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「お前こそ誰だ。普通の人間ではないだろう」
体が少し震えたのが見えた。
「なんでそう思ったの?」
フードを深くかぶった女が震えた声で聞く。
「雰囲気が普通じゃねえ」
女は決して怪しい行動や話をしたわけではない。女が放つ雰囲気が普通の人間と違うだけだ。凄腕の傭兵か、秘術を扱う魔術師か、もしくは何かしらの絶技を持つ人間だろう。
「お前はどうして俺に目をつけた?」
子の仮面は戦場で被っていた仮面ではない。つけられた気配もなかった。だとしたら何故目をつけたのだろうか。
男は家名を言っただけで命を狙われ人間だ。普通に生きるだけで命を狙われた男の警戒心は強く、怪しいと感じた者からは決して意識を離さない癖があった。
「だっておじさんの魔力身体から溢れ出てるもん。私今までそんな人見たことないから普通じゃないなって思ったわけ」
男の警戒心が一層強まった。
「他人の魔力量が分かるほどの実力の持ち主が俺に何か用か?」
魔力。それは魔術を発動させるときに必要な力のひとつ。魔力量とはその人が持つ魔力の量のことを現し、自分の魔力量は感覚的にわかるが相手の魔力量を分かるようになるにはいろいろな訓練を必要とする。早い人で数年、遅い人で数十年、人によっては習得できない人もいる。男も相手の魔力量が分かる陽になるまで二年の歳月を費やした。
その能力をまだ若い女が習得している。ただ者ではない。
俺の正体を知って命を狙ってきた者か?
どこかの国の使者か?
男の中には様々な憶測が巡っていた。
「働く場所を探していてさ、仕事できる場所を教えて欲しいなって」
恥ずかしそうに話す。
「ここらでは身体を売る仕事か傭兵しかない」
「そこを何とか一緒に探して欲しいの。貴方ここら辺詳しそうだしさ。手伝ってくれたら誰にも秘密を喋らないから」
「喋りたければ喋れ」
秘密を喋られてこの場所に居ずらくなっても別の場所で生活すればいいと考えていた。それにそろそろこの場所にいるのも潮時だろう。
女が持つ秘密をそこまで深刻に考えていなかった。女がもう一つの秘密を言うまでは。
「森の中の秘密も言っていいの?」
「なんのことだ」
「おじさん森の中から出てきたでしょ。たぶんあそこがおじさんの家だよね」
「どこで見ていた」
「協力してくれるなら教える」
目の前にいる女は何者だ?
いつから俺の後を追っていた?
俺の部屋を知っておきながら何故待ち伏せをしなかった?
男の頭の中に疑問が泳ぐ。男はしばらく黙り込み小さく頷いた。
「協力する」
「そうこなくちゃ。私、アマネよろしくねおじさん」
アマネはフードを外し手を差し出す。
「あぁ、よろしく」
男はアマネの顔を見ないまま差し出された手を握った。
屈託のない元気な顔を見れなかった。アマネの白い手を握りながら不思議に思った。
いつからこの笑顔を見ることが無くなったのだろうか。




