第127話 『 弐の試練 』
「〝練氣〟の錬成と放出はマスターしたようだな! ならば次は〝練氣〟の性質変化に移行しようではないか!」
クロウが説明しながら印を結ぶ。
「火遁であれば火、水遁であれば水、影分身の術や身代わり術なら無! 〝練氣〟の性質を変化し、術に変化するのだ!」
クロウの分身が幾つも召喚される。
「「「「「つつつつつまままままりりりりり、、、、、火火火火火薬薬薬薬薬かかかかかららららら火火火火火ををををを起起起起起こここここすすすすすよよよよようううううにににににななななな!!!!!」」」」」
「うわぁっ、一度に言うな! 耳がおかしくなる!」
同時に言われたら聞きづら過ぎて敵わなかった。
「まあ」
「取り敢えず」
「やってみて」
「感覚を」
「掴んでくれ!」
「いや、だから影分身は黙っていてくれ!」
調子が狂う。
「……取り敢えずわかりました、やってみます」
私は印を結んで、〝氣〟を練り上げる。
「影分身の術っ……!」
そして、見よう見まねの影分身の術をしてみた。
――ぷしゅーーーっ……身体から空気が抜ける。
「……あれ?」
「オナラか?」
「違う!」
在らぬ疑いに私は全力で否定する。
「冗談だ……これは燃料切れだな」
……燃料切れ?
「〝氣〟の量を調整できていないな……先程の放出で空になったのだよ」
「……私の〝氣〟の量が少ないということですか?」
「いや、〝氣〟から〝練氣〟へ変換する過程に無駄があるからな、慣れれば簡単に〝氣〟を切らすことはない」
「……そうですか」
クロウのフォローにホッと胸を撫で下ろす。
「しかし、消費した〝氣〟は飯を食わなければ回復しない、今日の修行は打ち切って食事の確保をするぞ」
「はいっ!」
既に日は沈みかけており、狩りをした方が良さそうであった。
……そして、私は夕飯を確保すべく森の中へと歩き出す。
……………………。
…………。
……。
「うむ、中々旨かった」
……私の手料理を平らげたクロウが満足そうに皿を下げる。
「君は見掛けによらず家庭的なようだな」
「見掛けによらずは余計です」
私は食器を片付ける。
「風呂を沸かしますが、クロウは先に入られますか?」
「後で入ろう、疲れているだろう君が先に入りたまえ」
クロウはそれだけ言って、クナイや刀の整備を始める。
「……」
私はそんな後ろ姿を無言で見つめる。
(……ここにいるのが伊墨甲平だったら、落ち着いて風呂にも入れなかったな)
伊墨だったら――……。
「……オデ、ノゾク、オンナユ、ノゾク」
「おっ○いだいちゅき~~~っ♡」
「セッ○ス! セッ○ス!」
「わっふる! わっふる!」
……だったであろう。
(……それに奴から教えを乞うのは何か癪にさわる)
私はクロウの後ろ姿を一瞥し、天然の温泉へと向かうのであった。
……………………。
…………。
……。
「ふう、やはりここの湯は最高だな、修行の疲れも吹き飛ぶぞ」
……この山には知る人ぞ知る天然の温泉があり、ここで修行するときの楽しみにしていた。
「……久し振りにペルシャ様と一緒に入りたいものだ」
王女と騎士、幼馴染みといえど気軽に背中を流し合える立場ではなかった。
だからこそ、空想に耽るのだ。
ペルシャちゃんとの混浴を!
(……ペルシャちゃんのすべすべの柔肌)
……ほわん、ほわん、ほわーん。
「クリスちゃーん、背中長い合いっこしようよー」
「クリスちゃん、引き締まっていてすごーい! 鍛えられていて格好いいよ!」
「クリスちゃん、結婚しよ♡」
「あっ、クリスちゃん♡ 身体洗いながらそんな所触っちゃ駄目だよっ(///」
「……もう、クリスちゃんのえっち♡」
……ほわん、ほわん、ほわーん。
「 ペルシャちゃーーーんっ! 」
……私は妄想が捗り過ぎて絶頂してしまった。
「……あいつ、変態じゃねェか」
……遠くから絶頂するクリスを望遠鏡で眺める人影が一つ。
「でも、身体は最高じゃねェか」
……そう、天才忍者、伊墨甲平であった。