人円陣を組んだ。


 「落ち着いてください、セシルさん……俺、今気づいたんですけど」


 俺はセシルさんの肩に手を置き、落ち着かせる。


 「俺達、ただ裸で寝ていただけでヤった証拠なんて何一つ無くないですか?」


 「……たっ、確かに!」


 俺の言葉にセシルさんはハッと息を呑む。


 「もしかして寝苦しくなって服を脱いじゃったのかもしれません!」


 「確かに昨日は暑かったかもしれませんわ!」


 俺の推理にセシルさんは目から鱗が落ちたような顔をした。


 「そうですよ! 明日、決戦があるっていうのにヤる訳ないじゃないですか!」

 「そうですわ! その通りですわ!」


 ようやく俺達は互いに納得の出来る結論に至る。



 ――コロッ……。床に瓶のような物が転がっていることに気がついた。



 (……あれは確か)



 避妊薬配合ローション――《ノーベイビーEXα》。


 160㌘、一瓶約20回使用可。


 ¥.3,980イェン



 「……………………あっ」



 ……開いてる。しかも、空っぽだ。



 「……」


 真実なんて糞食らえだ。


 「……」


 都合が良い言葉を信じたっていいじゃないか。


 「……飯、行きましょうか」



 ……皆様のご想像にお任せしまぁーーーーーすッ!!!


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