第176話 『 鼠狩り 』
「……リーダー、どうして自ら姿を?」
……オルフェウスを前に姿を見せた俺に〝蟒蛇〟が問い質す。
「普通に考えろ、こんな時間に一人でお茶会をする筈が無いだろう――向こうはどうやってかはわからないが、俺達の侵入を予知していたようだな」
俺と〝スコープ〟と〝蟒蛇〟は前に出る。
一方で〝ナナフシ〟と〝薔薇〟には隠蔽を継続させていた。
(……相手も数までわからない筈、ならば隠密行動に長けた二人に絞って王宮へ侵入させた方がいいな)
見つかってしまった以上、俺達は陽動、〝ナナフシ〟と〝薔薇〟は暗殺に専念させた方が良いと俺は判断した。
「……いけませんな、ここはペルセウス王宮――たとえ一匹の鼠の侵入であろうと私達の沽券に関わる」
オルフェウスが剣を抜いた。
「散れ――この爺さんは俺が引き受ける」
俺の言葉通り、四人は解散して駆け出した。
「客人には最高のおもてなしを、王の地を汚す溝鼠には死を」
(――消えた? いや)
俺は刃を抜き、殺気に合わせて腕を振り抜く。
――衝突。俺の刃とオルフェウスの刃が交差した。
「悪くない、相手にとって不足無しだな」
「面白い、その余裕いつまで持つかね」
俺は空いた手でナイフを握る。
オルフェウスは交差した刃を弾き、間髪容れずに二の太刀を振るう。
……強者二人。殺す者と護る者の刃が交差した。
「 ソフィア=クラリネット、第2狙撃ポイント、配置完了しました 」
……宮殿北部に建つ見晴台、の頂上。
「風速南東2メートル、天気は晴れ、目標は300メートル先にて確認」
私はスコープ越しに少年の顔を覗く。
背中から来る風に修道服が捲れ上がる。
「 直ちに侵入者を救済します 」
……ロザリオが月光に照らされ、妖しげに煌めいた。