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48話 魔法国への招待

 魔法国からの使者。

 彼らはまず自己紹介を始めた。


「私は魔法国宮廷魔術師筆頭エド・マクレディと申します。この者は我が弟子、ベイジー。数々のご無礼、お許し下さいリク王陛下」


 宮廷魔術師!

 かっこいい!

 俺の目指すものがそこにある!


 無駄にテンションが上がって喜んでしまっている俺と対照的に、ボードとジェンガは殺気を出しながら睨みつけている。


「国殺し、エド…!」

「先程の宣戦布告発言は、自分一人でうちの国と戦えるっていう意味か?なめてくれるじゃねえか…」


 対するエドも負けてはいけない。


「そのようなつもりは毛頭ございませんし、その二つ名は過分に過ぎます。ただ、我が力を見たいとおっしゃるなら喜んでお見せいたしましょう…!」


 殺気?オーラ?が目で見える。

 まさに一瞬即発状態。

 これはいかんな。さすがに止めないと。


「おほん!」


 わざとらしい咳払い。

 部屋の空気が少し変わった。


「俺が話を聞くことになった以上、彼は俺の客人となったわけだ。二人共、俺に恥をかかせてくれるなよ?」

「リ、リク様に恥をかかすなんてとんでもないです!すみません!」

「お館様、申し訳ございませんでした!」


 二人とも素直でよかった。

 エドも毒気を抜かれたような顔をしている。

 とりあえずは問題なさそうだな。


「失礼したな、お客人。続けてくれたまえ」


 気付けばすでに顔は引き締まっており、その鋭い瞳で俺を見つめてくる。

 睨んでいるわけではないが、やはり迫力あるな。

 さぞや多くの修羅場をくぐってきたのだろう。


「改めて申し上げますが、本件は我が国の国家機密です。ゆめゆめ口外することなきようお願いいたします」

「当然だ。この場の誰が漏らしても、責任は俺にある。俺が責任を取り、他の者には罪を問わないことをそちらも約束してくれるだろうな?」

「…承知いたしました」


 よしよし。この場にいるのは国の宝ばかりだからな。

 万が一にも欠けてもらっては困る。

 俺に何かあっても実質うちの国はほぼノーダメージよ。

 まさか王が一番何もできない人間だとは知る由もなかろう!ふははは!


「リク様、俺達なんかのためにそこまで!!」

「お館様は、人を救うために御身すら…」

「…兄様」

「リクさん、あなたは本当にすごい人です」


 なんか四人が四者四様に尊敬の眼差しで見てくれてる。

 カルサもなんて珍しい。照れるじゃないか。


 そして向こうは向こうで同じようなことをヒソヒソ話し合っている。


「お師様、本当によろしいのですか?」

「かまわない。全責任は私がとる。ベイジー、お前はこの件に関して心配することは何もない」

「お師様…」


 本来はカルサだけに伝える内容を複数人に言うわけで、それだけでも問題なのに万が一漏れでもしたらあいつもクビが飛ぶかもしれないわけか。

 弟子をかばうところはいい師匠だな。

 あ、俺の視線に気づいた。


「失礼いたしました。では、要件を伝えさせていただきます」


 いきなり本題か。わかりやすくていいね。


「魔法王陛下が、身罷られようとしております」


 ---


 魔法王。

 それは魔法国最強の魔法使い。

 そしてこれはイコール、世界最強の魔法使いということを意味する。


 世界最強の魔法使いが死ぬとなると、確かに影響は大きそうだ。

 しかし周囲の反応はちょっと違う。


「魔法王が、死ぬ…?」

「魔法王は不死ではなかった、と?」


 なんかそもそも魔法王が死ぬことがありえないような言い方をされてる。


「魔法王による三百年に渡った魔法国の統治、それが、終わる…?」


 え!?魔法王って三百年も生きてるの!?


「…いかにも。魔法王陛下ほどの御方となれば、寿命を只人の数倍に伸ばすことなど容易いこと。しかしその陛下でも、永遠を生きられることはかないませんでした」


 只人というのは魔法の使えない人間のこと、らしい。

 魔法使いはかつて差別されてたらしいが、今は逆に魔法を使えない人間のことを差別する傾向にあるようだ。

 まあ、そこは置いとくにしても三百年も生きてるのは確かに驚いた。

 そしてそれが大層な国家機密ということも理解できる。

 しかしなぜこいつらがわざわざうちに来たんだ?


