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7

作者: 仮:綴

 何も見えない。いや、わずかに見えるものはある。それでも、その夜の闇は我々には暗すぎる。

 身動きも取れず、ただ怯える我々のそばを何かが通った。

 しまった、そう思ったときには対象の気配はない。背筋が凍りつく気分。だが、殺される気配はない。

 林のほうで、金属の擦れる音がする。ぶつかる音がする。

 それは敵側の変化である。いよいよか、覚悟を決めるも、一向に敵は近づいてこない。

 やがて、一人の、たった一人の足音のみが近づいてくる。闇の中でその姿はやはり見えない。だが、音は聞こえる。

 敵いやしないだろう。それでも、逃げ道もない。きっと気がつかないままに終わる。

 だから、その言葉で全身の力という力が抜けてしまったのだ。

「えーと、大丈夫です?」

 その、あどけない少女の声に。


 増援だ、と彼女は言った。

 彼女はこの闇の中でもモノが見えるらしく、先導すると言って縄を持つように指示をした。

「火をつけるなんてことはしないように」

 そう付け加えて。彼女の能力というものは、ただ闇の中の微かな光を捉えられるというだけで、魔法のようなものでもないのだろう。我々が突然、強烈な光を見せられると視界を奪われてしまうように、いや、もしかしたらそれ以上に危険な行為となるのだろう。

 だが、どのような策略であろうか。このような特別な人材は切り札として温存しておくべきだ。非正規戦は試験的な場でもありはするが…。我々に増援という形で合流させる必要がわからない。そのような話は聞かされていないし、実際極秘事項と秘匿されるべきであろうと考える。

 ともかく、上層部は我々に強力なカードを与え、我々はそれに助けられたということでよいらしい。

 突然、縄が強く引かれたかと思うと歩みが止まる。軽く引き、合図するも返事がない。縄は地面へと向かっており、頼りに進むと手に触れる。その手は細く、小さく、どろっとべたついていた。血だ、と理解した。返り血だろうか。

 何が起こったのか理解できなかった。そう、確かに彼女の手に触れていた。重力がなくなったような気味の悪い浮遊感の後、仰向けに転がっていることに気づく。

 立て直そうと身を起こしたとき、正面から何者かに抱きつかれる。何者かの顔が近づく。首に息がかかる。なにか、一瞬意識がふわっと浮いた気がした。何者かはそこにはいない。

「何が…」

「あの、あの」

 こちらが考えるよりも先に、彼女の声が聞こえた。どうやら無事らしい。彼女の目ならば何か捉えられたかもしれない。

「今のは…」

 しばらくの沈黙。いや、既にその姿はないように思えた。

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