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最強論議(物語完結後)

「トルストイ様といえば、”最強の魔王、トルストイ”の二つ名が有名ですね。最強に至る道にはやはり様々なご苦労があったのでしょうか?」


 トルストイは笑顔を浮かべている。

 だが心のなかでは深い溜め息をついていた。

 またこの話かと、嘆息しているのだ。


 元々の二つ名は”魔人貴人、トルストイ”であった。

 それがいつの間にか”最強の魔王、トルストイ”に変質していった。


 これはある意味統一王という地位に着いた弊害。

 力も含めてありとあらゆる点で優れていると誤解され、勘違いされ、このような二つ名がついてしまったのだ。


 これまで幾度となく取材の中で否定してきたが、ただの謙遜として片付けられていた。

 今回取材に来たこの若い魔族の女性も、同じように勘違いし、否定しても流してしまうのだろう。


 真実を伝えるのはなんと難しいことなのだろう

 今更ながら思い知らされる。


 嘆いていても仕方ない。

 今回も淡々と事実を述べていこう。


「私が最強などというのはおこがましいことです。魔王最強といえばやはりルドルフこそが最もふさわしいでしょう」


 魔王最強、ルドルフ

 戦ったのは二度。

 二度とも瞬殺され、戦いにすらならなかった。


 彼を差し置いて最強の魔王を名乗るなど、ありえない。


「そうなんですね!ですがその魔王ルドルフもトルストイ様とアズラット様に返り討ちにあったんですよね?」


 とんでもない誤解だ。

 二人まとめて瞬殺されたのに、なぜ返り討ちにしたことになっているのか。

 

