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70話 東西の盟主VS大戦士

「勝負の方法は?」


 会談場所から少し離れた荒野の一角


「簡単だ。武器も魔法も使用禁止。己の肉体のみで相手をねじ伏せる」


 両軍に噂は広まっているらしく、押しかけるように人々が集まって来た


「…勝敗は?」


 俺たちの立つ場所はかつて池でもあったのか、周囲より少し窪んでいる


「それも簡単だ」


 ギャラリーからよく見える、おあつらえ向きの場所


「相手に負けを認めさせたら、勝ちだ」


 ちょうどいい


「…相手を殺したら?」


 南方の民にも、西方の民にも、見てもらおう


「当然、()()()()()()()()。話し合いで相手を殺すなんてとんでもないこと、してくれるなよ?」


 俺の戦い、目に焼き付けてもらおうじゃないか


 ---


「魔法による肉体強化は?」

「もちろん不可だ」

「周囲の者達による援護は?」

「論外だ」

「口が聞けなくなるほど傷ついたら?」

「そのときは休憩を挟んで再開だ。その際には治癒魔法を使うこともありだと思うんだが、どう思う?」

「…いいだろう」


 ドンッ!

 地面が揺れ、少し体浮き上がる。


「委細承知したぞ、英雄王。あとは戦いの中で確認させてもらおう」


 大戦士が構えている。

 それだけで、軽い地震のような揺れが起きたわけか。


「納得してもらえたようなら何よりだ」


 では、そろそろ


「そろそろ、始めようか」



 次の瞬間、俺の体は吹っ飛んでいた。

 そのまま地面に叩きつけられ、数バウンドする。

 体は反射的に縮こまり、胃の中のものは全て逆流した。

 昨夜無理やり詰め込んだものから解放されて少し楽になるかと思ったが、ひたすらに痛くてしょうがない。


 腹に穴が空いたような錯覚に陥ったが、今手で腹を抑えているのでそれはなさそうだ。

 そして少し落ち着いたら全身が痛み始めてきた。

 頭を打たなかったのが不幸中の幸いか。


「…まさか本当に見た目通りだとは」


 なんとか視線を声の方向へ動かす。

 視界が霞んでよく見えないが、大戦士を視界にとらえることができた。


「英雄王、あなたの体は拳で語り合うよう鍛え上げられてはいない」


 ご明察だ


「あなたでは、我が戦士の中で最も若輩な者にも勝てはしないだろう」


 ああ、俺もそう思う


「なのに!なぜあなたはこの勝負を挑んできたのだ!?魔王ワーズワースすら屈服させるその魔力があれば、我らを一瞬で消し炭にすることができるというのに!!」


 残念だが、あれは俺の力じゃないんだよ


「そもそも!戦闘開始前どころか会談の前から肉体強化魔法をかけておけば、それが実力だと強弁することだってできたはずだ!!」


 なるほど。そんなこと思いつきもしなかった


「肉体強化魔法にはそれだけの力がある!かつて魔法王が肉体強化によってジャイアントピーン10体を相手に大立ち回りを演じたこと、知らぬと思ったか!?」


 俺が知らなかった…。馬路倉すげえな


 だが、どれも的はずれだ。

 そろそろ答え合わせの時間といこうか。


 ふらつく足を気合で奮い立たせ、立ち上がる。

 その間視線はずっと大戦士を捉えている。

 魔物をも睨みつけた俺なのだ。

 今回だって、一瞬たりとも視線を外してやるものか。


「ようやく、本当に、理解してもらえたようだな」


 震える声を絞り出す。


「俺は別に、力で、お前に勝つつもりなんか、ない」


 大地を踏みしめる。


「これは、お前が一方的に俺をボコるための儀式さ」


 地震なんて起こせやしないが、俺なりに精一杯に。


「だから、殺すことを禁じた。俺が死んだら、戦争が始まる。もう誰にも止められない。だから、殺すことは許さない」


 そのために条件をつけた。

 戦争を起こさせないために。

 傷ついたら治すという追加条件までつけて。


 息を整え、真正面から大戦士を捉える。


「我こそは、東西の盟主、リク・ルゥルゥ。東方の栄光も、西方の繁栄も、全て我が手中にあり!」


 そう、俺は王様だ


「ゆえに、東西の過去の罪も、全責任は俺がとる!!」


 王様だから、酸いも甘いも全てを受け入れる


「大戦士、ウェルキン・ゲトリクス!!」


 ようやく視界の霞がとれた。

 時間にして数分程度のはずなのに、ずいぶんと大戦士の顔が懐かしい。

 先程までの顔とは打って変わって、その顔は驚愕一色だ。


「お前たち南方の憎しみも怒りも、全て俺にぶつけてこい!!」

大戦士との会談、本番でした。ただ今回で終わるつもりが、もう一回続いて申し訳ありません。

前回はたいへん評価いただきまして、ありがとうございます。

楽しんでいただけると嬉しいです。

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