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23話 ミサゴの翼

2000PV/日達成しました!

皆さま、ありがとうございます!


今までのあらすじ

リクの案はボツだけど、ギーマン砦攻略作戦ができました

 ギーマン砦攻略作戦は発動された。


 まずミサゴが単独で砦に侵入し、”鍵”を使う。

 それによって城門が崩壊すると同時に、濃霧の魔法で隠されていた反乱軍本体が一気に砦に攻め込むのだ。

 明日にはギーマン砦の不敗神話は終わりを告げているだろう。

 我々の手によって。



「なのに、なんで俺まで潜入してるんだ…」


 ここは砦への侵入路。

 公然の秘密となっている通路ではなく、王位継承者だけに知らされる通路だ。

 重要なのは機密性であり、快適性なんて全く考慮されていない通路。

 狭いし暗いし長いし、もう本当に嫌になる。


「リクよ、何か言ったか?」


 俺の前を進むミサゴから声がかかる。

「何も言ってないよー」と返事をしておいた。

 四つん這いで進む中、唯一の安らぎは君が前にいることだけだよ。

 君のお尻が俺を導いてくれる。



 俺が潜入部隊にいる理由、それは作戦会議にさかのぼる。

 ミサゴ単独で行くことに強硬に反対するハイロをなんとか説き伏せ、他の作戦の話が始まったころ。

 ふと思いついたようにミサゴが問いかけてきた。


「リク、そなたは今回の作戦の間どこにおるのだ?」


「もちろん、特等席さ」


 この調子こいた回答がまずかった。

 正直に一番綺麗で安全な場所と言っておけばよかったのだ。


「そう言うと思っておったぞ!!」


 破顔したミサゴが嬉しそうに俺の背中を叩いてくる。

 さらにぐいっと肩を寄せて耳元でささやいてきた。


「妾がそなたに、特等席で見せてやろう

 ギーマン砦の不敗神話が崩れ落ちる、その瞬間を」


 決定的な認識の違いに気づいたときには遅かった。

 俺の特等席発言は、俺とカルサ以外はみんなミサゴと同じように受け取っていたのだ。


 ジェンガが「リク様が行かれるなら安心ですね!」とか寝言言ってる。

 ボードは「お館様の御意のままに」って止めてくれない。

 アルカが「気をつけて行ってきてくださいね」とニコニコ手をふってる。

 ハイロは「姉上に傷一つつけないようお願いいたします」と血走った目で迫ってくる。

 カルサが「兄様、調子に乗るから…。怪我しないでね?」とため息ついてる。


 こうして俺は安全な本陣から最前線である砦の中に来てしまったのだ。



 さてお尻を追いかける旅は終わり、ようやく広い場所に出てきた。

 広いと言っても畳一畳程度の小部屋だ。

 床には今入ってきた穴があるため実質はもっと狭い。


 ミサゴとの距離が近い

 密着とはいかないが体が触れ合う

 息遣いも聴こえてくる

 なんかいい匂いする

 このままでは色々と俺がまずい。


「えーっと、ここは砦のどこらへんなんだ?」


「ここはまさに砦の城壁の中心地点である!

 地図上の中心は別であるが、城壁を支える力はここに集中しているのだ」


「あー、重心ってやつね」


 俺の言葉にミサゴと「ほう」と反応する。


「さすがは都の学士をも凌駕すると言われる知恵者よな

 そう、ここは城壁の重心である」


 重心を習うのは中学生だっけか?

