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 第196話 『 ワンサイドゲーム 』



 第十代目当主継承戦第4ゲーム――『キャット&マウス』。


 セシル=アスモデウス、ロザリンド=アスモデウス……同列第一位。


 トリシャ=アスモデウス、ジャズ=アスモデウス……脱落。


 残るは6チーム。


 ……そして、現在。第一位のT.ロザリンドとセシル=アスモデウスの従者ナイト――伊墨甲平が対峙していた。







 ――アスモデウス邸、3F。


 「……セシルの従者ナイト、あんたはここで潰す」


 「やれるものならやってみな」


 「……」


 俺とロザリンド・眼鏡の執事が睨み合う。


 (……さっきの高速移動は恐らくあの執事の〝奇跡スキル〟だな)


 ロザリンドは執事の肩に乗ることで攻守一体の機動力を手に入れたのだ。


 (だが、俺を潰した所でハチマキはセシルさんが付けている。俺をどうこうしたってハチマキは手に入らない筈



 ――ロザリンドとその執事は俺の目の前にいた。



 「敵前で考え事なんて迂闊」


 「――」


 トンッ――……。その掌底が俺の額に触れた。


 「 ね 」 



 ――次の瞬間、俺は勢いよく吹っ飛ばされた。



 「――ッッッッッッ!!?」


 何だこの威力!?


 まるで巨大な岩壁に押し出されたようだったぞ!


 「クソッ」


 俺は着地し、姿勢を立て直す。


 「俺を倒したってポイントは獲れねェぜ」

 「――意味ならあるわ」


 ロザリンドは真正面から飛び掛かる。


 「――っ」


 俺はカウンターでロザリンドの顔面を殴り返す。


 「……………………なっ!」


 ……しかし、ロザリンドは微動だにしていなかった。


 「効かないってのっ……!」


 ――強打一撃、俺は強烈な一撃に押し出され吹っ飛ばされた。


 (何でだ!? こちらの攻撃は効いていないのに、奴の攻撃は見た目以上に重い!)


 恐らくそれがロザリンドの〝奇跡スキル〟であろう。

 こちらの攻撃は打ち消され、あちらの攻撃は増大される……そんな所か。


 「あんたを倒したって意味がない……訳じゃないのよね、それが」


 ロザリンドは凶暴に笑う。


 「あんたをボッコボッコにしちゃえば、嫌でもあんたの御主人様は出てきてくれるでしょうが……!」 


 「つまり俺は餌ってか」


 「正解ッ!」



   韋    駄    天



 ――ロザリンドが一瞬にして目前まで迫る。


 (――っ! こっちの攻撃が効かない以上、回避に徹するしかねェ!)


 俺はロザリンドから逃げるようにバックステップで後ろへ下が



 「――逃げるな」



 ――静止。俺の脚は止まってしまった。


 (……アスモデウスの〝血継術ディープ・ブラッド〟は〝万誘引力アトラクション・ラブ〟! 万物を引きつけ、万人を惹きつける力!)


 「待ってくれてありがとさん!」


 「――ぐッ!」


 俺は真っ向からロザリンドの蹴りを受け、堪らず吹っ飛ばされた。


 (倒すことも逃げることも許さねェってか)


 俺の攻撃は効かない。

 相手の攻撃は強烈。

 回避もガードも許されない。


 (どうすればいい! どうすればロザリンドを倒せる!)


 このままでは最悪セシルさんの足を引っ張ってしまうであろう。それは度しがたいことであった。

 しかし、攻略は容易ではない。

 特に〝血継術ディープ・ブラッド〟が問題であった。


 ――〝万誘引力アトラクション・ラブ〟。


 あらゆる質量のあらゆる状態のものを自身に集める力であり、その能力範囲は他者の精神にまで及び特に異性であれば意のままに操ることも出来るのだ。


 (二対一に加えて攻撃の無力化と超強化に〝万誘引力アトラクション・ラブ〟……正直、分が悪いな)


 現時点に置ける勝機は無い。打開するには何かを変える必要があった。


 場所。

 状態。

 もしくは数?



 「 動くな 」



 ――俺の身体はピクリとも動かなくなった。


 「かわされるのもガードされるのも面倒臭いから止まってもらうわ」


 「――っ」


 俺の意思とは裏腹に身体は静止したままであった。


 「撲殺確定ね♡」


 「……」


 逃げられない上に回避もガードも許されない――詰み、であろう。




 「 ほう、これは面白い状況に出くわしたね 」




 「「「――ッ!!?」」」


 ――俺達は静かな足音のする方へと視線を集めた。


 (……この威圧感! この存在感は!?)


 俺は過去に一度だけそれを見て感じ取っていた。 


 「お邪魔でなければ観戦させてもらってもいいかい?」


 それは第3ゲームを第一位で通過した男。

 それはこの継承戦の大本命。


 「……ガーウィン……アスモデウスッ!」


 「ガーウィンお兄様っ……!」



 ……そう、ガーウィン=アスモデウスが悠然と立っていた。


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