第19話 『 兜の中には? 』
「 解 」
……俺は巻物を開き、大量の水を収納した。
ちなみに、この水は丸一日海で集めた海水であり、やや塩辛い風味であった。
「……ぺっ、やっぱりしょっぱいなぁ」
俺は忍者装束を雑巾みたいに絞った。
(……正直、紙一重だったな)
……数分前、俺は厨房の扉を開き、大爆発に巻き込まれた。
しかし、寸での所で窓を突き破り、中庭へ転がり、事なきを経たのであった。
「火を使う相手だから水遁を使ったが上手くいったな」
お陰で二人目の刺客を完封し、排除することができた。
「……さて」
俺は周囲を見渡した。
「次はどうすっかな」
二人目の刺客を排除したが、奴等の言葉を信じるならまだ三人は残っていた。
敵の動向を読み、先回りしなければならなかった。
(奴等の狙いはペルシャだ。だが、その影武者である姫も危険だな)
……二者択一。優先すべきはどちらだ?
正直言えば、姫の所へ駆けつけたいところだが……。
「……姫は頑固だからなー」
姫は姫で影武者の任を全うしようとするだろう。そんな姫の意志を蔑ろにすることは忍として如何なものであろうか?
「 ペルシャの所へ行くか 」
……それが最善であった。
「そんじゃあ、急ぎますか
――ざわッ……。
「――っ!」
……胸騒ぎがした。
「……ハァ……ハァ」
呼吸が浅く、早くなる。
胸の動悸は加速する。
手汗がじんわりと噴き出す。
冷や汗が頬を滑り落ちる。
……気づけば、
――気づけば、俺はペルシャの部屋とは反対方向へ駆け出していた。
(……この感覚、以前も感じた覚えがある)
まだ、姫の忍として就任したばかりのときに、姫に暗殺者が迫ったとき。
この世界に来る前、城に火を放たれたとき。
……その共通点は?
「姫が危ないっ……!」
……姫に危機が迫っていた。
「……馬鹿なっ」
……黄金の兜の中を見て、一番驚愕したのはクロエさんであった。
「ペリチェさん……。何故、貴女が?」
胴体を真っ二つに裂かれ事切れる侍女――ロロコ=ペリチェ。私はこの女性を見たことがあった。
二番隊に所属していたメイドであり、そばかすが特徴の素朴な見た目の女性であった。
(……まさか、内通者はロロコ=ペリチェか?)
……しかし、その解答には疑問が残る。
同じ王宮に居れば一度や二度、言葉を交わすことおかしなことではないであろう。
だが、その記憶の中の声と鎧の兵士の声は明らかに一致していなかった。
そもそも女性の声と男性の声など、そうそう間違えることはないのだ。
「……ロロコ=ペリチェは偽物か?」
……彼女はただ不幸にも〝偽物〟に選ばれ、私に殺された女性に過ぎなかった。
「鎧の兵士を操っている人間は別にいて、内通者もまだこの王宮の中にいる……ということですかね」
「だと、思われます」
ならば、事態は急を要する。
内通者の狙いがペルシャ様だけとは限らない。この王宮には第二王女であるペルシャ様の妹君も居られる。
妹君には二番隊の隊長が護衛に就いているが、刺客との相性次第では苦戦は必至であった。
「今は妹君とも合流した方が良さそうですね」
「はい、急ぎましょう」
……私はペルシャ様を抱きかかえ、クロエさんと共に部屋を飛び出した。




