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08話 盗賊団の調査

ブックマークありがとうございます!

ポイントが増えるとすごい励みになります。

こんなにモチベーションに影響するとは自分で書き始めるまで気づきませんでした。がんばります。


今までのあらすじ

村での地位が上がって、仕事が増えました

「盗賊が現れたぁ?」


 強盗ではなく盗賊である。

 元の世界では一生関わり合いにならなかったであろうやつらだ。


 今回の依頼を持ってきたむさいおっさん連中とは隣の村のおえらいさん方である。

 ここらじゃ一番大きくて金を持っている村だが、うちの村長やアルカには頭が上がらないらしい。


「まさに盗賊団が現れたんでございます、先生

 義賊を名乗ってうちらには手を出してきやしませんが、うちらの村を通る商人達が襲われております」


「じゃあ関係ないじゃん」


「関係ないなんてとんでもございません!

 その商人の方々が村に泊まっていかれるからわしらの村は暮らせているのです

 このまま盗賊団がのさばって商人が来なくなったら、わしら村を捨てるしかありませんよ

 しかも最近では商人の往来が減ってると、都の高貴な方々からわしらに文句が来る始末でして…

 村を捨てるどころか身に覚えがない罪でしょっぴかれちまいそうでございます」


「「先生、どうかお助けください!!」」


 みんな同時に額を地面にこすりつけ、お願いしてくる。


 つまり彼らの村は宿場町として潤っていたわけだ。

 そして今まではその金を使って他の村々に影響力行使していいようにやってきたのであろう。

 しかし今回はその力の源泉である金がなくなりそうで、最近近隣で噂になっている俺に頼りに来たらしい。

 村長に頼るのは気がひけるのか、わざわざ留守のときを狙ってくるあたり小賢しい。


 しかし盗賊団は問題だ。

 将来的にうちの村が被害を受けないとは限らない。

 今のうちに潰して未然防止、かつこいつらに恩を売るということで依頼を受けると返事をした。

 するとこいつら追加情報をべらべら話し始めて、いろいろと面倒そうな事情があることがわかったのである。

 …村長にチクって今度シメてもらおう。



「とりあえず今から潰しに行って来ましょうか?」


 連中が帰ってすぐ、開口一番にアルカが言う。話が早すぎて困る。


「だいたいの場所はわかりました

 あの山ならしらみ潰しに探しても1日かかりませんし、今から行けば明日の朝にはすっきりできると思いますよ」


 仕事も早い。


「いや、問題はそう単純じゃないだろう」


 追加情報の案件である。これがなければアルカが一晩でなんとかしてくれたのに。


「ただの盗賊団ならそれでいいが、やつらは義賊を名乗ってるらしいじゃないか

 実際襲われてるのは村を訪れるような商人ではなく、都の貴族を相手にしてるようなやつらばかりだ

 しかも命は奪わず金も奪わず、貴族に納品する"もの"だけを奪う

 腕は立つし、分別もつき、目利きもできる

 色々と裏がありそうだ」


 義賊を捕まえたら実はお殿様の世を忍ぶ仮の姿で、逆に俺らがお縄になるなんて話はごめんこうむる。


「だからまずは調査だ。

 盗賊団のアジト、やつらの素性と目的、これらが判明したのち改めて対応を考える」


「わかりました!」


 アルカが元気に可愛く返事をする。

 カルサは相談を受けるまでは我関せずのため、会話をスルーして本を読んでいる。


 今回はアルカと二人での問題解決になるかな。



「さあ先生、アジトはこっちですよ!」


 なのになんでこいつがいるんだ。


「あの盗賊団は俺も何か裏がありそうと思ってたんです

 先生と同じ考えにいきつくたあ、鼻が高いですね」


 ジェンガは相変わらず俺のことを買いかぶってくれている。

 …誰でも考えつきそうなことなのになあ。


「ジェンガがついてきてくれるなんて安心ですね、リクさん」


 アルカが人を頼りにするなんて珍しい。

 ま、まさか!?


「ジェンガは都出身なんですよ

 都が嫌になったとかで、うちの村に来てくれたんです

 だから都のことに詳しくて、義賊が都につながってるならジェンガに確認してもらうのが一番です」


 ジェンガってシティボーイだったの!?

