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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

首斬り男の動機

作者: 青水

 首斬り男。

 世間は今、首斬り男の話題で染まっている。テレビをつけてザッピングすると、どの局も首斬り男のニュースをくどいくらいに流している。


 最初の事件はおよそ半年前。

 会社員の二〇代の男が首を切断されて殺された。現代日本において、殺人事件はそれほど珍しいものではないが、首を切断されて殺されることは滅多にない。しかも、死体は夜道に捨ててあったのだ。

 それから、月に四回ほどのペースで――つまり週一で――首斬り男は切断死体を作り出していった。半年で二三人が殺された。


 ニュース番組は『首斬り男がどうして首を斬るのか』――動機について様々な憶測を立てた。犯罪心理学の専門家や、警察OB、タレントなどがスタジオでディスカッションを交わす。

 ある者は『首を斬ることによって歪んだ性欲を満たしているのだ』と主張し、またある者は『大した動機なんてない。ただ何となく首を斬りたかったのだろう』と主張した。


 警察の威信をかけた捜索の結果、犯人は二四人目を殺し終え、それを捨てに行った際に逮捕された。指紋などの物証から、模倣犯ではないことが判明した。

 犯人は二五歳の会社員だった。会社の同僚は皆、彼のことを『真面目で穏やかな人だった。人殺しをするなんて信じられない』と語った。それはテンプレート的な回答ではなく、事実で、犯人の男は近所の人からも非常に評判がよかった。


「どうして首を切断して殺したのか?」という警察の問いかけに対し、犯人は「デュラハンを見つけ出したかったから」と語った。


 デュラハン? 彼の犯行動機に、警察も世間の人々も大いに動揺した。

 自らを精神異常者だと思わせて無罪を勝ち取ろうとするためにそんなことを言ったんだ、と主張する者が多かった。だが、犯人は自らの罪をすべて認め、「死刑にしてくださって結構です」と言った。


 男は語る。自分は幼いころに、家族旅行で訪れた北欧の国でデュラハンを見たのだ、と。あれは見間違いなどではなく、間違いなくデュラハンだった。デュラハンを見たときに、彼は美しいと思った。

 旅行後も、彼はあのデュラハンのことが忘れられなかった。それから日々を過ごしていく中で、彼はこう考えるようになった。


『きっと日本にもデュラハンはいる』

『デュラハンは人間の振りをして、人間社会に紛れ込んでいる』


 一度、考えを持つと、頭からから離れなくなった。やがて、『デュラハンを見たい。見つけ出したい』という欲求が抑えられなくなり、犯行に及んだ。


 彼の主張は何度尋ねても一貫していた。彼は本気でデュラハンを見つけ出そうとしていたのだ。

 もしも、殺した相手がデュラハンならば、首を切断したところで死にはしないだろう。しかし、対象は皆、デュラハンなどではなかった。ゆえに、全員死んだ。


 長きにわたる裁判の末、男は死刑判決を言い渡された。彼は死刑を言い渡されたことに対しては一切の不満はなかったが、デュラハンを見つけ出すことができなかったことに対しては、非常に悔しそうだった。


 男は死刑になる前に、自殺した。自殺した日の朝に、彼は晴れやかな笑顔を浮かべて、刑務官に言った。


「昨日、ついにデュラハンを見つけられました」


 刑務官が詳しく尋ねてみると、


「あなたの同僚がデュラハンでしたよ」


 と言い、その同僚の名前を教えてくれた。

 男がデュラハンだと指摘した刑務官は、彼が自殺した日に失踪した。どこへ消えたのかは、どれだけ調べてもわからなかった。


 とあるオカルト研究家は主張する。

『彼の言う通り、デュラハンは実在するのだ』と。


 その後、世界の各地でデュラハンの発見報告があがった。デュラハンと思わしき写真もネット上にアップされた。しかし、いずれも信憑性はいまいちだった。


 デュラハンが実在するか否かは、いまだ明らかになっていない。



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