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04話 先生になりました

前話の続きとなります。

翌日更新となり、申し訳ありません。

なんとか毎日更新を続けられるようがんばっていきたいと思います。


今までのあらすじ

算数レベルの計算力で驚かれました

算数レベルのお金の勘定ですごい驚かれてしまった。

逆に俺がびっくりです。


「む、虫!じゃあ、これはいくらよ!」


カルサが値札のついた品物を複数突き出して、どんどん質問をだしてくる。

おいおい、それ売り物だぞ。


「それは中銅貨5枚と小銅貨15枚

 それは大銅貨1枚に小銅貨10枚

 それは銀貨1枚ちょうどだな」


小銅貨1000枚で銀貨1枚ってとこに気づいた俺にかかれば、こんな算数ぐらい余裕ですとも。



「む、虫のくせに…。ありえない…」


「リクさん計算早くて正確で、すごいですねえ

 私だけだったら、商人さんも私もお釣りの間違いに気づかないままでした」


「兄ちゃん、やっぱただ者じゃねえな!

 いやたいしたもんだ!」


「こんな間違いしてたらウチは商売できなくなっちまうよ!信用問題だ

 お客さん、教えてくれて本当にありがとう」


みんなが褒めてくれて照れくさい。

いや、これぐらいマジで小学生レベルの算数なんで、褒め殺されてる気分になる。


「ははは。これぐらい何ともないですよ

 正しい対価を払い、正しい利益を得る。そんな当たり前のことができるよう、力をお貸ししただけです」


ちょっと調子に乗ってしまった。

無能力と凹んでた分、ちょっと、いやかなり嬉しい。

小学校卒業しておいてよかった。義務教育だけど。


この世界の文明レベルなら、俺みたいな一般人レベルの教養でもそれなりに役に立ちそうだ。

とりあえず食うに困らない程度の職にはありつけるだろう。

人間計算機とか?




「いやいや、本当に素晴らしい。

 我々の商隊に入っていただけませんか?

 計算が得意な方はいつでも大歓迎ですよ」


初めて聞いた声に振り向くと、長身痩躯で糸目の男が立っていた。

糸目の男の服装、明らかに他の商人とは素材が違う。もしかして、絹か?

この世界じゃ初めて見るぞ。


「私はギドと申します

 しがない行商人ですが、縁あって今はこの商隊の長を任されております

 いかがでしょう?村の噂ではあなたは記憶喪失で流れ着いたお方とか

 我々とともに旅をすれば、いつかあなたの故郷にたどり着けるかもしれませんよ?」


アルカもジェンガも、カルサさえもうさんくさそうに見つめてる。

俺もうさんくさく感じる。

嘘は言わない、だけど決して真実も言わない、そんな男だ。

「私、嘘は言っておりませんよ?」なんてセリフが超似合う男だ。


「残念だけど俺はこの村が気に入っていてね

 それに記憶を失ったのはこの村の近くってことは、俺はここらに用があったんじゃないか?

 むしろそっちの方がいろいろ思い出すのに役立つんじゃないかね」


記憶なくなってないけどな!

適当な理由をつけて断りを入れてやる。


「そうつれないことをおっしゃられると、悲しくなってしまいます…」


本当に悲しそうに見えるからすごい。


「あなたを見てるとお近づきになりたくなる、"商人の勘"が働くのです

 だからそう簡単には諦められません」


ギドはニコリと人の良さそうな笑顔を浮かべる。百面相か

そしてこんな怪しい男に騙されないと思ったが、続く言葉にみんな大きく反応した。



「私と行けばこの村から出て、広い世界が見れますよ

 この国の都は行ったことがありますか?毎日がこの行商で行っている市のように賑わっていますよ」


「都、か…」

ジェンガが都という単語に反応した。

都に何か思い入れがあるらしく、こいつには珍しく静かに遠い目をしている。


「もちろん、他の辺境の国々にも行けますとも。海は見たことありますか?

 世界の果てにつながっているのですよ」


「海!池よりも、湖よりもずっとずっと大きくてしょっぱいんですよね!?

 いつか見てみたいなあ…」

海と聞いたアルカは聞いただけで大はしゃぎだ。

海に期待してワクワクしてる女の子ってかわいい。元々美少女だからさらにかわいい。


「はるか西方の魔法国にだって行くのですよ

 かの国の文明には何度訪れても度肝を抜かれます」


「魔法国!!」

カルサが目をギラギラさせている。

魔力に自信があるだけあって、こいつにとっては目標となる場所なんだろうか。


「我々と一緒ん行けば、そんな広大な世界を旅することができるのです。

 あなたはただ計算が得意なだけの男ではないのでしょう?

