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幕間 大戦士視点・前

 リク・ルゥルゥ

 それは、初めて聞く名だった。


「イヅルで起きた反乱の指導者、リク・ルゥルゥ!

 百戦百勝の智将、伝説の後継者、民のために立ち上がり民のために戦うかの英雄が、偽王を打ち倒したのです!!」


 そういえば、皆がそんな男のことを噂していたか。

 民衆の間ではかなり人気を博しているらしく、部下も興奮気味に報告している。


 だが、所詮は一過性のものだ。

 イヅルを滅ぼしたのが連邦でなかったのは意外だったが、間違いなく遠からず連邦は東方へとその食指を伸ばすだろう。

 そして世界の中心であり精神的支柱でもあったイヅル亡き今、東方が為す術なく連邦に飲み込まれるのは間違いない。


 そのとき、かの反乱指導者の名前を覚えてる者がどれだけいることか。

 いやむしろ、連邦が襲ってくるまでその男が王の地位にあり続けられているかも怪しいものだ。

 この大陸に数多出現した他の王達と同じく、あっという間に引きずり降ろされてもおかしくない。


 それより今考えるべきは我ら南方のことだ。

 東方が連邦の手に落ちれば、もはや人間界に連邦の敵はいなくなる。

 東方に手を貸し延命を図るべきか、有利な条件で連邦と手を組むべきか…


 そんなことを考えている内に、男の名など忘れてしまった。

 思い出すこともないだろうと考えたその名は、その後も度々耳にすることとなる。


 ---


「リク・ルゥルゥ、平民出身のボード卿を正式に宰相へと任命したそうです!」

「血筋や出身などを問わず優秀な者が引き立てられ、埋もれた才能が次々と開花しています」

「ベガス。あのような街、大陸広しといえど他にはありますまい」


「リク王がイマワガ、タキダ、ホジョの三国を撃退しました!」

「大陸最強と言われるタキダ騎士団を敗退せしめるとは…」

「タキダの新王ゲンシン、リク王に忠誠を誓ったとのことです。父王とは違いその優秀さで名を馳せた男にございます。彼を平伏させるほどの王なのです」


「大戦士、この本というものを御覧ください。このような上質な紙が安価に、さらに大量に出回ってございます」

「ルゥルゥ国では通貨改革を始め、数々の先進的な改革が推し進められています」

「これらも全て、英雄王の手によるものなのです!」


 英雄王、リク・ルゥルゥ

 もはやその名を耳にしない日はなくなった。


 規模としては東方の一国家に過ぎなかったイヅル国

 それがルゥルゥ国となると、瞬く間に名実ともに東方の盟主の地位を確固たるものとした。

 元々文化の発信源ではあったが、今では技術の発信源となり、更には魔法国に次ぐ魔法の発信源にもなろうとしているという。


「いったい、何者なのだ。リク・ルゥルゥ…」


 そんな折、突如驚愕の知らせが舞い込んできた。

 かつて恥辱の日に奴隷とされた戦士たち、そして彼らを人質にして連れ去られた女たち、彼らの一部が帰ってきたというのだ。


 ---


「お目にかかれて光栄です。大戦士、ウェルキン・ゲトリクス」


 リクスと名乗ったその男、外観は確かに南方の血を引いている。

 年の頃は二十前後といったところか。


 だが、恥辱の日に連れ去られたにしては歳が若すぎる。

 当時戦士見習いだったこの身の半分程度なのだ。

 赤ん坊だったとしても計算が合わない。


「私は南方人を父と母に持ち、ルゥルゥ国の都で生まれ育ちました」


 なるほど。恥辱の日以後の世代というわけか。


「都の貧民街で裏社会の用心棒をして生計を立てておりましたが、英雄王陛下のお慈悲により救っていただいたのです」

「英雄王の?」

「はい!陛下はごみ溜の中で一生を過ごすしかないと考えていた我々に希望を与えてくださいました。幼い子達には教育を、そして我々のように大人となっていた者たちには職や新しい道を示してくださったのです」


 英雄王

 まさか、我らの同胞にも手を差し伸ばしていたとは…


「それで新しい職を得て金を稼ぎ、お前の父や母を含む同胞たちを連れ戻してくれたというわけか?」

「はい!!」


 先程見た広場の光景を思い出す。


 数十年ぶりに再開する家族達の姿。

 奴隷としての過酷な生活を物語る戦士たちの体の傷。

 決して口にすることはできないであろう、女たちの奴隷時代の生活。

 それらを全て吹き飛ばすような歓喜の声が、広場を覆っていた。


 しかし、あれほどの数の同胞を奴隷から解放するには生半可なことではない。

 眼の前にいる男がいかに優秀であろうと、とても実現できるとは思えない。

 いったい如何にしてこれだけのことを成し遂げたのか考えていると、こちらの怪訝な顔に気づいたのかリクスが自分から語ってきた。


「もちろん、私一人の力ではありません。皆で協力して稼いだのです」

「皆で、協力?」

「はい!少々時間がかかりましたが、かなりの数の同胞を救うことができました。少なくともイヅルにはもう虐げられている同胞はいないでしょう!」


 一国の同胞たちを全て救ったという驚愕の事実。

 しかしそんな偉業を成し遂げた当の本人は、そんな素振りを少しも見せない。

「次の目標は東方全土ですね」とはにかんでいるその姿は、年相応だ。


「今回は私が代表として父や母たちを連れて帰りましたが、他の皆はもっともっと金を貯めようと今この瞬間も励んでいるでしょう。私もすぐに戻り、また稼いでまいります!」


 東方全土の同胞の解放

 それを決して夢物語で終わらせるつもりはないらしい

 いったい、どうやって…


「お前たちは、いったいどこで何をやって、稼いでいるのだ?」


 リクスは一瞬キョトンとすると、弾けるような笑顔で答えてきた。


「ベガスの闘技場です!あの街では、実現できない夢なんてありません!!」


 英雄王、リク・ルゥルゥ

 かの王が造り上げた桃源郷、ベガス


 この目で確かめねばなるまい。

結局土曜更新になってしまい、申し訳ありません。

しかも長すぎたので分割しております。後編は数日中に更新するようにしますので、今しばしお待ち下さい。


たくさんの誤字脱字報告、ありがとうございます。

通知がなかった為気づいていなかったのですが、本日までにご指摘いただいた箇所は全て修正いたしました。

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