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幕間 トトカ視点(28話)

"トロイの木馬"

その作戦名を聞いた時、私は全く内容が想像できなかった。

しかしそれがリク様発案だと聞き、全てを理解した。


それは私ごときが想像できるようなものではないと。

そして、この作戦は絶対に成功すると。


リク様の作戦に参加できるという栄誉。

私は再び、神話の登場人物になれるのだ。




その夜、私は父と共に作戦準備をしていた。

作戦に参加するのは皆選び抜かれた歴戦の猛者ばかり。

しかし私とて決して父の代理で選ばれたわけではない。

己の力を、リク様への忠誠心を見せるのはこのときを置いてないと奮い立っていた。


都の地図、偽王軍の構成、予想される陣容や兵数、それらを頭に叩き込む。

膨大な量を確実に、かつ短時間で。

たいへんな作業だが、リク様の足手まといにならぬよう絶対に成し遂げねばならない。


偉大なるリク様。

あの方の背中について行くために。

あの方の背中を支えられる自分になるために。



リク様の背中を連想してたはずなのに、頭の中に映るのはリク様のお顔。

私の頭はどうしてしまったのだろう。

理由に気づいた私の全身は硬直した。


なんとういうことか!

リク様が今、目の前にいらっしゃる!


極度の緊張で体が動かせない。

リク様のお姿を凝視したままなど不敬にすぎる。


しかもリク様は私の方に向かってらっしゃる。

私の後ろの方に用事があるのだろう。

早く道をお譲りしなければいけないのに、体が動かない。

ああ、誰か私を助けてくれ!



私の目の前に大きな壁、慣れ親しんだ父の背中が現れた。

幼い頃からいつも私を守ってくれた背中。

また守られてしまった。


私は母に似て話すのが苦手だ。

言葉で伝えることができないためよく誤解されてきた。

そしてその度に、父が守ってくれてきた。


しかし、今の私はリク様直々の最終作戦"トロイの木馬"の一員だ。

守られているだけではいけない。


父上、私はもう大丈夫です。


「何を言うか。父にはわかっておるぞ」


確かに父上のご懸念通りでしょう

お恥ずかしい。リク様を前にしてあのように動きが止まってしまいました。

しかし、今の私は父上の娘である前に一人の兵士なのです

これが戦場であればどうでしょう

戦場で父に助けられる兵士がおりましょうか?


「むむ。確かにお前の言う通り…」


父上、今までありがとうございました

陰に陽に支えていただき、感謝の言葉もございません

しかし私は父上の娘として、次期タント家当主として、戦場に立ちます

誇りあるタントの戦士として、この作戦の礎となることを誓います!


「なんと!父はまことに誇らしいぞ!」


父上の薫陶の賜物です

ミサゴ様の元に駆けつけたあの日から、すでに覚悟できております

この命にかけてでも、必ずや任務を遂行して参ります!


「トトカ!リク様に何かあったときは、お前の命にかけてでもお守り申し上げるのだぞ!」


もちろんです!


そう答えた私を父が優しく抱きしめてくれた。

私も父を抱きしめ返す。

これが今生の別れとなるかもしれない。

しかし決して悔いはない。

この国のために

そう、リク様のために

私は命をかける覚悟はできている。



そんな私たちにリク様は声をかけてくださった。

そしてその内容に、私は驚愕する。


「大丈夫だよ、二人とも

 これは犠牲を出さないための作戦。みんな無事に戻ってくるよ

 そして次に会う時は、この国の新しい時代が始まってる」


ああ、リク様!

あなた様は、我ら一兵士の命にまで気をかけてくださるのですね!


そして私は己の視野の狭さが恥ずかしい

あなたはすでに見据えておられる

この戦いの次を

あなたが導かれる新しい時代を!



リク様はそのまま他の選抜者達にも声をかけられ、部屋を出ていかれた。

その大きな背中、私が追いかける背中、それが見えなくなるまで、私はずっと見つめ続けていた。


「ワシらは幸せものだ。あのような偉大な方に仕えることができるのだから」


父の言葉に、私は大きくうなずいた。

トトカの目から見ると、リクは歩いているだけで光り輝いて見えます。


長くなったので前後に分割しました。

トトカの熱い想いで想定より長くなってしまいました。

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