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 第116話 『 メイドですか? シスターですか? いいえ、メイドスターです 』



 「……甲くん、ソフィアさんに頼んでいたものを受け取って戴いてもよろしいでしょうか?」


 ……廊下を擦れ違ったセシルさんに珍しく頼み事をされた。


 「物の受け取りですか」

 「すみません、今どうしても手が空いていなくて」

 「いえいえ」


 可憐で愛らしいセシルさんの頼み事だ。断る由なんてある筈がなかった。


 「それで何を受け取ったらいいんですか?」

 「えーと、それはですねー」


 セシルさんはメモ書きを胸ポケットから取り出す。


 「…………えっと、本です(///」


 ……何故、顔を赤らめる。


 「わかりました、取り敢えず本を受け取ってくればいいんですね」


 まあ、深く詮索するのも野暮であろう。


 「受け取ったら部屋の鍵は開けていますので、私の机に置いていてください」

 「任せてください」


 俺はソフィアさんから本を受け取るべく、セシルさんに別れを告げて歩きだした。





 「……すみません、ソフィアさんって誰ですか?」


 「……」


 ……途中で、ソフィアさんが誰なのかわからないことを思い出して、俺はセシルさんの下に戻ったのであった。


 ……………………。

 …………。

 ……。


 「……ここか」


 俺はセシルさんに言われた通りの部屋の前にいた。


 ――ソフィアさんは本日有給休暇で王都に行かれたので、お使いを頼んでいまして、そろそろ部屋に戻られていると思いますよ♪


 ……と、言っていたので恐らく部屋にいるのであろう。


 ――それと、ソフィアさんは新しく〝王下十二臣おうかじゅうにしん〟に入りますので、挨拶もしていてくださいね♡


 ……とも言っていたので仲良くした方がいいであろう。

 俺は扉をノックする。


 「ソフィアさんいますかー」


 返事は無かったが扉を開ける。



 「 ペルシャちゃん、ぶちゅっ~~~♡ 」



 ……クリスがペルシャの写真に口づけしていた。


 「……」


 コイツは何をやっているんだァーーーーーーッ! ていうか、部屋間違えたァーーーーーーッ!


 「……ん? 誰かいるのか


 ――バタンッ……。俺は神速で扉を閉めた。


 「…………ふう、間違えた」


 ……何だか見てはいけないものを見てしまった気がするが忘れよう。


 「……てか、隣の部屋だったわ」


 部屋番号一つずれていたようであった。


 「ソフィアさん、いますかー」


 俺は隣の部屋の扉をノックして声を掛ける。


 「はーい♡」


 可愛らしい声が返ってきたので、俺は扉を開いた。


 「あのー、どちら様でしょうかー?」


 ソフィアさんと思われる女性がおっとりとした口調で訊ねる。


 「初めまして、一応〝猟牙ファング〟の隊長をやらせてもらっている伊墨甲平です」


 「あっ、貴方が甲平様でしたか」


 ソフィアさんが興味津々にこちらを見てくる。



 ――可愛い。



 ……それがソフィアさんの第一印象であった。


 肩に届くか届かないかぐらいの金髪に豊満なおっ○い、白い肌に整った顔立ちに形の良いおっ○い、それとおっ○い……駄目だっ、おっ○いが好きすぎておっ○いにしか目が行かねェ。


 (……しかし、これはどっちなんだ?)


 おっ○いもいいが、おっ○いを除いて次に気になるのは服装であった。おっ○いが一番だが。


 「……ん?」


 ……ソフィアさんはメイド服と修道服を合体させたような服装をしていた。


 「……あの、束のことお伺いしますが、おっぱ……間違えた」


 危ねェーッ! おっ○いのこと考えすぎておっ○いって言うとこだったーッ! てか、おっぱまで言っちまったよーッ!


 「えーと、ソフィアさんはメイドさんですか? シスターさんですか?」


 「 メイドスターです♡ 」


 ……メイドスターって何だよ。


 「わたしはメイドの仕事もしますが、シスターとしてこの王宮の悪霊を祓ったりもするんです」

 「……へえー」


 修道女だったり、元軍人だったり、ロリだったり、ホモだったり、色々な使用人がいるようだ。


 「……それで甲平様は何の用件でこちらまで?」

 「……あっ、忘れてた」


 色々あって当初の目的を忘れていた。


 「セシルさんに本を受け取るよう頼まれていたんです」

 「あー、本ですか」


 ソフィアさんは心当たりがあるのか、すぐに本を持ってきてくれた。



 ……エロ本であった。



 「そうそう、これー……はっ?」



 ……まごうことなきエロ本であった。



 「……ソフィアさん、これ合ってますか?」


 「はい♡ セシルさんに頼まれました『淫乱メイド調○目次録~淫乱巨乳メイドに連続生中○しする一週間~』で間違いありません♡」


 「……えっ、あっ、はい」


 俺は一旦ソフィアさんに背を向け、現実を受け入れる。



 ――セシルさん、何やってるんだーーーーーーーーーッ!



