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 第186話 『 1/2→1/1 』



 (……購入総額が30000ptの手札は合計で14通り)


 ……わたしは手札を選ぶ振りをしながら思考を巡らせる。


 (更に《魔法使い》のカードが含まれる手札はその中の12通り)


 削除、保留、削除、削除、削除……。可能性の消えた選択肢を次々と省いていく。


 (そして、その中で《魔法使い》を4枚擁する手札は2通り……!)



 《魔法使い》×4、《騎士》×3、《雑兵》×3


 《魔法使い》×4、《騎士》×2、《盗賊》×4



 ……セシルさんの手札はその二つに絞られていた。


 (同時にわたしの手札を絞ることも不可能じゃない)


 わたしの手札は《騎士》3枚、《魔法使い》2枚、《狩人》4枚、《雑兵》1枚たが、《魔法使い》を2枚擁する手札は上記のパターンの他に一つしか残されてはいなかった。

 つまり、セシルさんもわたしの手札を1/2まで絞っている可能性があった。


 (……セシルさんは曲者だ。嘗めて掛かっては喰われるかも)


 第1ゲーム、わたしはセシルさんの隣の席で対戦ゲームをしていて、印象に残っていたがかなりの頭が回るようであった。


 「それでは勝負いたしましょうか」

 「はい、このセットの賭け額の提示をしてください」


 第1セット目はセシルさんが賭け額を進言する。それに対してわたしは許諾か拒否をするだけであった。


 「1セット目は1000ptで如何でしょうか?」


 慎重な賭け額に少し意外に思った。


 「構いませんよ。言い当てた方が1000pt加点ですね」

 「ありがとうございます」


 賭け額も決まり、第1セット目の対戦が始まる。


 「……甲くん、手筈通りお願いします♪」


 「わかりました」


 ……手筈?


 セシルさんの言葉に伊墨さんは瞼を閉ざして応えた。


 「……目を瞑った?」


 伊墨さんの行動にわたしはその真意を模索した。


 (……恐らくセシルさんは、伊墨さんの表情等から手札やセットしたカードの情報が漏れることを警戒している)


 この勝負、能力が使えない以上 従者ナイトは不要、最悪相手に情報を流してしまう可能性があった。

 ならば、最初から従者ナイトを勝負から切り捨ててしまうというのが彼女の考えであろう。


 「ククル、あたしも目を瞑った方がいいかしら?」

 「……ララ」


 ララがわたしに訊ねる。


 「えっと、ララはこのままでいいです」

 「……ならいいけど」


 ララには役割がある。その為にはこの戦いを見届けてもらう必要があった。


 「では、行きますわ」

 「はいっ」


 わたしは《騎士》のカードを手札から引く。

 セシルさんも手札からカードを一枚引く。


 「「 セット 」」


 両者、同時にカードを机上ににセットした。


 「《騎士》、ですか?」


 「《魔法使い》、ですわ」


 両者、申告を終える。


 「「 オープン 」」


 そして、同時にカードが捲られる。


 「……互角、ですわね」


 場には二枚の《騎士》が対峙していた。


 「ですが、1000ptは戴きますよ」


 どちらも白星は貰えなかったが、カードの中身を言い当てたので、わたしに1000ptが与えられた。


 (……まずは1000pt)


・ククル:26000pt

・セシル:24000pt


 (だけど一番大事なのは第9セット目。そこまでは前座に過ぎないね)


 たかが1000pt、9セット目を勝ち、勝利得点の30000ptを手に入れることの方が大事であった。


 「それでは2セット目に行きましょうか」

 「はい」


 序盤でゲームは決まらないので1セットに時間は掛けない。


 (現時点で出来ることは情報収集しかない……まあ、セシルさんが簡単にボロを出してくれるとは思わないけど)


 しかし、セシルさんも人間だ。どこかで綻び生まれる筈だ。


 「賭け額は2000ptでどうですか?」


 「構いませんわ、受けて立ちましょう♪」


 わたしの提示した賭け額にセシルさんは二つ返事で頷いた。


 「「――セット」」


 賭け額も決まり、互いにカードを場に伏せる。


 「 《騎士》ですわ♪ 」


 「 《魔法使い》です 」


 宣言も終わり、カードを捲る。 


 「「 オープン 」」


 わたしが出したカードは《魔法使い》。そして、セシルさんが出したカードは――……。


 「……私の、負けですわね」



 ――《盗賊》であった。



 「……っ」


 ……予想外であった。


 わたしはセシルさんが《盗賊》と《雑兵》のカードをすぐには出さないと思っていたからだ。


 (……こんなにも早くボロを出してくれるなんて、これは嬉しい誤算かも)


 セシルさんの手札はゲーム開始時に1/2まで絞られていた。


 《魔法使い》×4、《騎士》×3、《雑兵》×3


 《魔法使い》×4、《騎士》×2、《盗賊》×4


 この二種類の手札には各々大きな違いが存在していた。



 ――片方には《盗賊》が無く、もう片方には《雑兵》が無い。



 ……ということである。


 (……《盗賊》のカードを使ったということは)



 《魔法使い》×4、《騎士》×2、《盗賊》×4



 ……ということになるであろう。そして、第1セット目では《騎士》を、第2セット目では《盗賊》を消化した。


 (――つまり、セシルさんの今の手札は)


 《騎士》×1

 《魔法使い》×4

 《盗賊》×3


 「……」



 ――2セット。



 ……2セット目でわたしはセシルさんの手札を1/1まで絞っていた。

 


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