第164話 『 ほろ酔い♡エロマンティック 』 《♡》
――二日目の夜。
「……今日はお疲れ様です、セシルさん」
「ありがとうございます、甲くんもお疲れ様ですわ♪」
……継承戦初日を乗り切った俺とセシルさんは部屋で祝杯を交わしていた。
「それにしても感服しましたよ、セシルさんのゲーム運びには」
俺は今日の勝負を振り返る。
「ターニャの能力を看破しつつ、こちらの策は最後まで隠しきって、一分の隙も見せずに完勝! 何というか、凄く格好良かったです!」
イマイチ語彙力が足りないせいで伝えきれていないが、とにかく今日のゲームに感動したことを伝えたかった。
「いえいえ、そんな大したことありませんわ」
「いや、セシルさんは凄いです!」
俺は拳を握り締めて、セシルさんの凄さを熱く語る。
「メイドの仕事は完璧だし! ペルシャにピアノや礼儀作法も教えているし! メチャクチャ強いし! 頭も良いし! メチャクチャ綺麗だし!」
「あのー、甲くん。もしかして酔っぱらってますか?」
確かに少し酔いが回ってきているが、今はとにかくセシルさんの凄さを語りたかった。
「それにしても感服しましたよ、セシルさんのゲーム運びには! ターニャの能力を看破しつつ、こちらの策は最後まで隠しきって、一分の隙も見せずに完勝!」
「話がループしてるっ!?」
セシルさんはガビーンとショックを受ける。
「というか私のことを凄い凄いと褒めてくださるようですが、私からすれば甲くんも凄いと思いますよ」
「……えっ、俺が?」
「はい♪」
思わぬカウンターに俺は戸惑いの声を漏らしてしまう。
「この三ヶ月間で王宮へ襲撃してきた暗殺者を撃退したり、〝王下十二臣〟の一員になったり、ベルゼブブ家を半壊させたりと大活躍しているではありませんか」
「あー、そんなこともありましたね」
「それに凄く強いですし、王宮の皆様とも打ち解けていたり、甲くんはとっても格好いい男の子だと思いますよ」
「……(///」
……何だこれ? 褒められ過ぎて逆に恥ずかしいぞ。
「……あれ? 甲くん、お顔が赤くなられていますよ」
「そうですか! お酒のせいじゃないですかね!」
俺は誤魔化すようにグラスのワインを飲み干す。
「あら、良い呑みっぷりですわ♪」
「今夜はじゃんじゃん呑んじゃいますよー!」
伊墨甲平の今回の任務……セシルさんの護衛。だったような気がするが忘れた。
……そんな感じに俺は凄まじい勢いでアルコールを胃袋へ流し込み、セシルさんもそんな酔っぱらいの晩酌に付き合ってくれた。
……………………。
…………。
……。
……夜は更け、午前一時。
「……甲くん、そろそろ寝ましょうか」
「いやいやいやっ、まだまだ呑めますよぉ、俺は!」
……俺はまだ呑み足りなかった。
「明日も早いのでこれ以上は起きられなくなってしまいますよー」
「セシルしゃんがそう言うなりゃー」
「……セシルしゃんって」
俺はセシルさんの肩を借りてベッドへ運ばれる。
「ほら、ベッドですよー、わかりますかー」
「うおぉー、スーパーストロングローリングサンダー!」
「急に転がりだしましたわ!?」
俺はベッドの上で転がる。
「うおぉーーーっ!」
ゴロゴロゴロゴロ!
「おぉーーーっ!」
ゴロゴロゴロゴロ!
「ぐぅーっ! ぐぅーっ!」
そして、寝る! 抉り込むように寝る!
