第142話 『 姉妹頂上決戦 』
「ペルセウス王宮メイド長の名の下に決戦の宣言をさせていただきます……!」
……屋外修練場にて私とフェリスは対峙する。
その間に立つのはメイド長であるセシルさん。
私達の試合を観戦するのはペルセウス家の者と〝王下十二臣〟の面々。
(……国王陛下や殿下まで観戦なさるとは)
プレッシャーを感じざるを得なかった。
「……この勝負、絶対に負けられませんね、姉上」
「まったくだな」
周りは盛り上がっているが、私とフェリスは心中で溜め息を吐く。
これは私達姉妹の問題だ。あまり大事にはしたくなかったのだ。
「しかし、必ずどちらかは負ける」
「ええ、わかっています」
勝者が一人であれば、敗者も一人。それは逃れようのない現実であった。
「――姉上」
「どうした?」
フェリスは穏やかに笑む。しかし、瞳は曇りのない真摯なものであった。
「 今日の拙は万全です 」
……風が吹く。
「――」
「……だから……だからっ」
木々がざわめく。
雲が流れ、陽光が私達を照らす。
「 ああ、互いに一切の手加減は無しだ 」
私は不敵な笑みを浮かべ、フェリスも笑みで返す。
「お二方、準備はよろしいですか?」
微笑み合う私達にセシルさんが割って入る。
「はい、いつでも……!」
「準備万端です……!」
声を張り上げて頷く私とフェリス。気合いは十分であった。
「それでは皆様、これより騎士団長の座を賭けた試合を開始いたします!」
屋外修練場にセシルさんの声が響き渡る。
「姉上、勝たせてもらいます」
「ぬかせ、勝つのは私だ」
セシルさんの手が挙がる。
「 騎士団長選別御膳試合――開戦……! 」
そして、その手が振り下ろされた。
雷 閃
――二本の刃が交差した。
衝撃で暴風が吹き荒れ、国王陛下の為に立てられたパラソルが吹き飛ぶ。
「フェリスゥッ……!」
「姉上ェッ……!」
鍔競り合いで押し合う私とフェリス。
「私は」
「拙は」
互いに刃を弾き、間合いをつくりだす。
「己の全てを賭して貴様に」
「その全てを否定して姉上に」
嵐 斬 り
凪
――私は高速連斬を繰り出し、フェリスはその全てを見切り、受け流す。
フェリスは受け流した拍子に、私の空いた横腹へ斬り掛かる。
風 摩
私は身を翻して、フェリスの太刀をかわし、その回転のまま彼女の肩目掛けて刃を振り抜く。
しかし、フェリスの反応も早い。迫り来る刃に合わせてくる。
「「 勝つッッッッッ……!! 」」
――二本の刃が交差した。
同 時 。
「「 〝風刃〟ッッッ……! 」」
――轟ッッッッッッッッッッッッッッ……! 二つの魔力の刃が衝突・爆発し、私とフェリスを吹き飛ばした。
私は吹っ飛ぶも、空中三回転し、靴の踵を削りながらも静止する。
フェリスも吹っ飛ぶも、バク転し、鮮やかに着地する。
「……」
「……」
そして、再三たる無言の対峙。
「……お互いに探り合いはやめませんか、姉上」
「そうだな、この一週間お互いに遊んでいた訳ではなかろう」
「ですね。では――……」
否 剣
「遊びはここまでにしましょうか♪」
「同感だ」
練 氣 開 放
――体の中枢から一挙に〝氣〟が開放される。
「終わりにしよう、戯れも因縁も全て、な」
……さあ、準備体操は終わりだ。