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 第162話 『 ESSENCE 』



 第1ゲーム『high&lowババ抜き』


 セシル=アスモデウスVSターニャ=アスモデウス


 三本目までの試合経過。


 一本目、○ターニャ‐●セシル

 二本目、○ターニャ‐●セシル

 三本目、○ターニャ‐●セシル


 ターニャの残り手札。

 1・4・5・6・7・8・10


 セシルの残り手札。

 1・2・3・4・5・6・7・8・9・10


 勝利条件。


 『 先に手札を全て捌く。 』







 「 次の勝負――勝ちを宣言させていただきます♡ 」


 ……セシルさんが勝利宣言をした。


 「やれるものならやってみなさいよ!」


 ターニャも強気の姿勢を崩さず言い返す。


 (……恐らくターニャにはこちらの出すカードを見抜く能力がある)


 でなければこの運ゲーで三連勝なんてそうそう出来る筈がなかった。


 (何か策があるんですか、セシルさん)


 今の俺はセシルさんに言われた通りに合図を送ることしか出来なかった。


 「私はこのカードで行きますわ♪」


 セシルさんは机に裏向きに並べられたカードの中から一枚を指差す。


 「なら、私はこのカードで行くわ!」


 ターニャも手札からカードを一枚抜く。


 「「――セット」」


 両者、互いにカードをセットする。


 「 オープン 」


 そして、同時にカードがひっくり返される。


 「……」

 「……」


 ――〝10〟‐〝8〟


 「……やっと一本」


 俺は安堵の息を溢した。


 「ほら、勝った♪」


 「ふん、たかが一勝、しかも一番強いカードを使ってだなんてダサすぎー」


 「……」


 ターニャの言い分ももっともなものであった。

 まだターニャの方が二枚多くカードを捌いている。しかも、セシルさんは一番強い〝10〟のカードを使って初めて一本取れたのだ。


 「でも、一本は一本ですよ♪」


 「まぐれよ! ま・ぐ・れ・!」


 「では、わかりました」


 ターニャの罵倒にもセシルさんは笑みを崩さない。


 「次の勝負――……」


 セシルさんは〝9〟のカードを机から取り、ターニャに見えないように宣言する。



 「 このカードで勝たせてもらいます♡ 」



 ……それは二度目の勝利宣言であった。


 この自信。

 この笑み。


 (……見抜いたのか、ターニャのカード透視の正体を)


 セシルさんはターニャがカードを選ぶよりも早く、机から取り出したカードをセットした。


 「どうぞ、お好きなカードをセットしてください♪」


 「……」


 セシルさんからのプレッシャー、ターニャは沈黙していた。


 「……」



 ――そして、笑った。



 (――まずい! やはりこちらの手札が見えている!)


 ターニャは選ぶであろう! 〝9〟に唯一勝てるカードを!


 「叩きのめしてやるわ……!」


 ターニャは手札から一枚カードを引き、机にセットした。


 「「 セット 」」


 ――運命の五本目。


 「「 オープン 」」


 ……まさか、この一本で勝負が決するとは俺もターニャも気づくことが出来なかった。


 ――〝10〟


 それがターニャが出したカードであった。


 「……」


 そして、セシルさんが出したカードは?


 「……」



 ――〝1〟



 ……それは〝10〟に唯一勝てるカードであった。


 「……私の勝ち、ですわ」


 ……沈黙の中、セシルさんの勝利宣言した。


 「……」



    何    故    ?



 ……俺は困惑した。


 セシルさんは確かに〝9〟のカードを出した。それは俺も、セシルさんも見た。

 恐らく、ターニャもそれを透視して〝10〟を出したのだ。

 しかし、セシルさんが出したのは〝1〟のカード。〝9〟のカードではない。


 ……ならば〝9〟のカードは?


 「……簡単なフェイクでしたよ」


 俺の疑問に答えるように、セシルさんが〝9〟のカードをドレスの裾から取り出した。


 「私が出したのは〝9〟のカード――そして、そのカードと重ねた〝1〟のカードですわ」


 「……っ!?」


 セシルさんはわざとターニャに〝9〟のカードを透視させることによって〝10〟のカードを出させるように誘導したのだ。


 「カードを置く一瞬で内側のカードをドレスの裾へ投げ込むぐらい、手品師でなくたって簡単に出来ますよ」


 「……」


 「簡単に騙せて良かったです♪」


 セシルさんは挑発するように微笑する。


 「……あんた、馬鹿じゃないの」


 しかし、ターニャは冷たく言い返す。


 「まだ勝負は中盤戦、それなのに種明かしなんてしちゃって馬鹿以上の大馬鹿、いや超馬鹿ね!」


 確かに勝負はまだ五本目、まだターニャの方が一本多く勝利している。

 ターニャの言う通り、セシルさんの種明かしは少々軽率であった。


 「……勝負は中盤戦?」


 セシルさんが笑った。


 「ふふっ……ふふふっ」


 笑う。嘲けるように笑う。


 「何がおかしいのよ!」


 「……ふふっ、すみません。貴女の発言がおかしくてつい」


 セシルさんは手札を机に並べてさらけ出す。


 「どうやら、貴女はこのゲームの〝本質〟を解っていないようですね」


 「……〝本質〟?」


 そこには2・3・4・5・6・7・8・9のカードが並べられていた。



 ――〝1〟と〝10〟だけが無い手札。



 「 もう勝負は着いている 」



 このゲームの〝本質〟。


 決した勝敗。



 「……私はそう言っているんですよ」



 ……そして、明かされるセシルさんの欺瞞と策略。


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― 新着の感想 ―
[一言] 相手に10がないと1はポイできないのかなぁ、、 10と1をはやくポイした方がいいのかなぁ、、、
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