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幕間 兵士トトカの視点(23~24話)

ブックマークが昨夜から10も増えました!

そして評価を上げていただいた方もいらっしゃいました!

ありがとうございます!


とても嬉しく、何とか更新したいと思いトトカに登場してもらいました。

楽しんでいただければ何よりです。

ギーマン砦攻略戦、この栄光ある作戦に私も参加できることになった。


幼い頃より聞かされて育ったギーマン砦の不敗神話。

ついこの間までの私ならギーマン砦が落ちる日が来るなど夢にも思わなかっただろう。


だが、今は違う。

今日こそがギーマン砦最後の日だという確信がある。

この砦が不敗だったのは幸運だっただけ。

そう、あの方に攻められなかったという幸運。


我らが偉大なる指導者

百戦百勝の知将、リク様


ギーマン砦よ、お前が我らに立ち塞がるのではない

貴様の神話に、リク様が立ち塞がるのだ




私は志願し、砦攻略の最前線部隊に配属された。

指揮を取られるのはナーラン・シスコ様。

武の名門シスコ家の当代当主だ。


私の父が先王の親衛隊だったころの親衛隊長であり、その縁あって私も幼い頃から可愛がっていただいた。

王家に忠誠厚く、時には諫言も厭わない。

臣下の鑑のような方である。


しかしそこが偽王の癇に障ったのだろう。

何の咎もなくシスコ地方の中心である北半分は召し上がられてしまった。

自らの不徳の致すところと自重されるナーラン様の寂しげな横顔が、今でも目に焼き付いている。


そんなナーラン様が最前線で指揮をとると聞き、私は喜び勇んで志願した。

この部隊はナーラン様直属とかつての親衛隊、そして各部隊の志願者から選抜された精鋭部隊である。

最も危険な位置ではあるが、自分たちが神話を終わらせると、歴史の一部になると皆の戦意は高い。

もちろん、私もだ。



カルサ様の魔法で生み出された濃霧の中、我々は一糸乱れず進軍し、戦列を整える。

…濃霧の魔法など聞いたこともなかった。

なんと偉大な魔法使いなのか。

さすがリク様の妹御であらせられる。


作戦開始予定時刻になった。

いったいどんな策がなのだろうと思っていた私は、実に浅はかであった。

リク様の策が私ごときの予想の範疇にあるはずがなかった。

いや、リク様のはもはや策ではない。

あれは魔法だ。

濃霧の魔法も霞むほどの魔法だ。


霧のために直に見ることはできなかった。

しかしこの地響きのような音と砂けむりでわかる。

今この時城壁が崩壊しているのを。

リク様が城壁を破壊したことを。


私は今、神話の中にいる。




霧が晴れた。

我々の前には崩れさった城壁と露わになった砦内部が広がる。

偽王軍にとって霧の中から突如我らが現れたようなものだろう。

見よ!これがリク様の魔法だ!!


混乱する偽王軍に突撃する我ら。

もちろん抵抗は激烈なものであった。

やつらもここが落ちれば後がないことはわかっている。


必死の抵抗で我々にもかなりの被害があった。

しかしナーラン様の優れた陣頭指揮もあり、見事砦は制圧された。

自らの命を顧みず前へ前へと進み続けるその背中、なんと頼もしかったことか!



砦陥落後、若い私は伝令として本陣に帰った。

朗報に沸く本陣の裏の裏。

たまたま私が迷い込んだそんな場所。

そこで目にしたのは、身体中が汚れて疲れ切り、ミサゴ様の背中でぐったりとされているリク様であった。


そのお姿を見た私は自分の勘違いに恥ずかしくなった。

リク様は魔法使いなどではない。

安全な後方で策を巡らせてるだけの方ではない。


自ら手を汚す。しかしそれを周りには見せない。

そんな方なのだ。


戦場で見たナーラン様の背中以上に、私の目には今のリク様の姿が輝いて映った。

この方こそ、真の英雄だと。


ミサゴ様が去り、お一人になられたリク様。

私の見間違いだろうか、まるで飲み物が欲しかったのに言い逃して意気消沈されているかのように見える。

おこがましいかもしれない、余計なお世話かもしれない、そう思いつつ私は自分の水筒をリク様に差し出した。


「君はいつもいい時に来てくれるね!」


なんということか!

リク様は私のことを覚えておいでだったのだ!


わけもわからず水をお渡しした浅慮な私。

そんな私への配慮だろう、まるで喉が渇ききってるかのごとく水を飲まれた。


「いやー、うまかった!ありがとう!」


私のような一兵卒のことまで記憶され、さらにお礼まで述べてくださる。

私はリク様の偉大さを改めて身にしみて感じることができた幸運に、感謝した。


神話を体現されるかのようなリク様

まるで子供のように水を飲むリク様

この素晴らしい方にどこまでも付いて行こう

そしてもっといろんなお姿が見せていただこう


私はさらに強く、リク様への忠誠を心に誓った。




砦陥落から数日後、我々の部隊はリク様に謁見する機会を得られた。

ナーラン様が我らを代表し、リク様の前へと進みでる。

そのご活躍ぶりをジェンガ様とボード様が語られ、私は我が事のように嬉しくなった。

しかしリク様の一言が、そんな些細な喜びを吹き飛ばす


「シスコ領主、ナーラン・シスコだったね

 今回はお疲れ様。今後共よろしくね」


"シスコ領主"とお呼びになったのだ。


リク様のお言葉は当然、ただの言葉ではない。

リク様のお口から発せられた単語は全て事実となる。

今この瞬間、ナーラン様は南シスコ領主ではなくなった。

北シスコも合わせたシスコ地方全体の領主になられたのだ。


皆の反応をさらりと流し、リク様は続ける。


「ギーマン砦攻略での働き、大儀であった

 今後のさらなる活躍、期待している」


ギーマン砦攻略の功を評価すること。

その褒美が北シスコの返却であること。

それらを婉曲に、しかしはっきりと述べられた。


論功行賞でリク様が口を出されることなど、私が聞く限り初めてである。

それだけ大きな働きだったのだと全身が誇りに震えた。


リク様が褒美と表現されないのは、これが当然のことだからだ。

ただ元の領地に戻されただけ。

北シスコの召し上げをなかったことにされただけ。

この国をあるべき姿へ戻す、その過程の一つなのだ。




偽王によって多くの人々が犠牲になった。

偽王によって多くのものが破壊された。


この反乱は偽王から国を奪い返す戦いだ。

当たり前だと思っていたかつての幸せを取り戻す戦いだ。


リク様はそれを実現されるお方。

民のために立ち上がり、民のために戦うお方。


これこそ、王者の風格。

私は今、王の御前にいるのだ。

ジェンガやボードもたいがいですが、若いトトカはリクへの眼差しがさらに崇高なものになっています。

本当は第二章で本編に登場する予定でしたが、まだ出せておりません。

そのうち登場するはず、です…。

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