「……嵐のような人ですね、ほんと」
……セシルさんの溜め息混じりの呟きが、薄れ行く意識の向こう側から聞こえた。気がした。
「……寝ちゃいましたかね?」
……私は爆睡する甲くんの頬を突っつきながら呟く。
「ぐぅーっ! ぐぅーっ!」
凄まじいイビキである。最早、公害レベルであった。
「……これ、私も寝れますかね」
念の為に耳栓を持ってきて良かった、と心中で溜め息を吐く。
一先ず、歯磨き・洗面といった就寝準備を済ませ、私も床に就く。
「おやすみなさい、甲くん♪」
私は豪快に爆睡する甲くんに一言告げて部屋の電気を消灯した。
「……」
時間は既に午前一時を過ぎ、空にも雲が掛かっているせいか真っ暗であった。
「……」
耳栓をしているので、時計が針を刻む音も虫の声も甲くんのイビキも聞こえず、ただただ静寂であった。
「……」
暗闇。静寂。無意識の内に想像力が掻き立てられる。
「……」
どうしましょう!! 私、ムラムラしてますわ!!!
……アルコールのせいで熱くなった身体が疼いていた。
深夜!
密室!!
隣には同世代の気になる男の子!!!
ただでさえ私は人よりも性欲が強いのだ。我慢なんて無理な話であった。
(――かくなる上は昨晩みたいに!)
発散。そう籠った熱は発散しなければパンクしてしまうのだ。
それは情欲も一緒で、定期的な発散が必要不可欠だと思った。昨日も発散したけど!
「……はぁ……はぁ」
意図せずに呼吸が荒くなってしまう。
体温も熱く、心臓の鼓動も速くなる。
(……ちょっとだけ、ちょっとだけですわ)
私は甲くんににじり寄り、その逞しい左腕に触れる。
ゴツゴツと筋肉質で骨張った腕……間違いなく男の子の腕であった。
(……これだけ眠りが深かったたら起きませんよね)
私は甲くんの顔を確認する。暗くて良く見えないが起きている素振りはなかった。
「……失礼……しまーす♡」
そして、私は甲くんの逞しくてツゴツした手を取り
【 大切なお知らせ 】
申し訳御座いません。ここから先に付きましては、大人の都合により内容を伏せさせていただきます。
内容について詳しく明記することは出来ませんので、読者様のご想像にお任せします。
そもそも書けないのであれば最初からそんなシチュエーションを書くなよ、という話ですがこれには深い訳がありまして、自然とこうなってしまったのです。
創作界隈で良く聞く「キャラが勝手に動いた」という現象です。
変態忍者と色魔の末裔が同じ部屋にいたら普通は何かあると思いませんか?
意識高い系の作家である三橋は、大人の事情でキャラクターをねじ曲げるようなことをしたくなかったので、このような半端な形になってしまいました。
色々と語りましたが長文失礼しました。
By.Akira mitsuhashi
……………………。
…………。
……。
「……………………朝か」
……朝、甲くんが目を覚ましたのかベッドから身体を起こした。
「おはようございます、甲くん♪」
私も身体を起こした朝の挨拶をする。
「おはようございます、セシ
挨拶を返そうとした甲くんであるが、私の身体を見て硬直した。
「……何で……裸なんですか?」
「……………………ふぇ?」
甲くんに言われ、私は恐る恐る自分の身体を見下ろす。
……すっぽんぽんであった。
「~~~~~~~~~っ!!?」
私は指摘されるのと同時に高速早着替えでドレスに着替える。
「……はぁ……はぁ……裸? 何のことですか?」
……取り敢えず無かったことにした。
(私としたことが途中で寝落ちしてしまったですわ~~~っ!)
私は心中で己の失態に頭を抱えた。
「いや、裸でしたよね」
「何のことですかー?」
「ですから裸」
「何のことですかー?」
「……やっぱり何でもありません」
……ふぅ、何とかごり押せました。
「それよりも今日も気合いを入れて頑張りますわ!」
「……うーん、確かに裸だったような」
「今日も絶対に勝ちますわ! えいっえいっおーっ!」
緊張感の欠片もない騒がしい朝。
しかし、それも今だけである。
――数刻後。
……騙し騙されたの潰し合いが始まるのであった。