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01話 拾われました

読んでいただきありがとうございます!


今までのあらすじ

異世界に転移して美少女に助けられた

パチパチ…パチパチ…


今度気づいたのは暖かい暖炉のある部屋だった。

やわらかいベッドに寝かせられ、冷えきった体が芯から暖まるようだ。


目を開け、上半身を起き上がらせると慌てたような声が聞こえる。


「おばあちゃん、目を覚まされたわ!」


この声はあのときの美少女だ。美少女は声も美少女だからすぐわかる。

部屋に何人か入ってきた。美少女と合わせ、三人が俺のベッドの横に座った。



一人目はあの美少女だ。

金なのは髪だけでなく目もだった。見てると吸い込まれそうに感じる不思議な瞳。

心配そうだけど嬉しそうな顔で俺を見てくれており、その眼差しだけで元気が出てくる。


二人目はその美少女にそっくりの女の子。

彼女とは対象的にこちらは髪も目も銀色。雪のように光り輝く幻想的な色。

虫を見るように俺を見つめ、その眼差しだけで死にたくなる。


三人目はおばあちゃん。

白髪に灰色の瞳。思慮深く、深い経験と知識が感じられる。

こちらを見定めるような、むしろ全て見透かされているような、強い眼差しが向けられている。



三者三様の眼差しを向けられ、いたたまれない気持ちになっていたら金髪の美少女が自己紹介を始めてくれた。


「はじめまして。旅人さん?かな?私はアルカ。ジャイアントピーンに襲われていたのは覚えている?

 私がたまたま通りかかって、運良く倒すことができたの

 でもあなたはそのまま気を失って…。あれから三日間も目を覚まさなくて、本当に心配したの」


運良く倒せたってのが嘘なのはわかった。あれは楽勝と言う。

でも三日間も目を覚まさなかったのか…。

あの寒さと疲労で死にかけてたんだろうな。命の恩人です。


「もちろん覚えています。あなたがいなければきっと自分は死んでいたでしょう。

 あなたは命の恩人です。本当にありがとうございます」


心からの本心だ。

命の恩人に対して心からのお礼を述べた。

彼女は顔を真赤にしてうつむいて「と、とんでもないです」とささやくような声で答えてくれた。

照れてるのだろうか。かわいい


「お姉ちゃん。こんなうさんくさいやつ助けなくてよかったのに。

 むしろジャイアントピーンに食われてたほうが自然の摂理的に良かったんじゃないの?」


「カルサ!なんてこと言うの!」


さっきから俺を虫を見るような目で見ている少女が口を開いた。名前はカルサというらしい。

しかし虫どころか死ねばいいと思われていたとは。

俺は害虫か。姉にまとわる悪い虫か。


「すみません、旅人さん。この子は私の妹でカルサといいます。

 本当はいい子なんですけど、口が悪くて…」


「お姉ちゃん、こんなやつにそんな丁寧な口調やめなよ。

 お姉ちゃんが助けなければ死んでたようなやつなんだよ?

 むしろ「アルカ様!これから私は奴隷としてあなたに尽くします!」って言わせないと」


「カルサ!!」


「ふたりとも少し黙りな。そして部屋からでていきな。

 このぼっちゃんとあたし、ふたりだけで話をするよ」


姉妹の口論が始まるかと思ったが、おばあちゃんの一言で収まり、二人共おとなしく別の部屋に去っていった。

恐るべし迫力。


「私が話をするよ。あたしゃこの村の村長(むらおさ)。そしてあの二人は私の孫娘。姉のアルカと妹のカルサだ。

 あんたを助けたのは姉のアルカ。看病しようと言ったのもこの子。感謝ならアルカにしな。

 あたしゃあの子にお願いされたから看病しただけだよ」


やはりアルカという娘こそが俺の命の恩人らしい。

ありがたやありがたや


「そんで、あんたは何者だい?覚えてることを洗いざらい話しな

 まず名前は?」


「安藤陸といいます。名字が安藤で、名前が陸です」


「アンド=リクかい?名字があるとはお大尽だねえ。これからはリクと呼ぶよ

 リクよ、それであんたはどこの生まれだい?」


「日本という国で生まれました」


その後、俺は質問に全て正直に答えた。

こことは違う世界で生まれたこと、その世界のこと。

とうてい信じてもらえないと思ったが、俺は洗いざらい話した。


おばあちゃん、村長は黙って俺の話を聞いていた。

相槌もうたず、ただただ黙って聞き続け、俺の話が終わると少し口元に笑みがうかんだ。


「異世界とは途方もない話だねえ。

 でもあんたの言うことは筋が通っていて、妄想ならたいしたもんだ。

 そしてあたしゃ"あんたと同じような境遇のやつ”の話を聞いたことがある。

 信じてやろうじゃないか。あんたの話」


なんてこった!信じてもらえた!

しかも俺と同じような境遇のやつがいる!?


「そんな期待するような目でみなさんな。

 残念だけどその境遇のやつはとうの昔に死んじまってるよ」


やはりそんなうまい話はないらしい。


「とりあえずうちに住むといい。あたしのことは村長って呼びな。

 ああ、あの娘らにはあんたのことは記憶喪失で通しておくよ。

 あの娘らには理解できないだろうし、可愛い孫に余計な混乱をさせたくないからね


 口は災いの元ってのはわかるかい?

 余計なことは言わないほうがあんたのためさ。よく覚えておきな」



「おばあちゃん、お話終わった?」


おそるおそる、しかし輝くような笑顔で扉の隙間から美少女、アルカが話しかけてくる。

手にはあたたかそうなシチューがある。


「今ちょうど終わったとこだよ

 なあ、リク?」


ドスの利いた声と眼差しで確認をとる村長に、俺は何度も頷いた。

そして「よかったー。シチューが冷えちゃうかと思った」とニコニコと部屋に入ってくるアルカ。



怖い老婆と入れ替わりに美少女と二人きり。

あまつさえシチューをふーふーされ「はい、あーん」なんてされている。


異世界に飛ばされて死にかけて命を助けられ、ど迫力の老婆に脅されたあとに美少女にあーんしてもらう。

脳みそがついていかないが、とりあえず今はこの幸せを堪能しよう。


「あーん!」

ようやく主人公に家ができました。

次話は現状の把握で、次の次あたりから少し話が動き出す予定です。

そこまで読んでいただけるよう、次もがんばります。よろしくお願いいたします。

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