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32話 はじめてのラジオ放送③


 ―― 夕方


 アマンダの店『フォレスト』で働く、ミーサとリンダが紹介してくれた店を回る為、歓楽街に向った。

 

 トキジロウとヴァネッサは、アマンダの店に立ち寄った。

 女の子二人に場所を案内させるためだ。

 店に入るとミーサとリンダが駆け寄ってきた。


 「「トキジロウさん ケイタイありがとう!! 」」

 

 お礼を言う二人。

 トキジロウは、約束だからなと適当に遇う。

 一行は、設置させて貰える店に移動した。


 引き続き設置業務をするヴァネッサ。

 挨拶し、名刺を渡す。

 それからラジオ端末を設置する作業に取りかかった。


 トキジロウは、外に出て街路樹にラジオ端末を設置し出した。

 許可とか、いるかも知れないが、それは後から何とかなると考えた。

 とにかく、多くの住人にラジオの存在を知らせないといけない。

 数本の街路樹に登り、ラジオ端末を設置していった。


 紹介してもらった店に、ラジオ端末の設置が終わるとトキジロウとヴァネッサは自分達の店に戻りラジオ放送の用意をはじめた。


 はじめてのラジオ放送…

 トキジロウとヴァネッサに、僅かながらの緊張が伴った。

 黙ってはいるが、お互いが何時もと違う様子だと認識していた。


 トキジロウは、ギターを抱えるとラジオの親機の前に座る。

 ヴァネッサもトキジロウの横に座りピアノの用意をはじめた。


 「そろそろ やってみるか」

 「はいっ… 」


 トキジロウは親機のスイッチを入れた。

 

 ヴァネッサのピアノが始る。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 事前に連絡をもらっていたハンター協会のソフィア。

 すでに、ラジオのスイッチは入っていた。

 突然流れ出したピアノとギターの音。

 職員をはじめ、依頼や討伐から帰ってきたハンター達は一体何がはじまったんだと言わんばかりの顔でラジオの端末に群がった。


 そして、併設された椅子に座るチューリッヒ。

 ソフィアに言われて、トキジロウから話があると言われていたチューリッヒはトキジロウに合う前にラジオを聞こうとハンター協会に来ていたのだった。


 端末から流れる音楽。

 トキジロウは一体、何を語るのか。

 チューリッヒは静かに耳を傾けた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 アマンダの店『フォレスト』では、カウンターの椅子に座るアマンダと奥のボックスに座るミーサとリンダが端末の側に寄って聞きはじめた。

 お客は、まだ居ない。

 だが、『やっと、はじまりましたね』とアマンダの顔は物語る。

 頬杖を付き、楽しみに待ったトキジロウの歌がはじまるのを待つ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 歓楽街の街路樹からラジオのオープニングが流れはじめた。

 今までに聞いた事のない音楽。

 心地良いテンポ。

 曲は、普段なら通り過ぎて行く筈の通行人達の足を止めた。


 店の前に立ち、客に声を掛ける女達、客引きの黒服達は街路樹のラジオ端末機を眺めているだけだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 端末を設置した各店の様子も同じだった。

 仕事どころではなかった。

 来店している客と共に、黙って端末を眺めている。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 バラック小屋で一人静かにラジオを聞くメイサ。

 すでに、ダンジョンは封鎖してある。

 その表情は、ただ静かに聞くだけのそれとは少し違っていた。

 ……


 トキジロウの合図でヴァネッサがピアノをラジオ親機から離す。

 そのまま、ピアノを引き続けるヴァネッサ。

 

 《「あーあー みんな聞こえているか? 聞こえているよな」


 トキジロウが話しはじめた。


 《「まあ… あれだ 自己紹介しとくか 俺はトキジロウ ケイタイの開発者って言えば解るやつは解るだろう まあ… 知らないやつは覚えとけ


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 バラック小屋のメイサ

 「何、言ってんだか フッフフ」

 

 ハンター協会

 「トキジロウさんじゃねえか! 今度は何を始める気だ?! 」


 チューリッヒ

 「…… 」


 ソフィア

 「トキジロウさん 頑張って… 」


 アマンダ

 「あらあら… あがっているのかしら フフッ」


 歓楽街

 「この人って ケイタイ販売の人よね? 」

 「そうだ 『五報』に出ていた人だろ?! 」


 端末設置店の客

 「しっ! 聞こえない 静かに… 」


 《「本来ならこういう形でラジオの放送をはじめる予定じゃなかったんだが

 そうだな… リアルな情報を届けられる一つの方法としてラジオってのを開局させたんだが… 中々、難しいな


 何れは、事件、事故の情報なんかも取り扱って皆に情報提供できたら良いと思っている

 だが、現状じゃ人員不足で手が回らない 少しでも興味があれば何時でも来てくれ 場所は、ハンター協会のソフィアにでも聞いてくれ

 お洒落地区に、ケイタイ販売を兼ねた店舗を借りたから皆来てくれ 通信ショップ スピリットって店だ


 まあ… あれだ

 とりあえず、タイトルコールしとくか」


 トキジロウの合図と共にヴァネッサが同時にタイトルコールを発した。


 《「「スピリット倶楽部!! 」」

 《「はじまりまーす! 」


 二人でタイトルコールを言い終えるとヴァネッサが一人で『はじまりまーす! 』と合いの手を入れる。


 トキジロウのギター弾き語りがはじまった。


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