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 第138話 『 恩返し? 金も感謝の言葉も要らない! 身体で返せ! それがjustice! 』



 ……好き?


 「 好きだからだ、お前のことが 」


 ……この男、今、そう言ったのか?


 「……はっ?」


 えっ、ちょっ、どういうこと?


 好きってそういうこと?


 Like?


 Love?


 てか、この流れで告白するのか普通? いや、この男は普通ではないけども!


 「いや、その、えーと」


 まずい! 何て返せばいいのだ~~~~~っ!


 「悪いな、いきなりこんなこと、気持ち悪いよな」


 「いや、そんなことはない! 少なくとも私は人の好意を否定するようなことはしたくない!」


 確かにこの男は変態で頭のおかしい人間だが、真面目な気持ちまで否定するのは間違っていると思った。


 「……そっか、やっぱりクリスは良い奴だな」


 「あまり褒めないでくれ、照れ臭いだろっ」


 さっきから調子が狂って仕方がなかった。


 「しかし、先の告白だが慎んで断らせてもらう! だが、勘違いしないでくれ、貴様が嫌いなのではなく! 私にはペルシャ様がいるから! だから、貴様の気持ちには答えられない!」


 「……」


 「すまない! わかってくれ!」


 「何を?」


 「本当にすまない!」


 「だから、何を?」


 「……」


 「……」


 「……………………えっ?」


 ……何だ、この間違っちゃってる感。


 「だって、貴様が私のこと好きって」


 「ああ、良い奴だからな」


 ……ああ、神様、どうか時間を戻してください。


 「クリス、お前……まさかとっても愉快な勘違いしちゃった?」


 「~~~~~~っ!」


 ……ああ、神様、どうか私を殺してください! もしくは、この男を殺してください!


 「あー、俺が悪かった(笑)ありゃあ、勘違いしても仕方ないよなぁ(笑)スマンスマン(笑)」


 「……はっ、はははっ」


 ああ、涙出そう。


 「あのペルシャでも勘違いしなかったんだけどなー(笑)」


 「……ペルシャ様でも?」


 頭の中でカチーンという音が鳴った、気がした。


 「まあ、こんなのただのリップサービスなんだけどなぁ(笑)」


 「……リップ……サービス?」


 頭の中でカチコーンという音が鳴った、気がした。


 「まあ、恋愛経験の少ないピュアな処女ちゃんじゃ勘違いしても仕方ないよ、な(笑)」


 伊墨が私の肩に手を置き、親指を立てた。


 「……スーパー…ファイナル…………」


 「ん? スーパーなんだって?」


 地面が弾け飛ぶ。

 私は勢いよく拳を振りかぶる。



 「スーパーアルティメットファイナルジャッジメントスーパー天誅ーーーーーーーーーッ!」



 ――顔・面・炸・裂・! 私の怒りの鉄拳が伊墨の顔面に叩き込まれた。


 「――ほっ! ほげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ……!」


 伊墨は激しく回転しながら吹っ飛び、地面を転がり、最後は滝壺に沈没した。


 「……ハァ……ハァ…………ハッ!」


 少しの間を置いて私は我に返る。


 「……」


 滝壺から脚だけが姿を見せる。


 「……」


 冷静になった私は滝壺に沈む伊墨を見つめる。


 「……えっと……すまん、やり過ぎた」



 ……そんな私の謝罪の声は伊墨には届かなかった。








 ……頭の下に柔らかい感触を感じた。


 「……」


 ああ、そう言えば殴られたんだっけなクリスに……調子に乗りすぎたな、いつものことだけど。


 「…………うっ、いったぁ」


 頬がズキズキと痛む……良かった歯は折れてないな。


 「むっ、起きたか! 大丈夫か!」


 クリスが俺の肩を掴んでグラングラン揺らす。


 「……やめろっ、クリス……脳みそ揺れるから、やめてくれ」


 ゴリラパワーで上半身を揺らされ命の危機を感じる。


 「すっ、すまんっ」

 「……いいんだ、わかってくれれば」


 俺の話を聞いてくれたのか、クリスが俺の肩を解放してくれた。


 「……そのさっきはすまなかった。正直やり過ぎたと思う」


 「いや、いいんだ。俺も言い過ぎたよ」


 「……」


 「……」


 二人の間に気まずい沈黙が流れる。


 「……そうだ! 伊墨、私に何か出来ることはないかっ? 忍術を教えてくれたお礼がしたいんだ!」


 「……お礼、だって?」


 クリスが普段言わなそうな言葉に俺は一瞬耳を疑った。


 「いや、必要なければいいんだ!」


 「いや、あるよ!」


 「――っ!?」


 だって、お礼だぜ!


 こんなふんわりとした言葉、利用しない手はないだろ!


 「待て! 何か嫌な予感がするぞ!」


 「待たない! 自分で一度言った言葉には責任を持てよ……!」


 俺は真剣な眼差しでクリスに吼える。


 「 騎士だろッッッ……! 」


 「その台詞はもっと大事な場面で言ってほしかったぞっ!」


 知るか。俺は空気が読めないんだよ。


 「聞け! クリス=ロイス! 俺の望みは――……」


 「……くっ!」


 俺はビシィッとクリスに指を指す。



 「 今晩、俺のメイドさんになって御奉仕しろッッッ……! 」



 高らかに響く俺の声。


 「……ひっ」


 クリスが小さな悲鳴を溢す。



 「――いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ……!」



 ……クリスの大きな悲鳴が森の中を響き渡った。


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