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05話 村の生活

今話から段落の先頭を一時開けてます。

今まで読みにくかったですね。たいへん失礼いたしました。


今までのあらすじ

村の先生になりました

 あらためて気づいたが、異世界なのに普通に言葉が通じている。

 そして言葉が通じているということはもしかして…と思ったら案の定、文字も読むことができた。


「大賢者様が文字を与えてくださったのさ」


 村長曰く、はるか昔に大賢者という存在がいた。

 彼が人生をかけてこの世界に文字を広めたらしい。

 彼がいたから魔法が本として残せるようになり、どんどん発展し広まっていった。

 だから本人は魔法が使えなかったにもかかわらず、彼は大賢者と呼ばれ今も世界中から尊敬を集めている。


 漢字は読めても書けないという、漢字変換に頼りきりな俺にはとうてい無理なことだ。

 異世界転生でそんなすごい大先輩がいたんだなあとしみじみ思う。



 大賢者のおかげで俺は算数だけでなく読み書きも教えることができ、それなりに先生らしくなった。


 文字が読みたいと子供だけでなく村の大人たちも集まってくる。

 この村では村長一家とジェンガぐらいしか文字は読めないらしい。

 でもカルサ以外はそれぞれ別に仕事があり、カルサはまだ子供だからと教えることができなかった。

 そこにヒモというか手の空いてた俺が先生として教える専門になったので、みんな渡りに船と習いに来始めたのだ。


 今まで散歩してても「この人は何してるんだろう?」という視線が痛かったが、今じゃ


「先生、お出かけですか!?」

「先生、私もうすぐ九九の三の段が覚えられそうです!」

「先生、ピーンが獲れたんで少し肉を持っていってください!」

「あー先生だー!」

「先生、明日もお願いしまーす!」


 色んな人に話しかけられる。

 なんだか面映ゆい。


 ちなみにピーンというのはタヌキみたいな生き物で、ちょっとかわいい。

 そして肉は意外とうまく、毛皮は村の貴重な収入源。

 しかしたまに突然変異を起こして俺が殺されかけたバケモノみたいな大きさになるらしい。

 変異しすぎだろ。


 アルカが仕留めたジャイアントピーンは村の倉庫で保管されてる。

 ジャイアン卜ピーンの毛皮は通常のピーンよりもはるかに高品質らしく、あれだけの大きさなら村が一冬超せるほどの財産になるらしい。

 村としてのへそくりだ。


 そんなやつを仕留めるアルカが村の先生なんてちっぽけな仕事をしてる暇はないわけだ。

 ちっぽけな仕事は俺に任せとけ!



「先生!今日はずいぶんとご機嫌じゃねえか!」


 背中に強い衝撃。

 確認するまでもない。間違いなくジェンガだ。


「お前の馬鹿力で俺が死んだらどうする?」


 はっはっはと笑い飛ばされた。


「俺なんかアルカさんに比べれば赤ん坊みたいなもんよ

 そんなアルカさんと一緒に暮らしてる先生なら、俺なんてかわいいもんだろう?」


「アルカと比べたら誰でもなあ…」


 俺の呼び名は兄ちゃんから先生に変わった。

「やはり俺が見込んでた通り、ただ者じゃなかった」からとのこと。

 むしろ剣の腕もたって実は学もある、こいつのがただ者じゃないだろ。


 それなりに親しかった人間に先生って呼ばれるのはまだ照れ臭い。

 ちなみにアルカは村の人全員にさん付けされてる。

 むしろ呼び捨てにできる俺がすごいらしい。



 ジェンガと軽く雑談をして別れると、噂をすればとアルカと出会った。


「リクさん!

 今日のお仕事は終わったんですか?」


「今日は大人は忙しいらしく、午前しか授業はなかったよ

 だからお昼をどうするか考えてたところ」


 子供は午前、大人は午後と住み分けができている。

 やはり大人たるもの、子供の前で知らないとは言いづらいらしい。

 当初アルカとジェンガは嬉しそうに子供にまじって授業を聞いてたが、無理やり追い出した。


「じゃあ一緒におうちで食べましょう

 ちょうど香草がとれたんです。お肉と一緒に焼くととっても美味しいんですよ」


 俺のかわりに腹の虫が返事をしてくれた。

 笑うアルカはかわいい。

 棒にくくりつけた巨大なイノシシ?を軽々運んでいたとしても。



 イノシシ?はイノシシでいいらしい。

 もしかしたら元の世界にいる動物は同じ名前なのかもしれない。大賢者様様だ


 香草で焼いた肉にぼたん鍋と豪勢な食事だ。

 今年の冬は獲物も多いし蓄えもあるし、豊からしい。

 さすがにカツカツでは俺を養えなかっただろうし、天候にも恵まれたようだ。


「ごちそうさま」


 食事が終わるとカルサはいそいそと部屋に戻る。

 行商人のギドからもらった本を読むのだろう。

 しかし引きこもり気味の妹をアルカはほっとけない。


「カルサ、少しは外に出たら?

 せっかく晴れてるのに家にばかりいたらもったいないわよ」


「はーい

 お姉ちゃんは外でボケーっとして過ごしても怒らないけど、家で勉強してると怒るんだね」


 ん?なんか流れ弾が飛んで来た?


「能なしが今じゃ村の先生様だもんねえ

 いいご身分ですこと」


 違った。

 完全に狙って撃たれてた。


「カルサ

 お前のその大事な本は誰がくれたんだい?

 そんな簡単に恩を忘れてしまうたあ、感心しないねえ」


 おお、村長が弾を払い落としてくれたぞ。


「ごめんなさい、おばあちゃん…」


「謝るのはあたしにじゃないだろう」


「えっと、アンタ、ごめんね」


 市場の日から、虫とは呼ばれないようになった。

 それなりに感謝してくれてるのだろうし、子供ってのは難しいものなのだ。

 雑な対応になれきってる俺にはこれぐらい余裕ですとも。


「感謝してくれて、ありがとな

 あのときも言ったが、たくさん勉強して村の役に立ってくれ

 それが一番の恩返しさ」


 いい笑顔で言った俺の素敵なセリフは軽く流され、今度こそカルサは部屋へと戻っていった。

 アルカは困った顔をしながら後片付けを始め、俺も手伝った。



 午前は子供達に読み書き算数を教え、午後は大人たち。

 昼は適当に食べて夕飯はアルカ、カルサ、村長の4人でとる。

 日が落ちたらさっさと寝て、日の出とともに起きる。


 これが今の俺の日常だ。

 ひたすら散歩の生活からは、進歩したかな?

ブックマークされた方、本当に励みになります。ありがとうございます。

今日初めてブックマークの件数が減少しましたが、皆さんに面白いと思っていただけるようがんばります。


今回はまったり話でしたが、次回は村に事件が起きます。

また読んでいただけますと嬉しいです。

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