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建物を構成していた木材、煉瓦が道に落ちている場所を男は歩いていた。早朝だと言うのに多くの人が歩いている。
歩いて行く方向からゴミ捨て場に向かっているのだろう。男の目的地はそこに到着する途中にあるため知っていた。食べ物を粗末にする家庭がいるためゴミ捨て場には食べ物があることが多い。探せば使える物が見つかるあの場所は金に困っている人たちの宝の山だ。
男は前をゆっくり歩く少年の背を見ながら歩く。一人は傷だらけの身体にボロボロの服を着ている。身長の高さてきに五歳か六歳ぐらいだろう。少年をよく知らないが経験上から危なげな感じがする。
その子は背中に赤ん坊を背負っていた。首は後ろにがっくりと傾き、ぐっすり眠っているように見えるが、あそこは子供が赤ん坊を背負って行くような場所ではない。
たぶん死んでいるのだろう。
安全な食料も綺麗な水もない場所で何人の赤ん坊が生き残れるだろうか。もし生き残れたとして成人になるまでに罅の入った川の堤防が氾濫したかのように心を決壊していないだろうか。
壊れた心を修復するのは長い時間と途轍もない苦労が必要だ。弱い者が死んでいく場所で時間と苦労を払ってまで一つの人生を救う人がいるだろうか。
男の答えは否。それをできる人がここにいるとは思えなかった。自分もその中の一人だ。そもそも、商売目的以外で他人に声をかける人がいるだろうか。
男の性格は歪んでいる。誰かが困っているとしてもその子が他人であれば知らぬ顔をしてその場を通り過ぎる。なるべく他人と関わらないと決めたのだ。
ここは男のような性格の人が多いだろう。自分が生きるのに必死で他人に気を配っている暇などないのだから。
無法地帯にある数少ない店の中で得に多くの荒くれ者や傭兵が集まる店に辿り着いたので少年から目を離し店の扉を開けようとドアを押す手に力を込めると後ろから声が聞こえた。
「どうしたの君?」
振り返ってみると死んだ赤ん坊を背負う子供に話しかける人がいた。フードで顔が見えないが声色で女だと分かる。男は驚いて扉を押せなかった。
どうやらこの町はまだ死んでいなかったらしい。
あの少年はきっと大丈夫だろう。謎の自信が湧いた男は少年と女を背に店の扉を開けた。




