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 第109話 『 暴喰の王 』



 ……はあ? 夜空?


 俺の視界には満天の星空が広がっていた。


 ……何で俺は空を見上げているんだ?


 ……何で俺はコイツに見下ろされているんだ?


 「……………………はあ?」


 俺は奴の掌に押さえつけられ地面に倒されていた。


 「何で、俺が劣等種如きに見下ろされなきゃなんねェんだよ」


 「……っ」


 ……イライラする。


 ……ああ、血が熱いなぁ。


 「 離れろよォ! クソがァァァァァァァァァァッッッ……! 」



     バー     スト



 ――轟ッッッッッッッッッッッッ……! 大爆発が周囲一帯を吹き飛ばす。



 「……ハア……ハアッ」


 男は直前で離脱しており、俺は爆煙の中立ち上がる。


 「……お前、名前は?」


 「……あっ?」


 「だから、名前だ」


 俺は男に名を問う。少し興味が湧いたからだ。


 「伊墨甲平、姫の忍者だ」


 「……そうか」


 ……伊墨甲平、か。


 「覚えたぜ、確かにな」



     ユグド     ラシル



 ――地面から無数の蔓が甲平に襲い掛かる。


 「ひはっ、軽くぶち壊して、墓標に刻んでやるよ……!」


 「〝鬼紅一文字〟――焔の型」


 甲平は深紅の刃に火を灯す。



     ほむら     まい



 ――轟ッッッッッッ……! 燃え盛る刃で斬り伏せられた蔓が炎上した。


 「 〝縮地〟 」


 「――っ」


 炎を死角に甲平が俺の目の前まで迫る。


 「 〝紅桜〟 」


 ――斬ッッッッッッッッッ……! 寸秒百連斬、一瞬にして数え切れない程の太刀を受けた。


 「効かねェなァッ!」


 ……しかし、俺は傷一つ負ってはいなかった。



 ――〝断絶クローズされた世界ワールド〟。



 ……それが俺の固有オリジナル奇跡スキル〟である。


 一日三分間、あらゆるダメージを0にする力だが、特筆すべきはコストパフォーマンス良さである。

 〝断絶クローズされた世界ワールド〟は、ダメージに対して自動で発動するのだ。故に、無駄に三分を消費することなく必要最低限の発動時間で相手の攻撃を無力化できるのである。

 故に、不意打ちが通じないだけでなく、無駄遣いも一切することがなかった。


 (まだ一日180秒使える内の数秒しか使っていない上に、後一時間もしない内にまた180秒に戻る)


 ……つまり、この勝負。俺が負ける確率は限りなく低かった。


 「ひゃはっ」


 ――蹴ッッッッッッ……! 俺の蹴りが甲平の横面に打ち込まれ、堪らず吹っ飛ぶ。


 「――っ」



  ホー      ディス   タンス



 ――俺は蹴飛ばした方向に瞬間移動して、追撃の拳を振り抜く。


 「二発目ェ!」


 「――っ!」


 しかし、甲平は咄嗟にガードする。


 (イイ反応だァッ! だが!)



