24話 噂の男
ブックマーク100到達いたしました!
評価もいただいており、ありがとうございます!
今日は更新無理だと思ったのですが、朝方に100いってるのを発見して一気に完成させました。
楽しんでいただければ嬉しいです。
今までのあらすじ
難攻不落のギーマン砦を落としました
ギーマン砦陥落
この驚愕の情報は瞬く間に国中に伝わった。
そしてそれは国内にとどまらず、国外へまで広がることになる。
ある男の存在と共に。
伝説の治癒魔法使いルゥルゥの意思を継ぐ男
"伝説の後継者"
電光石火のごとく反乱を成功に導いた男
"百戦百勝の知将"
ギーマン砦不敗神話の幕を閉じた男
"神々の黄昏"
これらは全てたった一人の男を示す。
その名はリク。
民のために立ち上がり、民のために戦う男。
今、新たな伝説が始まる。
などという噂が広まってるとボードから聞かされた俺は椅子から転げ落ちそうになった。
何だよ神々の黄昏って。
ゲームのサブタイじゃないか。
二つ名ですらねーよ。
呆然とする俺を置き去りに、ボードは嬉しそうに話を続ける。
「お館様の偉大さはすでに国境を超え、各国に響き渡っております
すでに幾つかの国は我々に使者を送ってきました
自国の民にも人気のあるお館様を無碍にはできないでしょう
全てお館様のお考え通りに物事は進んでおります!」
よほど嬉しいのだろう。
沈着冷静なボードにしては珍しく興奮してる。
対する俺は冷え冷えだ。
もう今すぐ村に帰って引きこもりたい。
意気揚々と部屋を出るボードを見送り、俺はある人物の部屋へと向かう。
我が参謀、頼りになる妹、カルサの元に。
「兄様、もう諦めるしかないんじゃない?」
いきなり突き放された!
「あたしのとこにも届いてるわよ、その噂
娯楽少ないからみんな噂話が大好きなのよねー
しかも決して正しくはないけど間違ってもいないから、否定もできないし」
「いや、全然間違ってるだろ!」
俺はおもいきり否定する。
だって俺、何にもしてないもん。
しかしカルサは盛大なため息をつき、俺を諭すように言ってきた。
「じゃあ兄様、一つずつ確かめましょう
まず一つ目、兄様はおばあちゃんの意思を継いでる?継いでない?」
「…継いでます」
「そうよね。兄様はおばあちゃんの意思を継いでくれてる
おばあちゃんの刀を腰に刺し、おばあちゃんが命がけで示した道を進んでくれてるのよ
ありがとう、兄様」
カルサが珍しく優しく微笑んだ。
俺にというよりおばあちゃんの意思に微笑んでる感じ。
「じゃあ二つ目ね
反乱を起こしてから今までに負けたことある?」
「いやないよ?
でもそれはジェンガやボードや他のみんなの頑張りであって、俺は全く何もしてないよ?
なのに俺が百戦百勝なんて、おかしいでしょ」
「兄様、その二人に全権を任せてるのは誰?」
「俺、になるのか?」
「疑いようもなく兄様よ
兄様が二人を信頼し、完全に任せたからこの結果なの
もし兄様が少しでも口を出したらどうなったと思う?」
「百戦百敗かなあ」
「二人がいるからそこまではいかなくても、まあ今みたいに勝ちっ放しとはいかないでしょうね
それに兄様に裏から手を回して、二人へ反抗しようとする勢力も出てくるわよ
そしたら二人とも今みたいに伸び伸びとは働けない
兄様はもちろん、兄様の威を借る連中にも配慮しないといけなくなる」
俺の威を借りる?
そんな無駄なもの借りて何になるんだ。
「兄様、全然理解できないって顔ね…
そもそも今でも色々話来てるんでしょ?
"私の意見を聞いてください"的なやつ」
「あー、めっちゃ来てるな
でも全部ジェンガとボードにまわしてるぞ」
陳情?だか請願?というのか、そういうのは毎日山ほどくる。
そして各地の領主もご挨拶とか言って俺に会い、色々言ってくる。
その度に俺は言うのだ。
「ジェンガとボードにすべて任せてある
彼らに聞いてくれたまえ」
と。それで万事完了だ。
「そう、それが大事なの
兄様が全幅の信頼を寄せる忠臣
あの二人の指示は兄様の指示
だから二人は自分の才を十二分に使うことができるわけ」
「俺の丸投げこそが俺の手柄ってこと?」
「結果的にそうなの
兄様がしゃしゃり出ず、サボってるからこそ逆にそれが今の結果につながってるわけ」
なんてことだ。
サボればサボるほど俺の評価が上がるとは。
全く嬉しくないぞ。
「だけど、それじゃやっぱり二人のおかげじゃん」
それでも認められない俺に、カルサは優しく語りかけてきた。
「兄様のその態度、とても素晴らしいと思うの
他人の手柄をとったりせず、ちゃんと評価してあげる姿勢
兄様の数少ない利点の一つだと思う」
褒められてる?
それとも貶されてる?