 予想は外れたけど、もっとビックリしたよ!


「ははは!アルカさん、昔の話はよしてくれ

 俺にとって都での生活はもう思い出すのも難しいような遠い昔の出来事さ」


 いつものような大笑い。

 だが目は笑っていない。

 おそらく都で色々あったのだろう。

 深入りは禁物だな。



 盗賊のアジトというから洞窟を想像していたが、捨てられた村が利用されていた。

 数十年前、前回の魔物の襲来で滅びた村らしい。

 数十年に一度起きる大事件が初年度で起きるとは、俺の運は良いのか悪いのか…。


「人数はそこそこいるな

 しかも全員兵士としての訓練を受けているやつらだ

 先生、どうやら大当たりのようですよ?」


 兵士としての訓練を受けてるのがわかるお前にビックリだよ。

 都で何してたんだ。


「首領は村奥の大きい屋敷にいるようだな

 夜まで待って、偵察しに行こう」


「私干し肉持って来たんです

 はいどうぞ、リクさん」


 ありがとうアルカ。美味しいよ


「喜んでもらえたようで嬉しいです。

 ジャイアントピーンって本当に美味しいですよね」


 アルカは屈託のない笑顔で笑っている。


 ジャイアントピーンとは俺がこの世界に来てすぐに殺されかけた野獣である。

 肉は美味しく、毛皮は高価とその暴力性を無視すれば非常に素晴らしい生き物だ。

 自分を殺しかけた動物の肉を食べるって、不思議な感覚。



 夜になり、行動を開始した。

 足音を消せない俺はジェンガに背負われている。

 アルカに背負われるのはさすがに色々とダメだと自重した。


 二人とも慣れたもので、全く音を出さず、夜の闇の中をどんどん進んで行く。

 俺には腕を伸ばした自分の手のひらすら見えないのに。


 時に塀を超え、時に穴をくぐり抜け、時に見張りをやり過ごし、目的の屋敷までたどり着く。

 慎重に屋敷に入り、人の気配がいる方向へと向かう。

 なお、俺はジェンガの背中でびっくりして声が漏れたりしないようがんばったことを報告しておく。



「若、いつまでこんなことを続けるおつもりですか?

 このままではむざむざ時間を浪費するばかり」

「偽王めらが我らの正体にいつ気づくかわかりませぬ

 やもすればすでに討伐隊が送られている可能性も」

「若、どうかご再考を」


 身なりのいい男たちが話しかけているのは、上座に座る女と青年だ。

 若と呼ばれているのは女の方。凛とした美人だ。

 青年はその美女の影のように鎮座している。

 

「皆の気持ちはわかった

 しかし、もう少しだけこれを続けさせて欲しい

 どうかこの通りだ」


 美女が頭を下げると男たちを頭をあげて下さいとあわて始める。


「姉上にここまでさせるまで追い詰めて、これであなた方は満足しましたか?」


 影のような青年が口を開く。

 姉弟だったらしい。


「姉上のお考えにまだ異論のある者は?」


 青年は質問を続けるが、男たちは誰も答えない。


「では今宵の軍議はこれで終了ですね

 もう夜も遅い。早く寝て明日に備えましょう」


 部屋に残ったのは青年と女だけ。

 さて偽王とか若とか気になる話題が色々出てたなあ。都合よく情報集まりすぎだろラッキー

 なんて考えてるとジェンガが当たり前のように二人の部屋にいる部屋へ侵入する。俺を背負ったまま



「両殿下におかれましてはご機嫌麗しゅうございます

 再びご尊顔を拝し奉る機会を得、恐悦至極に存じ奉ります」


「久しいな、ジェンガ

 息災のようで妾も嬉しいぞ」


 流れるような動作で跪き、口上を述べるジェンガ

 そして当然のようにそれを受け止める女。



 なかなか頭が現実に追いつかない。

 まずある意味俺の予想があたってしまったことがわかった。

 そして予想以上に問題が複雑そうなこともわかった。


 そしてジェンガ、早く俺を降ろしてくれ。

 お前がひざまずいた結果、背負われてる俺は女と完全に向かい合った状態なのだ。

 視線が痛い。

今回も次に続く内容になります。

次話も読んでいただけますよう、お願いいたします。

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