 こういう義務教育の知識で褒められるのはやっぱなんか照れくさい。


「妾はその言葉をここで父上に教わったのだ

 思えば、あれが二人きりで話をした最期であった」


 父親のことを思い出しているのか、ミサゴが遠い目をしている。

 しかしそれはほんの瞬きするほどの間だけ。

 すぐにいつもの表情に戻った。


「城壁の重心を崩せば城壁は崩れる

 しかし力でやるには少々骨が折れるし、何より中途半端に崩れては意味がない」


 ミサゴが胸元から鍵を取り出す。


「そこでこの鍵の出番というわけだ」




 壁には小さな小さな鍵穴がある。

 ここにその鍵を使えば、この城壁は崩壊する。


「予定時間までもう少しであるな」


 いったいどうやっているのか、ミサゴは時間に正確である。

 この世界でもこいつならおいしいカップラーメンが食べられそうだ。

 カップラーメンないけどね。



「リク、改めて礼を言うぞ」


 ミサゴが神妙な面持ちで俺に話しかけてくる。


「叔父上の不始末は、元々妾が王として至らなかった故に起きたこと

 そして妾たち王族が不甲斐ないゆえ、多くの民を苦しめることとなってしまった」


 過去の自分を責めるかのように、強く拳を握りしめる。

 しかしそんな表情を一変させ、今度は晴れやかな笑顔で俺に笑いかけてきた。


「そんな妾に、そなたは汚名返上をする機会をこうしてつくってくれた

 王位継承者が受け継いできたこの鍵で、王家の不始末を片付けさせてくれる

 そのことを、妾は本当に感謝しておるのだ」


 ちょっとドキッとしてしまった。

 普段が普段だから、素直にお礼を言われるとなんだかすごい響く。


 そんなドキドキしてる俺に迫るミサゴ。

 心臓がバクバク鳴ってる。


「初めて会ったときも、そなたは妾の間違いを教えてくれたな

 父上以来だ、ちゃんと妾を叱ってくれたのは」


 いや、別に叱ってはいなかったと思う


「妾は王位継承者として生まれ、幼くして王に即位した

 そんな妾が行うことは、”間違ってはいない”とされてしまったのだ

 父上以外誰も、ハイロですら妾の間違いを正してはくれなかった」


 怒られてばっかも嫌だが、それはそれでつらそうだ


「しかしそなたと出会い、大きくそれが変わった!

 ハイロはときに妾に試練を与えてくれる

 カルサなど、妾を面罵してくるのだぞ?

 あんなこと生まれて初めてだ!」


 あれは元々の性格です


「そしてそなたは今回のように、心細い妾を支えようとしてくれる

 本当に、心から礼を言うぞ」


 え?心細かったの?


「ときに導き、ときに支え、そなたは妾をここまで連れてきてくれた

 この恩義、一生かけてでも返すと誓おう」


 俺の手を握りしめ、俺の顔を真正面から見つめてくる。

 めっちゃ近い。


 ミサゴは美人だ。

 そんなおっぱいの大きい美人が俺に迫ってきている。

 しかも密室で二人きり。

 男女が密室で二人きり。

 ハイロの「傷一つつけないよう」ってもしかしてそうゆうこと?

 俺にそんな甲斐性あるわけないだろう!



 テンパる俺。

 そんな俺を救ったのはミサゴ自身であった。


「時間である!」


 一瞬でいつもの調子に戻ったミサゴ。

 鍵を入れて一気に回し、王家の秘中の秘、奥の手を発動させる。


 ものすごい揺れと振動が発生し、崩壊が始まった。


「うむ!大成功であるな!」


 ミサゴは達成感に満ちた顔をしている。

 しかし問題はここからだ。

 いつ周りが崩れて押しつぶされるかわからない。


「は、早く脱出しないと!」


 焦る俺。

 そんな俺にミサゴはいつもどおりの元気いっぱいの表情で答える。


「無論である!

 とやーーー!!!」


 鍵と逆側の壁を思いっきり蹴り飛ばす。

 すると薄壁であったらしく、ガラガラと壁が崩れ落ちた。


「ここを走り抜ければ一気に砦の外にたどり着く!」


 壁の向こうへとミサゴが走り出す。


「妾に続け!」



 一目散に出口へ向かって走り抜ける。

 しかし運動しなれてない俺はどんどん引き離される。

 体力的にもやばい。

 外まで持ちそうにない。


 そんな俺を、ミサゴが逆走して迎えに来てくれた。

 手でも引っ張ってくれるのかと思ったらいきなり背負われた

 俺、おんぶされてる!?


「そなたは羽根のように軽いな!」


 男一人を背負って風のように駆けるミサゴ。


「初めて会った時はジェンガに背負われておったな!

 やつほど背中は広くないが、許すが良い!」


 むしろ快適です。




 砦近くの高台から見下ろす光景。

 そこには崩れ落ちた城壁と、反乱軍の旗が掲げられた砦、そして都の方へと逃げていく偽王軍の姿が見える。

 すでに勝敗は決した。

 一部追撃を行っているようだが、本格的な侵攻はまた準備を整えてからだろう。


 ようやく都だ。

 ついに追いつめたぞ、偽王。

 俺達の敵、俺達の仇。


 お前を倒すため、俺達はここまで来たのだ。






「そろそろ自分で歩けるか?リクよ」


 俺はまだミサゴの背中にいる。

 俺たちが出ると同時に崩れ落ちた脱出を見たら腰が抜けてしまったのだ。

 そして腰が良くなる気配は全くない。

 俺は正直に無理だと伝えた。


「ならば本陣までこのまま妾がおぶってやろう!」


 元気よく走り出すミサゴ。

 振り落とされないようにしがみつく俺。


「リクよ!そなたは羽根ではなく翼だ!」


 ミサゴは輝くような笑顔で俺に笑いかけてくる。


「そなたと一緒なら、妾は空の彼方まで駆け抜けてみせよう!!」

ミサゴはリクと出会ってから笑顔が増えました。

生き生きしています。


今週は色々立て込んでおり、毎日更新はできないかもしれません。

何とかできる範囲で更新を行いますので、よろしくお願いいたします。

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