第121話 『 クリスVSフェリス 』
「騎士団長になる、だと!」
「!?」
……フェリスの発言にクリスと俺は驚愕する。
「はい、ですので姉上」
フェリスはクリスと対峙し、真っ直ぐにその瞳を捉える。
「 お譲りください――騎士団長の座を 」
「!?」
クリスが目を見開く。
「!?」
俺も釣られて驚愕する。
「!?」
何故か、ペルシャも驚愕する……いつの間にいたんだよ。
「ペッ、ペルシャ様いつから居られたのですか?」
「さーて問題です♪ わたしはいつからいたのでしょーか♪」
「今、取り込んでいるので後にしていただいても宜しいですか」
「……」
……クリスの悪意無い塩対応にペルシャは笑みを消した。
「こっ、甲平くんはわたしがいつからいたのか気にならない?」
「ならない」
「……ふえ」
「欠片も気にならない」
「……」
俺の塩対応にペルシャは涙目になる。
……何だろう、ちょっと興奮してきた。
俺は嗜虐心の芽生えに少し戸惑った。
(……そう、今、この瞬間が)
サドスティックエンジェル、伊墨甲平誕生の瞬間であった。
「あのー、拙のことガン無視するのやめてもらえませんか」
苦笑いで話題を本筋に戻すフェリス……忘れていた、つい先程クリスがフェリスに宣戦布告したばかりであった。
「それでは姉上、お返事を戴けないでしょうか」
「……」
フェリスの挑発的な笑みにクリスが無言で睨み返す……が、黒ビキニなのでイマイチ締まらない。
「――無理だな」
……それがクリスの回答であった。
「フェリス、お前の実力は認めている。だが、騎士団長には正式な手順を践まなければなることは出来ない」
「……」
クリスを返事をフェリスは静聴する。何も言わない彼女の心意は読めなかった。
「〝王下十二臣〟からの推薦状一件、更には三日間に及ぶ検査を合格しなければ認められない」
隊長以上からの推薦状、一件。
推薦者以外の隊長から三日間に及ぶ検査を受け、合格すること。
(……俺も一度やったなぁ)
キャンディと過ごした三日間を思い出し、感傷に浸る。
今思い出しても、女風呂に侵入して、ボールを奪い合って、海水浴をしたな…………うん、ほぼふざけてしかいなかったな。
「……そちらの都合はわかりました。ならば、姉上に一つお願い申し上げてもよろしいでしょうか?」
話を聞き終えたフェリスが剣の柄に手を伸ばす。
「――姉上直々に推薦して戴けませんか? 後は検査でも試験でも快く受けましょう」
「……」
フェリスは刃を抜き、その切っ先をクリスに向ける。
「お願いします、あ・ね・う・え♡」
「私がその頼みを聞くとでも?」
クリスも動じず、フェリスを睨み返す。
「 いいよ、その勝負――認める 」
……そう言ったのはペルシャであった。
「……ペルシャ?」
「フェリスちゃんが強いのはわかったよ。だったら、わたしとしても騎士団に入ってくれたら嬉しいしね」
睨み合う二人を置き去りにして、ペルシャが話を進める。
「フェリスちゃんが勝ったらクリスちゃんは騎士団長への推薦状を書く! クリスちゃんが勝ったらフェリスちゃんは騎士団の一員として働く! はい、これで決定ーっ!」
「えぇー……」
「そんな勝手な」
「はい、文句言わなーい」
……何かよくわからないが決定したようだ。
「場所は現在地! 時間は今から一時間後! 遅刻厳禁だからね!」
……そんな訳で騎士団長の座を賭けた姉妹喧嘩が幕を開けたのであった。