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49話 魔法の首飾り

「リクよ、そなた死ぬ気か?」


 任務から帰ってきたミサゴが開口一番そんな物騒なことを言ってきた。


「いやいや、ただ魔法国へ行くだけだよ。戦争もしないし戦いもする予定なし」


 しかし険しい顔は変わらない。


「魔法国は魔法が使えぬ者、やつらが”只人”と呼ぶ者はいかなる地位の人物であろうと受け入れることはありえぬ。むしろ只人が侵入などしようものなら、間違いなく殺されるぞ?」


 マジか。


「そなたの入国を許したのも、自国内で始末するためやもしれぬ。魔法国が魔法使い以外入国厳禁なのはもはや世界の常識。只人のくせに魔法国への入国を試みた者が殺されようと、同情さえされぬ」


 やばい。普通に殺されそう。

 しかし今更魔法国行くの取りやめるのもあれだし、カルサ一人で行かせるのは論外だし…。


 こんなときはどうすればいいか?

 そう、いつもの丸投げだ。


「ミサゴ、そう意地悪言うものじゃないぞ?」


 とりあえず目の前にいるミサゴに投げてみよう。

 ダメだったら別の誰かに再チャレンジだ。


「魔法国へ俺が侵入する手段、あるだろ?」


 あってくれ!


「ふふっ。やはりそなたに隠し事はできぬな。トトカ!」


 やったー!


 トトカがうやうやしく持ってきのはペンダント。

 でっかい宝石がついている。


「我がイヅル一族に伝わる宝物。魔法の首飾りである」


 名前からして魔法が使えそうだ。


「首飾りの宝石、ここには魔力を蓄えることができる。そして魔力が使えぬ人間でもこの首飾りをつければその蓄えた魔力で魔法が使えるようになるというわけだ」


 なんと便利な。


「イヅル建国王、初代様も魔力をお持ちではなかった。しかしこの魔法の首飾りにより数多の魔法を操り、斬鉄剣とともに大魔王を討ち取ったという」


 素晴らしい!これで俺も魔法が使えるようになる!


「さすがミサゴさん。面白いものをお持ちですね」

「お姉ちゃん、それ面白いっていうか反則でしょ…」


 話に集中してて部屋に入ったきたことに気づかなかった。

 アルカとカルサが俺の肩越しに首飾りを覗き込んでいる。


「ちょうどよい。強大な魔力を持つものが二人も来たではないか。魔力を込めてもらうがよかろう」


 確かに。魔力を込めてもらわないと宝の持ち腐れではないか。


「カルサ、頼めるか?」

「まあ、あたしのための話だしね。ちょっと借りるわよ」


 カルサが宝石を握ると同時に、宝石がいきなり輝き始めた。


「ほう…」


 ミサゴが何か意味ありげにつぶやき、そのまま十秒ぐらいで輝きはおさまった。


「か、カルサ。大丈夫か?」

「大丈夫だけど、あたしの魔力、からっぽになっちゃった…」


 カルサはそれなりに魔力があるはず。

 それがわずか十秒で空っぽになってしまうのか。


「それだけ持てば大したものよ」


 ミサゴは驚くどころか感心している。


「初代様のときは国中の人間が魔力を込めたが、鈍く輝くだけだったという。それだけの輝きをたった一人で生み出すとはな。カルサ、そなたやるではないか」

「そ、そうかな?」

「常人では触れただけで魔力を全て吸い取られる。握りしめられる者などそうはおらぬぞ」

「え、えへへ…」


 かなり嬉しそうにしてる。

 本当にこいつは褒められるのに弱いな。


 そんな妹を見て今度はアルカが宝石に手を伸ばす。


「じゃあ、私も魔力込めてみますね」


 また激しい輝き。今度はどれだけ続くのか!?


