表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/191

34話 王様の仕事始め

 兄妹の危機を乗り越えた翌日、王様二日目の朝


 準備されたのは豪華な朝食。

 王様の朝食。

 アルカやカルサの顔より大きいお肉をはじめとして、1日かけても食べきれない量が広いテーブルいっぱいに並べられている。


 アルカはビックリしてる。

 カルサはげんなりしてる。

 俺も見ただけで胸焼けだ。


 小市民な俺たちにこれはきつい。


 しかし拒否したら料理人さん達も可哀想だしな…と逡巡する。

 とりあえず口をつけてみる。

 見た目通りうまい。

 だけどやっぱ贅沢すぎだよな…

 腹ももたれるな…と悩ましい。


「へ、陛下、何かご不満な点がございましたでしょうか?」


 料理長らしき人が顔面を真っ青にして問いかけてくる。

 まずい。そんな顔に出てたのか。

 とりあえずフォローしよう。


「いや、とてもうまいよ。最高だ

 ただ何というか…

 そう!民が今日の食事にも困ってるのに、俺だけこんな贅沢していいのかと悩んでたんだよ!」


 やった!完璧な言い訳!

 周りも納得してくれてる。


「なんとお優しい…」

「食事一つとっても民のことをお考えになられるとは」

「雄々しさと慈悲を兼ね揃えた名君であらせられる」

「我らはなんと偉大なお方にお仕えしているのだろう!」


 …なんか予想以上に評価されて困る。


「陛下!」


 大声にビックリして顔を向けると、さっきの料理長が顔面を涙まみれにして叫んでる。

 ちょっと怖い。


「陛下の民をご案ずる心、感服いたしました!

 食事のときぐらい陛下に安らいでいただきたいた思っておりましたのに、逆にご負担をおかけするとは、弁解のしようもございません!

 どうか、どうか私めに罰をお与えください!!」


 えー

 なんでみんなこんなに真面目なのー

 いや、真面目だから偽王の配下でも仕事頑張ってたのか。

 えらいなあ。


 そんなえらい人に罰を与えるなんてとんでもない。

 とりあえずまたフォローだ。


「俺への忠誠心からしたことにどうして罰を与えられようか?

 お前を罰するならば、まず俺に罰を与えねばならぬ」


 みんな「おおー」って顔してるぞ。

 いい感じいい感じ。


「そうだな…

 まずお前への罰。今後も俺にうまい料理を作り続けろ

 期待してるぞ?」


 料理長が平伏する。

 罰といいつつ何も変わってないからな。

 我ながら素晴らしい。


「そして俺への罰

 今後は豪華な食事を禁ずる

 質素倹約し、民のために金を使うのだ

 豪奢な食事は賓客が来た時など特別な場合のみとしよう」


 これで俺の胃がもたれる心配はなくなった。

 あとはそうだな


「アルカ、お願いがある」


「なんでふか?りふはん?」


 めっちゃ肉頬張ってた。

 すでにアルカの目の前の食事はなくなっており、カルサの分に手を出している。

 今までは本気を出してなかったというのか!?


 堪能してるとこ悪いけど、しょうがない。


「アルカが料理長に教えてやってくれないか?

 俺の好きな、アルカの故郷の料理をさ」


 疑問符だらけだったアルカの顔が輝いた。


「もちろん!喜んで!

 たっくさん作るんで楽しみにしててくださいね!」


 なるほど。アルカは質より量か。

 この料理を食べられなくなると残念がるかと思ったが、安心した。


 これで昼からは胃もたれの心配もないだろう。

 これにて一件落着!



 なお昨夜の件と合わせ、宮中の俺の評判が一層上がってしまった。

 女色を断ち、清貧を旨とし、常に民に寄り添う名君らしい。

 なんてこったい。




 食事の後、ミサゴが意気揚々と宮殿内を案内してくれた。

 アルカは用事があるということでカルサと二人でついていく。

 カルサも宮殿内には興味津々なようだ。


 謁見の間は昨日見たから、豪華絢爛な他の場所を案内されるかなーと思ったら予想外。

 案内されたのは兵の訓練場、調理場、馬小屋、メイドたちの控室に庭師の詰め所と、城の裏側の姿であった。

「有名所はそのうち誰かが案内してくれるであろ!」

 とのこと。


 行く先々で多くの人に声をかけてみる。

 なかなか歓迎されてるようで一安心だ。


 カルサも楽しんだようだ。

 特に盛り上がったのは馬小屋。

 城の馬は村の農耕馬とは違って立派らしく、おっかなびっくりなでたりしてた。

 動物園感覚だな。


 最後にたどり着いたのは執務室。

 とはいっても机に椅子がぽつんと置いてあるような部屋ではない。

 とりあえず広い。

 もちろん机や椅子はあるが、めちゃくちゃ装飾がこっていて豪華だ。

 さらには歓談できるような大きな机にソファーもある。

 ソファーに座ってみるとふかふかだ。

 このまま寝れるんじゃなかろうか?


「なかなかの部屋であろ?」


 ミサゴは自慢げだ。


「父上はいつもこの部屋で仕事をされていた

 妾は即位してからずっと後宮に監禁されていたため全く来れなんだが、変わってないようで安心したぞ」


 懐かしそうに机や椅子をなでている。

 思い出がいっぱいあるのだろう。


「残ってて良かったな」


「うむ!そしてこれからはそなた部屋だ

 心ゆくまで執務に励むが良いぞ!」


 え?


