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14話 習得完了


 すでに【プロテクト】所持者を探し回る事で町の主要所在地を把握していた

 トキジロウはアマンダの店『フォレスト』を出ると

 真っ直ぐハンター協会に向った。


 町の中心に近い大きな公園を抜けていく。

 公園内に設置されたベンチには、数組のカップルが身を寄り添っていた。

 女の耳元で何かを囁く男。

 人目もはばからず、男に跨りキスをする女。

 

 今のトキジロウには全てが空気。

 何日もかけ、鑑定を繰り返した数日間。

 辛かった……

 本屋の店員には不審者としてマークされ、歓楽街では女達に嫌われた。


 「めでたい!! 」


 公園を抜けるトキジロウ。

 辛かった日々を思い返して、ついに努力が報われる。

 声に出して今までの鬱憤を発散させた。


 トキジロウの足取りは軽かった。

 ハンター協会はすぐ目の前。

 早歩きになるトキジロウはアマンダの言葉を思い出した。


 (あいつ… 何で俺が【プロテクト】を欲しがっているのが分かった? 

 

<<パーフェクトスペル>> すべての魔法が取得可能

<<パーフェクトスキル>> すべてのスキルが取得可能


これらが見えて、スキル取得が出来ると理解し思い当る人物を紹介してくれたというのか…… 恐ろしく、頭の回転が速いな )


 そんな思い返しをしてる間に、ハンター協会に到着した。

 

 「そんな気がしていたぜ…… 」


 すでにハンター協会は閉まっていた。

 時間は深夜、〇時を過ぎているだろう。

 一気に疲れるトキジロウ。

 協会の玄関口に建つ、大きな柱に頭を押し付け下を向く。


 ハンター協会……

 登録するメリットは、金。有名になれば名声が手に入る。

 デメリットは危険と隣り合わせ。

 トキジロウはハンターに対し、そこまで魅力は感じていなかった。


 登録に必要な物は、申請書に名前、現住所、職業、所持スキルを記入。

 職業、スキルの確認はハンター協会関係者が改めて行う。

 登録費 銀貨五枚。

 ハンター協会が認めた保証人二名が必要になる。


 ハンター協会が認めた保証人とは……

 町で店舗を開き商売している者。

 現ハンター協会に所属している者。

 国家に携わる知人、親類。


 割と面倒臭い登録だった。


 ハンター協会の玄関口に建つ、二本の柱を五~六歩進む。

 十段ほどの階段を昇り入り口に到着する。

 ドアノブにぶら下がっている『本日は終了しました』の、下げ札。


 「明日にするか… 」


 疲れきったトキジロウは、階段に座り煙草を吸い出した。


 (まあ、あれだ… 明日になれば全てが丸く収まる ハンター協会のソフィアに会えれば解決だ)


 トキジロウは、立ち上がりバラック小屋に戻った。


 小屋の明かりが漏れている。

 メイサは、まだ起きているのだろう。


 「おう まだ起きていたのか? 」

 「トキジロウ! おかえり~ 遅かったのね」


 メイサは、すでに出来上がっていた。

 

 「今日は~ どこに行ってきたの? 」

 「いつもと同じだ… 今日はどうしたんだ? こんな時間まで」

 「ん~… 今日はトキジロウの帰りが遅かったから待っていたの」


 普段、トキジロウはこんな遅くには帰ってこない。

 遅くても九時にはバラック小屋に帰宅していたのだ。


 「あ… 今日は、いつもより鑑定し捲くっただけだ」

 「ふ~ん…… 」


 メイサはトキジロウの首に腕をかけ、首筋にキスをしながら匂いを嗅ぐ仕草をみせ、シャツのボタンを外していった。


 (――あれ!? 何今の!? 匂いを嗅ぐって… 浮気とかを疑ったのか!? )


 これ以上、ボロが出ないようにしたいトキジロウ。

 トキジロウは、ベッドにメイサを突き飛ばし野獣と化して誤魔化した。


 ―― 次の日の朝


 トキジロウは弁当を買いに行く。

 今まで、気にかけていなかった物事を意識すると風景が変わって見えた。

 ハンター達が、武器を担いで仲間と歩いてる。

 弁当を買いに来るハンター達も少なくなかった。


 「焼肉三つね」

 「焼肉3 入ります! 」


 二人のハンターが弁当を頼む。

 一人のハンターが仲間のハンターに話しかけた。


 「焼肉三つって誰の分だ? 」

 「今日は調子がいいんだ 二つ食べるんだよ俺が」

 「食欲旺盛だな はっはは」


 「焼肉3 ワカメ1 上がりました! 」


 先に頼んでいた、トキジロウの弁当が出来上がった。

 小さなカウンターに、銅貨十一枚を置いて弁当を掴むトキジロウ。


 「まいど! いつも、ありがとうございます! 」

 