 ---


「まだ、おさまりませんね」


 あれから小一時間経った。

 すでに俺達はトトカが準備をしてくれたお茶を飲み始めている。

 ハイロが淹れてくれたお茶もうまいが、トトカもかなりの腕前だ。

 お茶が好きらしく、葉っぱも自分で選んでいるらしい。

 さすが都の名門のお嬢様。

 ちなみにハイロは別の任務で泣く泣くミサゴから離れているらしい。


「そなたの魔力は底なしか?」


 最初は驚いていたミサゴだが、もやは驚きを通り越して呆れ返っている。

 カルサは「お姉ちゃんに底なんかあるわけないでしょ」と達観してる。

 こんな姉をもったらそりゃ褒められることに飢えるわな。

 アルカの規格外っぷり、恐るべし。


「アルカ、そろそろいいんじゃないか?」

「そう、ですね」


 アルカが宝石を置く。

 この宝石には今どれだけの魔力が込められているのだろうか。


「正直、宝石のほうが先にいっぱいになると思っていました」


 自分の魔力の量にそれだけの自信があったのか。


「でも、このまま続けても私も宝石も終わりがないと思います」


 どちらも底なしというわけか。


「この宝石、すごいですね…」


 アルカは純粋に驚いている。

 いつもニコニコ笑っているから笑顔以外の表情はどれも新鮮な感じだな。


「まあ、初代様が神より授かったものらしいからな。尋常なものではあるまい」

「神様?」


 そんなのいるの?


「聞いたことがあります。おばあちゃんもお会いしたって」

「あたしも聞いた。おばあちゃんの力は神様から授かったものだって。女神様のお力を持ってるからおばあちゃんはすごかったんだって」


 なんと。

 村長は神に会っていたのか。


「然り。初代様、そしてルゥルゥ老、歴史に名を刻んだ者はそのほとんどが神から力を授かって大事を成した。魔法王も会ったことがあると聞く。リクよ、そなたは例外中の例外なのだ」


 ミサゴが褒めてくれた。

 トトカも羨望の眼差しを送ってくれている。

 俺はただ偶然と奇跡だけでここまで来てしまっただけなのだが…。


「まあ、でもあれだな。これでこの首飾りをつけることで、俺も魔法が使えるようになるわけだな!」


 ついに俺にも魔法が!

 さようなら無能力者の俺

 こんにちは魔法使いの俺!


「兄様、そんなうまくいくわけないでしょ」


 しかしそんな俺に冷水を浴びせるかの如き声がかかる。


「魔法だって修行が必要なのよ?よっぽど才能がない限り、それなりの期間鍛錬を続けないと魔法のまの字だって使えやしないわよ」


「まあ、あたしやお姉ちゃんはすぐ使えたけどね」と自慢が付け加えられた。


「いやいやカルサよ、リクであるぞ?才能は折り紙付き。そして首飾りにこめられた魔力量もおそらく史上最大。明日の朝には魔法が使えるようになってるやもしれぬ」


 確かに。

 アルカの魔力、そして神の力が奇跡を起こしてくれるかもしれない。


「どうかしらねえ…」と呟くカルサをよそに俺はいそいそと寝室にこもる。

 手にするはカルサによって著された「だれでもなれるまほうつかい」。

 今や我が国の魔法使い初等教育の聖典だ。魔法を基礎から学べ、さらに魔法の真髄にも触れられる名著と他国でも次々と採用されているという。

 さあ、これで俺も魔法使いだ!!


 ---


 翌朝の早朝

 俺は体力的にも精神的にも摩耗仕切り、部屋の床で大の字になっていた。

 ノックもなしにカルサが部屋に入って来、テーブルの上に温かいお茶と美味しそうなお菓子を準備してくれている。


 俺はのそのそのと立ち上がり、お茶を飲む。

 カラカラだった喉が潤い、体全身に沁み渡る。


 お菓子を口に含む。

 めちゃくちゃ美味しい。涙が出るほど美味しい。


 そんな俺を抱きしめて、カルサは言う。


「兄様は兄様だから。魔法なんて使えなくてもいいの。泣かないで」


 泣いてないもん。

前回更新から時間がとれず、遅くなって申し訳ありません。

魔法国に行くはずだったのですが、前段が長くなりすぎたのでここまでで更新します。

3話とは同じような結末ですが、ずいぶん態度が変わってますね。

ブクマ、評価、ありがとうございます。次回こそ魔法国へ行く予定です。

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