 気づいた時には遅かった。

 部屋の出口にはジェンガとボードがすでに控えている。

 そしてその後ろには両手に収まりきらないような量の資料を持った何人もの人々が。


「お館様、決裁をお願いいたします」


 勝手にやってくれていいのにー



 無駄な抵抗はせず、大人しく仕事を始めよう。

 まずは軍の人事だ。


「軍では現在複数名の将軍を任命し、彼らの元で再編しようとしております

 これが素案です」


 …俺の知ってる名前はナーランしかいない。


「このカルバナってのは誰?」


「私の副官であります

 リク様とは村で暮らしてた頃から面識があったかと思いますが…?」


 あー、あいつか

 顔はなんとなく想像つく

 名前は初めて知った


「いや、同じ名前の別人かと思っただけだとも

 他の人物について説明してくれないか?」


 墓穴掘りそうだからジェンガから話してもらおう。


「お任せください!

 次のイスターもリク様はご存知かと思われます

 偽王により家族を失い自暴自棄になっていたとき、リク様の手紙により希望を見出した者です

 あの後は持ち前の用兵の才を活かし、主に偽王側の領地の制圧で功を挙げました

 我々がギーマン砦や都の攻略に全力を注げたのも、偽王側の援軍を寄せ付けなかったイスターのおかげです」


 あの死に急いでた人か…。

 生き残ってたどころか大活躍してるようで良かった。


「俺の手紙が役に立って何よりだ

 期待していると伝えておいてくれ」


「はっ!イスターもさぞや喜ぶでしょう

 次のズダイスは偽王の元で地下牢に幽閉されていた男です

 半死半生でしたが、アルカさんの治癒魔法で生きながらえました

 気骨があり、頼れる男です

 ぜひ将軍に推したいと考えております」


「ジェンガがそう言うなら間違いないだろう

 任せる」


「ありがとうございます!」


 ジェンガが感激してる。

 いやいや、俺が判断するよりよっぽどいいですよ。


「しかしあれだな

 ただ将軍って言うのも味気ないし、なんかあだ名あるといいよな」


「あだ名、ですか…?」


「そうそう。諸外国に鳴り響く二つ名!みたいな感じ」


 そういうのかっこいいよね。


「例えば、そう、五天将とか!」


 天に特に意味はない。ノリだ。


「リクはすなわち天そのもの

 そのリク様に率いられるがゆえ五天将、か

 良いではないか」


 ミサゴの意見にジェンガ強く頷いてる。

 俺って天だったのか。


「素晴らしいですね!

 ぜひ採用いたしましょう!」


「いや、ジェンガちょっと待て

 四人しかいないから五天将はおかしいだろう?」


 ボードから冷静なツッコミが入った。

 確かに言われてみればその通り。

 今後増えるかもしれないけど、今は四人しかいない。

 しかし反論するジェンガ。


「いや、五天将でいい」


 なんで?


「リク様、五人目とはあの方のことでしょう?

 我が軍最強のあの方」


 ニヤリとした笑み。

 それで俺も理解した。アルカのことか。


 アルカの力については秘密してるから、この場ではジェンガしか知らない。

 そして謎の五人目にして最強の力を持つ将軍ってのは確かにカッコいい。

 ジェンガ、その案のったよ!


「もちろんだとも」


 俺もニヤリと笑いかえす。

 分かり合う二人に対し、わけがわからないという顔をしているボード。

 カルサは呆れてる。


 こうして我が軍の五天将が決定した。

 アルカにはあとで謝ろう。



 あとの話は細かそうだったので省略してもらった。

 さあ次は政治の話、ボードの話だ。


「お館様、私の方からは大臣についてのご相談になります」


 ああ、ボードは宰相だからその下に大臣がつくわけね。


「左大臣にはパータリを

 右大臣にはマンカラを任命したいと考えております」


 パータリはいい。

 あの腹黒金持ち領主だ。

 マンカラって誰だ?


「マンカラはズダイスと同じく偽王の元で幽閉されてた男です

 しかしこちらはその実務能力の高さゆえ衰弱できない程度に痛められ、そのまま仕事をさせられ続けておりました」

 

 衰弱させられて仕事させられるってどんな地獄だよ…。

 ブラックすぎだろ。


「偽王側が最後まで補給を確保できていたのはやつの手腕によるものです

 この能力をお館様のために生かさない手はないと考え、推薦いたしました」


 できる人は大歓迎ですとも。

 俺の代わりに頑張ってくれ。


「ボードの推薦なら俺が拒否するはずもないだろう

 楽しみにしているぞ」


「ありがとうございます

 必ずやお館様にご満足いただけるかと存じます」


 ボードの力強い返事が頼もしい。



 しかし将軍も大臣もバランス取られてるな。

 反乱軍ばかりじゃなくて、領主や体制側についてた面々からも任命されている。

 体制側ってか国を裏切れず愚直に幽閉されてた人たちだが、やっぱそういう真面目な人も評価しないとね。


 偽王のような王の下でも裏切らなかった面々だ。

 きっと俺の下でも頑張ってくれるだろう。




 能力も大事だけど、ちゃんとバランス取ってるのもさすがだなーやっぱこの二人に任せておけば安心だなーと大満足な俺。

 そして気づいた。


「ミサゴとハイロはどうなってんの?」



 お茶を飲んで寛いでいるミサゴとそのお茶を淹れているハイロ。

 突然話題をふられても驚きもせず、悠々とお茶を飲み続けてる。

 お茶を飲み終えたのか、カップを机に置く。

 そしておもむろに腕を組み、胸を強調しながら一言。


「うむ!知らぬ!」


 俺もこんな自信満々になりたい。

少しずつスマホで書いてましたが、長くなりそうなので今まで書いた部分のみアップいたします。

続きは週末更新予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