「で、その魔法王がもうすぐ死ぬこととうちのカルサに何の関係があるのさ?」

「魔法王陛下の後継者を探し出すためです」


 俺の率直な質問に対する簡潔な回答。

 魔法王の後継者?それはつまり…


「カルサが後継者になるってこと?」


 皆の視線がカルサに集まった。

 当然一番驚いているのはカルサで、本人は呆然としている。


「無論、後継者と決まったわけではございません。しかし、すでにカルサ王妹殿下のお力は我が国にも伝わっております」


 知らない間にうちの妹は有名人になっていたわけか。


「魔法王陛下より下された勅命は後継者候補の選抜と招集。殿下はその内のお一人となられたのです」

「魔法王?あたしが、魔法王の候補に…?」


 カルサがかすれた声で呟いている。

 まあ、自分が突然王様になるかもしれないなんて言われたら普通は呆然とするだろう。俺もそうだった。そして抵抗しても無駄だった…。


「それで、カルサを魔法国に連れていきたいと?」

「さようにございます。魔法王陛下にお会いしていただき、後継者としての適正を見定めさせていただきます」

「だそうだ。カルサ、どうする?」


 俺の問いかけにカルサは反応できていない。

 むしろ「兄様、どうしよう…?」と目で語りかけてくる。

 うーむ。こうなっては仕方がない。


「俺も一緒について行けるなら、カルサも参加させようじゃないか」

「なっ…!?」


 あれ?ナイスアイディアだと思ったのだが、どうも反応が悪い。

 カルサも「兄様、何言ってんの!?」と目で訴えてる。

 よしよし、いつもの調子が戻ってきたじゃないか。


「陛下、恐れながら我が国は魔法使い以外の入国はご禁制にございます」


 ああ、そういうことね。


「王族であっても?」

「例え陛下のように国王陛下ご自身であらせられても、例外はございません」


 なかなかに厳しいとこだ。

 しかしカルサ一人ってのはな…。それに…


「そもそも魔法国って大陸の西の果てだろ?そんなとこまでカルサ一人で行かせるなんて、そっちの方が問題だ」


 うちの国は大陸の東端。

 つまり大陸を横断するわけで、いったいどれぐらいかかるのやら。


「その点はご心配無用です」


 エドがにやりと笑う。

 そして取り出したのは一枚の布。

 パッと広げられたそれには魔法陣?のような紋様が描かれている。

 すげえ複雑だ。


「これがあれば、例え大陸の果てであろうと瞬時に移動が可能です。殿下が朝我が国にお越しいただければ、夕刻にはご帰国していただけることでしょう」


 ほほー。さすが魔法国。

 そんな便利なものがあるのか。


「要は転移魔法ってことね」

「転移魔法?」


 カルサは転移魔法を知らないらしい。

 SFを少しかじった俺がワープというものを教えてあげよう。


「主に3つの種類があるな。まず空間をぐねーって曲げてつなげちゃうもの。これが一番便利。次に時が止まってるような空間を通って行くもの。これは移動した本人たちはそれなりの時間経過を感じてしまう。そして最後は超高速移動でシュパーンって移動しちゃうもの。これは障害物があると困るから、建物の中では使えないね」


 カルサにものを教えられるなんて俺にしては実に珍しい。

 嬉しくなって一気に話してしまったが、そこはさすがカルサ。ちゃんと理解してくれている。


「この魔方陣は、空間に作用している…。つまり、兄様が最初に言ったものと同じ移動方式を採用している?」


 そして魔法陣まで読み取ってくれた。

 やはりカルサはすごいなあ。

 そしてあっという間にご自慢の魔法陣を読み取られてしまったエドは目を見開いて驚愕している。

 どうだ?うちの妹はすごいだろう?


「…陛下のご同行も、お認めいたします」


 妹自慢の話が始まるはずだったのに、なぜか俺の同行が許された。

 転移魔法の方式をいくつか言ったから、それが認められたのだろうか?

 まあ、よくわからんがOKなら喜んで行かせてもらおう。


「こちらの要望を受け入れてくれて感謝する。俺達にも準備がいるから今すぐとは言えないが、転移魔法があるのならば別に問題ないだろう?」

「承知いたしました。では五日後、再度お伺いいたします。場所と時間はいかがいたしましょう?」


 細かい話になったのでボードにパスする。

 ボードはそもそも俺が行くこと自体不満そうだが、そこは我慢してもらおう。

 危険は色々あるだろうが、なんとかなるさ。


 ---


 魔法陣を使って二人は帰っていった。

 シュン!って一瞬で消えてなかなかすごかった。

 今度自分が使えるんだと思うとワクワクする。

 残された布を所定の時間と場所に置いておけば、彼らは戻ってこれるらしい。

 実に便利だ。


「リク様、本当にお二人だけで行かれるんですか?」


 ジェンガはまだ心配そうだ。


「そんなにやばいの?あのエドって魔法使い。国殺し、だっけ?」

「はい。都市国家ではありますが、たった一人で一つの国を殺し尽くしました。国を陥落させたのではなく、民を一人残らず殺し尽くたのです。それでついた二つ名が、”国殺し”です」


 一人で一つの国を…。確かにやばそうだ。


「まあ、でもな。虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつだよ」

「それはそうですが…」

「俺とカルサを信じて待っててくれ。カルサが魔法王になることは確約できないが、無事に帰ってくるよ」

「リク様、そんなこと言われちゃ、俺には待ってるしか出来ませんよ…」


 こうして皆は部屋から出ていき、俺とカルサだけが部屋に残った。


「兄様、どうして断らなかったの?」

「ん?カルサは前々から魔法国に興味あったんだろ?」

「それはそうだけど…」

「理由なんてそれだけで十分だよ。せっかく向こうからいい機会がやってきてくれたんだ。旅行気分で行ってこようじゃないか」


 それに、だ。


「転移魔法、もう覚えたんじゃないか?」

「覚えてはいないけど、たぶん、同じようなものはつくれる」

「五日以内にできる?」

「たぶん三日以内には」


 さすが!


「じゃあやっぱり安心だな!」


 俺の”なんとか”は無事完成しそうだ。

 そんな安心した俺を見て、カルサが若干呆れている。

 さっきの呆然とした表情とは違う、いつもの呆れ顔。


「兄様、もしかしてあたしが転移魔法使えるようになるだろうからって行くこと決断したの?」

「もちろん。カルサならやれると信じてたよ。これで危険があっても速攻で逃げれるな!」

「兄様…」


 呆れたような、でも安心したような顔でカルサは笑う。

 

「兄様にはやっぱり、あたしがついていないとね」


 そう。いつでも一緒だよ。

また風邪がぶり返し、かつ自分の時間がとられるこの時間の更新で申し訳ありません。

ついにリクが魔法国へと旅立ちます。ここまで書かせていただき、ありがとうございます。

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