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33話 王様になりました

 宮殿の大広場で平伏する文武百官。


 彼らが頭を下げるのは玉座に座る人物。

 この国の至高の存在へ上り詰めた男。

 彼らに栄光の時代を約束した英雄王。


 俺だ。



 さて、本当に王様になってしまった。

 王様なんてやったことないし、何をすればいいのかさっぱりだ。


 いや、反乱軍の指導者もやったことはなかったよ。

 でもあのころは皆とこんなにはっきり立場が分かれてなかったんだ。

 だからジェンガやボードともう少しフランクに話せて、簡単に丸投げできた。


 でも今は違う。

 皆が俺の開く言葉を待っている。

 ジェンガやボードも平伏する人々の一人になっちゃって声をかけられない。


 ミサゴとハイロは皆よりは少し近い位置にいるが、キラキラした目で見つめてるだけだ。

 なお、ミサゴは俺を、ハイロはミサゴを見つめている。



 だから俺は目配せをする。

 俺の妹ということで無理やり横に連れてきたカルサに。


「カルサ、どうすればいいのか教えてくれ!」

「あたしだってこんなのわからないわよ、兄様

 とりあえずいつもみたいに丸投げしたら?」

「それができないから困ってるの!

 すべて任せるって言うきっかけが欲しいんだよ!」

「じゃあ、ジェンガとボードをとりあえず役職つけちゃったら?

 それなら丸投げできるでしょ」

「カルサはやっぱり賢いな!素晴らしい!

 で、この国の役職ってどんなのあるの?」

「だからあたしも国のことはよく知らないって…

 とりあえず何かの本で元帥や宰相がすごい偉いってのは読んだことあるわよ

 確か将軍や大臣より偉いはず」

「ありがとう!カルサをそれにしてあげてもいいよ!」

「遠慮するわ、兄様」


 以上を声は最小限にし、ジェスチャーと口パクだけで成し遂げた。

 我ら兄妹の絆は日々強固になるね。



 さて、ではカルサのアドバイスに基づいて最初に指示を下そうか。


「ジェンガ」


「はっ!」


 実にいい返事だ。

 今後も君を頼りにさせてもらうよ。


「元帥に任命する

 軍のことは全てお前に任せよう

 偽王によって混乱した軍の立て直し、期待しているぞ」


 あれ?なんかジェンガの反応が鈍いな。

 ポカンと口を開けてこちらを見てる。

 あ、動き出した。


「謹んで拝命いたします!!

 この命にかえましても、ご期待にお答えいたします!!」


 実に力強い返事だ。

 あーびっくりした。

 なんか少しざわつき始めてるが、さっさと終わらせたい。

 無視してさくさくいこう。


「ボード」


「はっ」


 こちらもいい返事だねえ。

 俺の声掛けと同時にざわめきも収まってるし、みんなよく教育されてて素晴らしいよ。


「宰相に任命する

 ジェンガと協力し物事を進めよ

 俺にいちいち判断を仰ぐ必要はない。存分に励め」


 おや?ボードも反応が鈍いぞ。

 まさかって顔して俺を見てる。


「大命、謹んでお受けいたします」


 反応があって一安心だ。

 しかしジェンガと比べると反応が鈍いな。

 逆にざわめきはさっきより大きくなっている。


「陛下、恐れながら申し上げます」


 陛下って誰だ。

 あ、俺だった。


「そんな畏まるな。今までどおりお館様でよい

 ジェンガも今までどおり呼ぶように」


 むしろ呼び名変えられると違和感あって困る。


「格別のご配慮を賜り、恐悦至極に存じます

 ではお館様、愚かな私めにご教示願います

 前王朝で数えるほどしか任命されなかった元帥と宰相、これらを復活させたその理由を

 この二つが両立するなど、史上初かと存じ上げます」


 マジで!?

 横目でカルサの方を見ると「あらーそうだったのー」って顔をしてる。

 きっとカルサが読んだ本にはそこまで書いてなかったんだろうな…。

 元帥と宰相が特別で、同じ時代に存在しないなんて詳細なこと知ってるのは宮中の一部だったのだろう。

 そしてその一部が今目の前に勢揃いしているわけだ。


 さて、気を取り直していこう。

 口に出してしまった以上は仕方ない。このまま正面突破だ。


「ではボード、新たな王が誕生したことは今までにあったのか?」


 質問に質問で返す。

 我ながらひどいが、王様だから許される。


「…!いえ、ございません」


「前例を学ぶことは悪いことではない

 しかし、前例に縛られては本末転倒である

 これからの時代、何が一番良いかを己の頭で考えて成していかねばならない

 無論、己の目と耳で確かめることも忘れるな

 俺からは、以上だ」


「ははっ!」


 回答したようで全く質問に答えてないが、納得してくれたらしい。

 さて一安心だ。



 ではいつも通り〆の一言と行こうか。


「ジェンガ元帥、ボード宰相、二人に全て任せる

 私の期待に応えてくれると、信じているぞ」


 再び全員が一斉に平伏する。

 今日も決まった。さあ帰ろう。




 その夜案内された俺の部屋はとても広かった。

 ここは後宮と言って宮殿の奥の方の場所だ。

 だからとても静かだし、王様用だからベッドもふかふか。素晴らしい。

 しかしボードが「今宵のトギはいかがしましょう?」とか言ってたが、あれは何だったんだろう?