 ――既に俺は甲平の背後に瞬間移動していた。



 「 〝黒鱗アビスメイル〟 」


 ――ゴッッッッッッッッッッッッッ……! 今度は顔面に直撃した。


 「……効かねェなァ」


 ……否、甲平は額を打ち付け、俺の拳を受け止めていた。


 「しぶと過ぎんだろォ」


 「倍返しだ!」


 ――掴ッッッッッッッッッ……! 甲平が俺の腕を掴んだ。


 「これなら瞬間移動で逃げられねェだろっ?」


 「――っ」


 ぐんっ……! 甲平の豪腕に引っ張られる。


 「オラァッ!」


 ――ゴッッッッッッッッッッ……! 俺の身体は凄まじい力で地面に叩きつけられた。


 「だからァッ!」


 当然、その程度の攻撃は俺には通じない。


 「効かねェってんだろォがァッ!」



  見  え  ざ  る  手



 ――潰ッッッッッッッッッッ……! 巨大な建物が落下し、俺諸とも甲平を押し潰した。



 「――関係ねェよっ……!」


 ――ゴッッッッッッッッッッ……! 俺は甲平に殴られ、建物を破壊しながら地面を転がった。


 「無敵なのはわかったよ。だったら」


 ――今度は甲平が俺が吹っ飛んだ先に回り込んでいた。


 (まずい! 〝座標転ホープディスタ



 ――ゴッッッッッッッッッッ……! 瞬間移動するよりも早く、甲平の拳が俺の顔面に打ち込まれる。



 「 死ぬまでぶん殴る 」



  無   限   縮   地



 ――俺の思考よりも速く、甲平が追撃を打ち込み続けた。


 殴る。


 吹っ飛ぶ。


 回り込む。


 殴る。


 吹っ飛ぶ。


 回り込む。


 と、絶えず繰り返し続け、瞬間移動が間に合わなかった。


 (――まずい! このままじゃ無敵時間を削られる!)


 気づけば二十秒以上削られていた。


 (とにかく、連撃を止めろっ!)



  フル   ・   バー   スト



 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……! 〝暴炎バースト〟より強大な熱量が周囲一帯を吹き飛ばした。



 「どうだ! これな



 ――甲平は爆発を無視して、俺をぶん殴る。



 (止まらねェ!)


 殴る。


 (コイツは止まらねェッ!)


 殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。


 (俺を殺すまで止まらねェのかッ!)


 甲平は俺を殴り続ける。


 俺は為す術もなく殴られ続ける。


 ――123


 (……このままじゃあっ)


 ――122


 (……俺はコイツにィ)


 ――121


 (――削り殺されるっ……!)



 ――120ッッッ……!



 「ざけんなよッッッッッッ……!」




 ――轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッ……!




 俺を中心に爆風が吹き荒れ、甲平も吹っ飛ばされ、距離をとった。


 「……ハアッ……ハアッ……やってくれるじゃねェかっ」


 俺は息を切らせながら甲平を睨み付ける。


 (……まさか、ここまで早く一分も削られるとはな)


 予想外。まったくの予想外であった。


 (……このままじゃじり貧だな、クソったれ)


 ちまちま殴られて、時間切れで負けるようなダセェ負け方はお断りだった。


 (……使うか……使うしかねェよな)


 最早、出し惜しみなどしている余裕はなかった。


 「オイ、伊墨甲平」

 「……何だよ」


 話し掛ける俺にも甲平の態度は冷やかであった。


 「認めてやるよ、お前は強い」


 悔しいがそれは認めざるを得なかった。



 「 だがな、やっぱ最強は俺だ 」



 ……それだけは譲れなかった。


 「 〝樹王ユグドラシル〟 」


 俺の身体に木々が絡み付き、人の形から離れていく。


 「 〝暴炎バースト〟 」


 躯は燃え上がり、炎の鎧となる。


 「 〝黒鱗アビスメイル〟 」


 炎は黒く染まり、ドス黒いオーラが渦を巻く。


 「……覚悟しろよ、格下ァ」




  ベルゼ   ビュー   の   




 「 これからお前はなぶり殺される 」



 ――トンッ……。俺は瞬間移動で甲平の目の前に移動する。



 「――っ」


 甲平が咄嗟にガードする。


 「 無駄だ 」



 ――ゴッッッッッッッッッッッッッッッッ……! しかし、俺の拳は甲平のガードを突き破り、土手っ腹に打ち込まれる。



 「――ッッッッッッ……!」


 「言ったろ、なぶり殺されるって」


 甲平は吹っ飛ぶ。


 空を裂き、


 建物を突き抜け、


 二つ目の建物を突き抜け、


 三つ目の建物を瓦解させて、やっと静止した。


 「ひゃはっ」


 これが力、


 「ひはははははははは」


 全てを破壊し蹂躙する、


 「ははははははははははははははははッッッ……!」



 ……圧倒的な力。


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