 ルドルフを倒したのはジェンガであること。

 神であるリク・ルゥルゥ陛下を除けば、彼こそが史上最強であったことを丁寧に説明する。


 しかし目の前の女性はへこたれない。


「そうはおっしゃいますが、過去のことは置いておいて、現在の魔王の中では間違いなくトルストイ様が最強でしょう?」


 これには言葉がつまる。

 今残っている魔王は三柱だけ。

 アイスキュロス、アズラット、それに自分。


 アイスキュロスは作戦指揮は得意でも戦闘はそうでもない。

 戦えば間違いなく自分が勝つだろう。


 アズラットは魔獣だけあって戦闘は得意だ。

 だが彼の戦いは力任せなもの。

 剣と魔法を使いこなす自分と戦えば、おそらく五回戦えば三回はこちらが勝つ。


 何より、アズラット自身がこう言っている。

「別ニ、オ前ガ最強デイイダロ。イチイチ否定スルノモ、面倒ダ」


 面倒だからと、真実の探求を放棄したのである。

 だから仕方なく、トルストイは貼り付けた笑顔で答える。


「まあ、現存する魔王では、そうかもしれませんね…」


 この答えにインタビュアーの女性魔族の顔は輝いた。

 おそらく今のセリフが今回の取材記事のメインで使われるだろう。

 ”最強の魔王、トルストイ”の二つ名がまた広まることに、トルストイは深く深くため息を付いた。


 ただ一つだけ抵抗する。


「ただ、今生きている存在で最強となると、あの方となるでしょうね…」


 一人の戦士の名をあげながら。



 ---



「最強?まあ、私じゃないことは確かだね」


 解放王、ヒイラギ・イヅルはあっけらかんと答えた。

 現在は大陸の南半分、人類の代表も務めている。


「私はしぶといことには定評があるけど、いざ戦闘となると私より強い人はいくらでもいるよ。馬路倉ちゃんにかかれば、私なんて一瞬でしょ?」

「それはそうかもしれませんが、何度も戦っているうちに心が折れるかと…」


 話を振られたのは魔法王、ランシェル・マジク

 元の世界での本名は馬路倉貝那

 彼女をこの名で呼ぶのは、もはやこの世界でヒイラギだけだ。


 彼女たちは二人同時に取材を受けていた。

 馬路倉はヒイラギのサポート役を務めており、だいたい二人は一緒にいる。


 当初ヒイラギは馬路倉こそが人類の代表にふさわしいと言っていた。

 だが馬路倉自身がそれを強く拒んだ。

「私は、どうしても魔法使いに肩入れしてしまいますから」と。


 そうしてヒイラギが今の地位に着き、馬路倉はそのサポートに専念していた。

 二人が支え合い、人類は繁栄を謳歌している。

 それは魔族にも多くの恩恵をもたらし、この取材をしている魔族女性のように人間界で活躍している魔族も増えてきたのだ。


「では、魔法王陛下はどなたが最強だと?」


 キラキラ目を輝かせながら聞いてくる。

 馬路倉は最強などに興味はないが、こんな興味津々に聞かれては適当に答えることもできない。


 真剣に考え、一つの答えを口にする。

 その名を聞いて、ヒイラギも賛同した。


「あー、あー、あー…。たしかにね!」


 巨大魔法で一国をも消し去り、肉体強化魔法で魔獣とも渡り合う。

 そんな馬路倉が挙げた戦士こそ、たしかに最強にふさわしいと。



 ---



「で、私のところに来たと?」

「はい!」


 目をより一層キラキラさせた魔族女性。

 今彼女の目の前にいるのは、誰あろう先の三人が最強と認めた女


「私が、最強ねえ…?」


 満更でもなさそうにそうつぶやく女性の名は、エキドナ

 旧ヒュドラ連邦大将軍にして、現在は大陸中央警備隊総司令

 エキドナ・カーンだ。


 別に単純な強さなどに興味はない。

 だが、他の強者達、しかもそれが世界を代表する権力者達ともなれば

 彼らに認められるのは、悪い気はしない。


 それに何より


「エキドナが最強だって!すごいすごい!さすが私のエキドナだ!」


 隣で喜ぶ少女

 エキドナが心から愛する存在

 大陸中央大総督、クレス・ヒュドラ


 彼女が喜んでくれるなら、それがどんなことであろうとエキドナは喜ぶのだ。


「とんでもない。私が最強だなんて、皆の買いかぶりですよ」


 内心の喜びを押し隠し、冷静を装って謙遜する。

 そんなエキドナに対し、クレスは期待通りの反応をしてくれた。


「そんなことないよ。エキドナが最強なんだよ。私はずっと前からそう思ってたけど、統一王陛下に解放王陛下、それに魔法王陛下まで認めてくれたんだよ?すごいすごい!」


 クレスが褒めてくれる。

 エキドナの謙遜を否定して褒めそやしてくれる。


 そのときのエキドナはまさに、天にも昇る心地であった。



 ---



「あ、トルストイ」

「これはお久しぶりですね。ランシェル、それにヒイラギも」

「久しぶりだね。そういえばこの前の取材記事、読んだよ。”最強の魔王、トルストイ”。君もたいへんだねえ?」

「まあ、その点は諦めました…。それよりもやはりあなた達もエキドナを最強に挙げていましたね」

「まあねえ。純粋な戦闘力となると話は別だけどねえ」

「ああ。実際の戦いとなると、最後に生き残るはエキドナだろう」

「ええ。私もそう思います。なにせ」


「「「エキドナは、クレス・ヒュドラ以外には容赦がないから」」」


 もはや顔見知りとなった彼ら

 付き合った年月は人の一生をはるかに超える


 それでも、エキドナだけは容赦せずに襲ってくるだろう。

 彼女の心にあるのは、愛する姫様だけなのだから。



書きたかった最強論議、ようやく書くことができました。

本編での強さ設定で明確に決めてるのは下記になります。

アルカ>(神と人の壁)>ジェンガ≧ルドルフ>>>他>>>一般人>>>リク

他に含まれるトルストイ、エキドナ、馬路蔵、アズラットはほぼ互角ですね。


やはり書きなれたメンバーだと筆が進むと実感しました。

新作も早く同じようになれるようになったらいいなと思います。


下民貴族 ~妹が皇帝になったので、魔法が使えない下民の俺まで貴族になっちゃいました~

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結済での検索で試し読みをしてみたところ…やめられない止まらない! この数日で一気に読みきってしまいましたよ… いやー面白かったー! 冗長になることなく切り替わる展開にずっとワクワクしっぱ…
[良い点] 確かに容赦がない奴が一番強いですよね… こうやってお気に入りの完結作品が更新されるのはすごくうれしいです。
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