 (仮にも聖職者に何エロ本の買い出し頼んでんだよ! 恥を知れ、恥をっ!)


 しかし、不幸中の幸いか、ソフィアさんはこれがエロ本であると気づいていないようであった。


 (確かに表紙は手足を縛られた可愛らしいメイドさんの絵だけだしィ! 書いてる文字の意味がわからないなら、買った本人は気づかないかもだけどォ!)


 ソフィアさんはピュア過ぎた。


 「うーん、この調○って何ですかね? 生中○しって何かの生け贄の儀式ですかね?」


 うおぉいっ! 年頃の女の子が調○とか生中○しとか言っちゃ駄目ーーーッ!


 「まあ、よくわかりませんがこの本も聖書みたいなものでしょうか?」


 違うに決まってんだろぅ! それ性書だから! 似てるけど聖書と200パーセントぐらい違うやつだから! 


 「……まっ、そんな所ですかね」


 ……俺は色々諦めた。


 「とにかく、貰ってもいいですか、その聖書」


 性書だけどな!


 「はい、どうぞ


 ……ポロッ……。ソフィアさんが手を滑らせて性書が溢れ落ちる。


 「あっ」


 「あっ」


 ――ああァーーーーーーーーーッ!


 ……やけに時間がゆっくりと流れる。


 ……性書が床に落ち、パラパラとページが捲られる。


 「…………あっ(///」


 ソフィアさんの瞳に性書の中身が映し出される。


 (……何故だろう)


 スローモーションで流れる時間の中。



 ――甲平っ、またこんな風に部屋を汚してっ



 (……何故、こんなときにお袋の顔が過ったのだろう?)


 それどころじゃない。


 それどころじゃないのに。



 ――また春画ばかり集めて、本当に親として、恥ずかしいわっ



 何でお袋の顔が脳裏を過るんだーーーーーーーーーッ!


 「……」

 「……」


 ……時は現在、俺とソフィアさんは無言で性書を見つめていた。


 「……」

 「……」


 ……続く静寂の時。


 (……ど)


 どうすんだこれェェェェェェェェェェェェェェッ!


 何、この沈黙! 何、この気まずい空気ィッ!


 頼む! 頼むから時間よ戻ってくれェェェェェェェェェッ!


 「トキモドーレ!」


 俺はやけくそになり、両手を広げて時を戻す呪文を発動した。


 「……」


 性書のページが閉じる。


 性書は重力に逆らい、宙を浮く。


 そして、性書は何事もないようにソフィアさんの手に戻る。


 「まあ、よくわかりませんがこの本も聖書みたいなものでしょうか?」


 ……ソフィアさんが聞いたかとのある台詞を言う。


 (……も)



 戻ったァーーーーーーーーーッ!



 ……マジで時間戻っちゃったよ、俺凄くねェ!


 「あっ、それでは本を渡しますね」


 どんな理屈で時間が戻ったのかは俺もさっぱりわからないが、このチャンス逃してなるものか!


 そうだ、やり直せたのだ! 性書はまだ彼女の手の中にある!


 「はい、どうぞ」


 よし、まずは落ち着くんだ、伊墨甲平!


 そして、落ち着いてソフィアさんから性書を受け取れ!


 そうすればソフィアさんに性書の中身を見られることはない! よし、完璧だ!


 「……あっ」



 ……ソフィアさんの手から性書が滑り落ち、風でページがパラパラと捲られた。



 「……………………やっ」



 ――やっちまったァーーーーーーーーーッ!



 ……それから俺は〝トキモドーレ〟を唱えたが時間は巻き戻らなかった。


 夢か幻か、その後、俺が時間を巻き戻すことはなかった。



 「……ごっ、ごめんなさーーーい!」



 ……別に悪いことはしていないが、俺はソフィアさんに謝った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 連載再開おめでとうございます! 再開最初でこうくるとは、、
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