 無言で戻るトキジロウ。


 ……


 弁当を食い終えたトキジロウはハンター協会に向う。

 協会の手前で上着の内ポケットからペンと紙を取り出した。

 『スキルの事で聞きたいことがある。 時間をくれ アマンダの紹介』


 書いた紙を、四つ折りにしてズボンのポケットにしまう。

 そのまま、ハンター協会の中へ入っていった。


 汗臭そうな男達が所狭しと闊歩する。

 女ハンターも、それなりに数がいた。全体の四分の一、程度だろう。


 皆が、腰や背中に武器を装着、中には鎧まで着ているやつがいた。

 ハンター達は、依頼掲示板の下に集まり依頼を吟味している。

 その数、百名はくだらなかった。


 大理石で出来たフロアーを歩くトキジロウ。

 受付のカウンターを見つけるとソフィアを呼び出しをしてもらう。


 「お待たせしました どの様な用件でしょうか? 」

 「ああ ハンター登録のことで聞きたい事があって 教えて欲しい」


 トキジロウは、協会の手前で書いた紙を周りに見えないよう渡した。

 四つ折りになったメモを開くソフィア。

 席を立ち上がりトキジロウに来てくれと言う。


 「こちらにどうぞ」


 トキジロウはソフィアに【鑑定】を発動した。

 ――!? 


 (これが…… 【プロテクト】か!! ぼやけて字がまったく読めないぞ!? これなら俺の情報も盗まれなくなる 干渉成功だ! ごちそうさん ソフィア)


 トキジロウが【プロテクト】を発動


 ソフィアは、個室にトキジロウを案内し詳しい話を聞きだす。


 「どういうことですか? スキルの事を知りたいとは」

 「いや…… もういいんだ アマンダは知り合いか? 」

 「…… 貴方は誰なんです!? 」

 「ああ 名乗るのを忘れていた トキジロウだ オサナイ トキジロウ」


 トキジロウは、事の成り行きをソフィアに話した。

 自身が


 <<パーフェクトスペル>>

 <<パーフェクトスキル>>

 

 を、持つ変わった人物とは話さなかった。


 「何故、【プロテクト】を探していたかはアマンダに聞いてくれ」

 「マナー違反です」

 「そうだったな ところで、アマンダとはどういう関係なんだ? 」

 「姉妹です… 」

 「だと、思ったよ そっくりだ」

 「よして下さい! 私はまだ、正真正銘の二十四ですから! 」


 むくれた顔をするソフィア。

 アマンダに似たエルフの娘だった。


 髪は銀髪のボブカット。

 瞳は黒く、意思の強さを感じさせる目力をしていた。

 肌は白く、赤い丸眼鏡の縁が良く映えた。

 灰色の膝上までしかないタイトスカートに揃いの上着。

 黒いシャツと幅が広いジャボットネクタイ。


 元が良いので何を着てても似合うのだ。


 「時間を取らせて悪かったな 俺は行くよ」


 トキジロウは立ち上がると部屋を出ようとした。


 「待って下さい 登録はしないんですか? 」

 「ハンター登録? 気が向いたらするよ じゃあな」


 トキジロウは、片手を挙げ部屋を出るとハンター協会を後にした。

 そのまま、ダンジョン地下街へ向かいオババに会って礼をする事にした。


 何時もの場所で酒を飲んでいたオババ。

 オババがトキジロウが近付いてきたのに気がつく。


 「お トキジロウさん どうですか? その後 出会えましたか? 」


 オババは多くを語らない。

 主要な言葉を省き、誰に聞かれても困らない会話を成立させた。


 「見てくれ」


 トキジロウはオババに鑑定を依頼した。


 「おおっ! 出会えたのですね トキジロウさん」

 「ああ オババのおかげだよ 何か礼をしたいんだ 何がいい? 」

 「礼ですか… うーん 特にないでね ファッファッ」

 「遠慮するな 本当に助かったんだ また来るよ」


 トキジロウは、テーブルに銀貨一枚置いて立ち去ろうとした。


 「トキジロウさん これは!? 」

 「それは、今やってもらった鑑定料だ またな」


 片手を挙げ立ち去るトキジロウ。

 探し物が見つかった時の感覚にも似た感情がトキジロウを安心させる。

 当面は、携帯電話の作製に打ち込める。

 付随して魔素の浄化も考えていかないとならなかった。


 問題は山積み。

 今回の【プロテクト】習得はその一つに過ぎなかった。

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