 私にはなんとなくわかります。

 そして感じるのです。私とあなたをつなぐ何か不思議な縁を」


俺の赤い糸がこんな怪しさ満点の男とはつながっている?

冗談ではない。


「振られたのに言い寄る男は恥ずかしいぜ?

 俺はこの村のみんなが好きだ。この村が好きだ

 これからずっとと言われるとわからんが、まだ当分この村にいるさ」


告白したこともされたこともないくせに偉そうなことを言ってしまった。

アルカはいつもどおりニコニコし、

カルサがちっと舌打ちし、

ジェンガは元気に笑っている。


しかし現状、俺の異世界転移について情報を一番持ってそうなのは村長だ。

忙しくてあれから全然会えてないが、まずは彼女の話を聞かなければ動けない。

そして俺と旅に出るのは、怪しさ満点のこの男では決してない。



「振られてしまいました。本当に残念です」


全然残念でなさそうに言いやがる。

本心がまったく見えない。


「しかしお近づきの印に、この市で何か欲しいものをプレゼントいたしましょう

 どうぞお好きなものをお選びください」


高級そうな反物に立派な毛皮、もちろん宝石だってある。

選びようによってはそれで村が一冬越せるかもしれないようなお宝だ。


でも、俺が選んだのは一冊の本。


「カルサ、これやるよ」


「え?え!え?!

 む、む、()()()!いったい何のつもり!?」


なんかすごい警戒されてる。

好意は素直に受け取ってくれよー。


「アルカが欲しがってた宝石は高すぎだ

 でもお前が欲しがってた本ならまだお手頃な価格だろ?だからこれ

 それにお前が勉強してもっと魔法が上達すれば、もっと村の役に立つんだろ?

 じゃあ、これが村にとっても一番だ」


「こ、この本だって安くないのよ!?

 魔法の本なんて貴重だし…」


いろいろ言いつつ欲しいのだろう。

語尾が小さくなってるし、何よりすでに本を抱きしめてる。


「そうは言ってもお前だって何冊かもう持ってるじゃないか

 宝石みたいに一つあれば家一軒みたいな話じゃないだろ?」


「そうだぞ、カルサ

 せっかく兄ちゃんがお前のために選んでくれたんだ

 人の好意ってのはな、素直に受け止めるもんだ!あっはっは!」


さすがジェンガ。イケメンは俺が心に思ってたことをあっさり口にする。


「ではその本を差し上げましょう。

 たいへんお喜びいただけているようで商人冥利につきるというものです」


一癖も二癖もある笑顔でギドが笑っている。


「またいずれお会いすることになりましょう

 どうかそのときもご贔屓にお願いしますよ、リク様」



その後は少し備蓄を買い足して、みんなで家に持って帰った。

家についてからカルサはずっと部屋にこもって本と格闘している。

難しい字が多いらしく、なかなかたいへんそうだ。



夕刻、村長と少しだけ会話ができた。

最近ずっと忙しそうにしてたのは今日の市のせいだろう。

場所の準備から受け入れ態勢の手配、村として必要なもののリストアップと予算確保に購入と、村長の仕事は山ほどある。


「礼を言うよ

 うちの孫が世話になったそうじゃないか」


「たいしたことはしてないよ」


本当にしてない


「あんたの世界じゃ当たり前のことでも、こっちじゃ全然なんて話はごまんとあるんだよ

 もちろん逆もね

 謙虚なのはいいことだが、できることには自信を持つといいさね


 何より、カルサがあんな喜んでる姿を見るなんて久々だ

 それをたいしたことないなんて、贅沢なこと言ってくれるじゃないかい?」


少しだけ嬉しそうに話をし、去っていった。



日が落ち、村に市場ができた特別な日は終わった。



そして翌朝目が覚めると、俺は自分が村の先生に就任していたことを知るのである。

無事先生となり、ようやく成り上がりの足がかりができました。

行商人が話した国々にいつか主人公は行けるでしょうか。

そこまで書けるように頑張りたいと思います。


次話は日常話を予定しております。

どうか次も読んでいただけますよう、お願いいたします。

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