「でもね、だからこそ諦めて
もはや兄様の評価は兄様だけの行動では決まらないの
私たち全員の行動が兄様の評価につながるの
そろそろ自分がそういう立場になったって気づいてね?」
子供をあやすように優しく語りかけてくる。
なんてことだ。
今の俺は駄々をこねる子供みたいだというのか。
絶望する俺にカルサはさらなる現実を突きつける。
「最後の三つ目
これは今のと同じで、私たち反乱軍がギーマン砦を落とした以上、それは兄様の手柄なの」
不敗神話を崩したのも俺の手柄と言う。
俺はミサゴのお尻を追いかけてただけなのに!
しかし、カルサは最後に希望を託してくれた。
「どうしても嫌なら、ミサゴにお願いしてみたら?
この手柄はどうかミサゴ一人のものにしてくれって
もしかしたら聞いてくれるかもしれないわよ」
その案に飛びつく俺。
カルサに礼を言い、急いで部屋を出る。
嬉しそうに本の続きを読み出すカルサの姿には気づかずに。
「うむ!断る!」
輝くような笑顔で拒否られた。
ここはミサゴの部屋。
何故か当たり前のようにハイロもいる。
というか部屋に入ったと同時に
「私はあなたを信じておりましたよ、リク殿!!」
とハグされたというか絞め殺されかけた。
どうして姉に傷一つついてないと見分けられるのか疑問が残るが、この爽やかな笑顔は全てを覆い隠す。
残念ハイスペックイケメンを何とか引き剥がし、早速俺はミサゴにお願いした。
「どうかギーマン砦陥落の手柄をミサゴ一人のものとして欲しい」と。
その結果がさっきの回答だ。
俺の頼みの綱が一刀両断である。
なんということだ。
「しかし、さすがリクであるな
手柄を譲ってくれと言う輩は星の数ほどおろうが、手柄を進んで譲ろうとするなど聞いたことがない
少なくとも妾はそなたぐらいしか知らぬぞ
あっぱれである!」
ミサゴが嬉しそうにしているが、俺はそんなことで褒められても嬉しくない。
「いや、だって、実際ギーマン砦を落としたのはミサゴじゃん?」
「何を言う。妾は城壁を崩壊させただけではないか」
ミサゴはやれやれとばかりに俺を諭してくる。
今日は諭されてばっかだな。
「まず、砦を制圧させるための兵を濃霧で隠したのは誰か?
そなたの妹のカルサである
その濃霧の中一糸乱れつ行軍し、砦を制圧したのは誰か?
そなたの部下の兵卒達である
ではそれら全体を指揮したのは誰か?
そなたの腹心、ジェンガとボードである
最後に、それら全部を率いたのは誰か?」
ミサゴがどや!とばかりに宣言する。
「そなたである!
そなたこそギーマン砦攻略の将!
古き神話を終わらせ、新たな神話を紡ぐ男、リク!その人である!!」
…神々の黄昏ってこいつの発案じゃないだろうな。
「そういうわけで、馬鹿なことを申さずおとなしく自らの手柄を誇るがよいぞ
妾もそなたのような男の下で戦えることが誇らしい
うむ!存分に自らを称えるが良い!」
そんなふうによくわからないがたくさん褒められた俺はミサゴの部屋を辞し、自室のベッドに倒れ込んだ。
何もしてないのに疲れた。
そして何もしてないのに褒められる。
俺はいったい、どこに向かっているんだろう。
明くる日、今の駐屯地の謁見所に一人の男が現れた。
ボードとジェンガに連れられて来たのは一人の美丈夫、名をナーラン・シスコ。
ギーマン砦攻略戦の最前線で戦ってくれた領主らしく、二人が色々と解説してくれた。
そういえば以前読んだ資料に書いてあったと思い出し、声をかけてみた。
「シスコ領主、ナーラン・シスコだったね
今回はお疲れ様。今後共よろしくね」
俺の何気ない一言に周囲がざわつく。
いったいどうしたと思ったら、感激した表情のジェンガが進み出てきた。
「リク様、それはつまり、北シスコをナーランへとお返していただけるということでしょうか!?」
ここで俺はようやく北シスコは召し上げられており、彼は現在南シスコのみの領主だったということを思い出す。
しかし今さら間違っただけとも言い出しづらい。
ここは流れのままでいこう。
「ギーマン砦攻略での働き、大儀であった
今後のさらなる活躍、期待している」
こういうとき、なんで口調も偉そうになってしまうんだろう。
緊張のせいだろうか。
俺の言葉を聞いたナーランは涙を流しながら平伏する。
「父祖より受け継ぎし土地をお返しいただき、誠にありがとうございます
この御恩、わが命をかけてお返しさせていただきます!」
こうして俺はまた一つの新しい誤解を生み出し、新たな忠臣を手に入れたのであった。
ギーマン砦陥落から数日経ったぐらいの出来事でした。
少し日常を挟んでから都の話に移る予定です。
ただ今週は更新できない日があるかもしれませんので、すみません…。