 さて寝ようと思ったら、扉がノックされた。

 何も考えず「どーぞー」と言うと扉が開かれ、そこから現れたのは予想外のものだった。


 半裸の美女、しかも数名が現れたのである。


 後宮に響く絹を引き裂くような叫び声。

 俺の叫び声だ。



 寝間着姿でダッシュで逃亡する。

 だって半裸の美女が迫ってくるんだよ?

 画面の中じゃない裸なんて初めて見た俺に、どうしろと言うんだ!?


 闇雲に宮殿内を逃げる俺。

 お、あそこに見知った顔がいるぞ!


「お館様、いかがされましたか!?」


「ボード!あれ!何!?」


 指差すのは俺を追ってきた美女達。

 明るいところで見ると体つきもすごい。やばい。


「お館様のヨトギのために遣わされた者たちでございますが…

 何かご不満がございましたでしょうか?」


 ヨトギ?今宵のトギ?…夜伽か!


 その事実と同時に、俺はもう一つ別のことに気づいた。

 俺に向けられる、絶対零度の視線を。



「へー、夜伽なんてしてもらうんだー」


 それは我が妹、カルサの視線。

 思春期の少女、そういう男女関係について潔癖な年頃の少女の視線。


 ああ、カルサの視線が出会った時より冷たく感じられるよ!


 色々と悔やまれるが、今は何より妹の信頼を取り返すことが全てに優先される。


「ボード、いらぬ世話だったな」


 服装を整え、できるだけ威厳をもって言う。


「俺は淫蕩な偽王とは違う

 今後、このようなものは不要である

 もちろんいきなり解散しては、行き場がなくて困る者が大勢いよう

 彼女達も偽王の被害者だ

 ちゃんと面倒を見てやってくれ」


「承知いたしました、お館様

 しかし後宮がなくてはお世継ぎが…」


 世継ぎ?子供!?

 俺、そんなもの求められちゃってるの!?


「おほん!

 世継ぎなら、俺の妻となる女性との間にできよう

 そのような心配は無用である」


「おお、お館様!

 もしやすでに心に決めた方が?」


 そこ突っ込んでくるの!?


「それはまだ、時ではない

 楽しみに待ってるがいい!」


 この言葉でこの話は終了。

 ボードは女性達を引き取り、この場に残ったのは俺とカルサだけとなる。


「素晴らしいわ兄様!

 一瞬でも夜伽を受けるなんて誤解してごめんなさいね

 まあ、男女がね、そういうことするのはわかってるのよ?

 でもやっばり、ちゃんと愛し合う二人が結婚してからでないとね」


 オッケー!

 俺セーフ!


「あんな複数で、しかも快楽だけを求めるなんてホント最っ低

 やっぱり偽王ってゴミ以下のクズ野郎よ」


 虫けらを見つめる目をしながら吐き捨てる。

 これが俺に向けられたらと思うと恐ろしい。


「だけどね、男の人はみんなそういうの好きっていうからちょっと心配してたの

 ジェンガも好きとか言ってたし…

 まあ、あいつはそういうやつだから仕方ないのかな」


 ジェンガ!

 あいついつの間に免罪符手に入れてたんだ!羨ましい!


「でも兄様は違った!」


 呪詛を振りまく俺と、それを消し飛ばすかのように明るいカルサの笑顔。


「兄様は王様になったからってそんなことしなくて、あたし本当に嬉しいな

 さすがあたしの兄様」


 あー、これ絶対後宮復活は無理ですねー


 俺は早々にこっそり後宮復活大作戦を断念した。

 俺はお兄ちゃんだから仕方ない。

 いつか出会うであろう、運命の女性までお預けだ。


「兄様、今日は隣の部屋で寝ましょうか

 宮殿って部屋も多いしどこも豪華ですごいの

 一緒にどの部屋がいいか選びに行きましょ」


 珍しくご機嫌なカルサ。

 俺の手を引っ張ってどんどん進んでいく。



 後宮はちょっと惜しいが、やはりこの関係には代え難い。

 手を握り返し、一緒に宮殿探検へ向かう。




 俺は王様になった。

 でも、俺は俺なんだ。

三章の始まりです。

不定期更新となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。


週末あたりは更新できる予定です。予定では…。

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