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125話 魔王vs人類最強

 二人の人類最強

 元ヒュドラ連邦大将軍エキドナ・カーン

 解放王柊伊鉉


 二人の魔王

 狂魔獣アズラット

 魔人貴人トルストイ


 四人の戦いは苛烈を極めた。


 柊は魔法も剣も使いこなす。

 だが彼女の真骨頂はその豪剣。

 彼女の一撃は岩を貫き大地を切り裂く。

 全身を聖宝具に包んだ彼女は、重戦車のごとく敵を磨り潰す。


 それに相対するはトルストイ。

 柊の攻撃を全てかわし尽くし、一瞬のすきを突いて繰り出される多種多様な攻撃魔法。

 それに気を取られれば最期、彼の剣が牙を剥く。

 魔法と剣の恐るべきコンビネーション。


 発するトルストイも見事だが、全てを避けながらさらに攻め手を緩めない柊は驚異的という他ない。


 もちろん、エキドナとアズラットの戦いも負けず劣らず厳しく激しい。


 魔獣であるアズラットの肉体は鋼よりも硬い。

 エキドナの大剣はそれすら切り裂く。

 が、当たらない。


 筋肉の塊にしか見えないアズラットだが、決して鈍重などという言葉は当てはまらない。

 その俊敏さはあらゆる野生生物をも凌駕する。

 そのスピードから生み出される攻撃はどれも必殺。


 瞬間移動ができるエキドナだからこそかわせているが、他の者だったらと思うとゾッとする。


 誰もが強い。

 だが決定打に欠いている。


 そんな状況が続いていた。


「トルストイ、ずいぶん強くなったんじゃないかい?」

「あなたとその仲間たちに敗北してから千年。しかもその間にランシェルにも膝をつかされましたからね。私とて、精進しますよ」

「向上心があって何よりって言いたいけど、こんな目にあうなら成長しないでいて欲しかったよ!」

「それは、最高の褒め言葉ですね!」


「そろそろ諦めて、私の剣のサビになるがいい!!」

「断ル。貴様コソ、ソロソロ諦ルガイイ」

「断る!姫様は、私が守る!!」

「…ソノ減ラズ口、二度ト叩ケヌヨウニシテヤル!!」


 会話が交わされる。

 軽口のように思えるが、決してそんなことはない。


 会話してる間も一切攻撃の手は緩められず、むしろ威力は増している感すらある。


 魔獣達もドルバルも手出しはできない。

 手を出せば自分達など瞬く間にやられると、理解してしまったのだ。


 戦いの趨勢はどちらに傾くのか

 どのように決着がつくのか


 誰もが固唾を飲んで見守る中、それは起こった。


 飛び散る血飛沫

 それはまるで、戦いの終わりの合図のようだった

 決着がついたのだと、誰もが理解できるようにと


 ただその数は、四つ

 四者同時に倒れ伏す

 自らの血の海へと、倒れ込む


 ならば勝利者は誰なのか?

 それは


「遊びは、終いだ」


 ルドルフ・ジェンガ


 最強の魔王が、そこにいた。



 ---



「本気ではないとは言え、余の一撃を受けてなお命をながらえるとはな。さすが、古き魔王といったところか?」


 それは、彼にとっては褒め言葉だったのかもしれない。

 そう捉えることができるのは、おそらく世界で本人だけだろうが。


「ルドルフ、貴様…!」

「私達も始末せよと、言われていたのですか、ね…?」


 魔王二人は確かにまだ生きている。

 だがなんとか即死は避けたといったところ。

 どう見ても、戦闘継続は不可能。

 このまま放置すれば、死は免れない。


「余に下された命は、人間の軍の排除だ。ただ他の魔王がいなくなれば、大魔王は余との再戦に応じてくれると言うのでな。だからまあ、ついでだ」


 まったく悪びれることもなく、淡々と


「ついで、ですか…」


 トルストイが苦笑する。

 自分が、ただのついでで殺されるという事実に。

 魔王という絶対的存在が、花を摘むかごとく易易と排除される現実に。


 もはや、笑うしかないとでも言うように。


「しかし、まさか余の太刀を受けて生き延びられる人間がいようとはな」


 視線の先にいるのは、エキドナ。

 瞬間移動ができる彼女ですら、ルドルフの一撃を避けきることはできなかった。


「ひめ、さま、おにげ、ください…!!」


 痛覚を感じた瞬間に移動して一命を取り留めたのだろう。

 深い傷が、流れ出る血が、痛々しい。

 彼女もこれで戦闘不能だろう。

 これ以上戦えるとは、とても思えない。


 だが、それよりも

 いちばん大事なのは他にある

 目を背けたくなるような現実が


「仕留められたのが、解放王だけとはな」


 伝説の武具、聖宝具

 それらがまるで紙切れであるかのように

 その魔王の前では何の意味もなさず


 柊は、聖宝具ごと両断されていた。



 ---



「柊!!」


 叫ぶ。

 喉が切れるほどに声を出す。


 だが全ては手遅れ。

 本来最も警戒すべき男、魔王最強・剣皇ルドルフ

 そこから注意を外してしまった、その報い。


 ジェンガはどうなったのだろう?

 考えたくもない。

 ルドルフがここにいる、それが答えじゃないか。


 全て失敗した。

 どこで判断を間違えたのだろうか?


 俺が判断したということ自体が間違いだというのなら、最初から最後まで俺は間違いっぱなしじゃないか。


 絶望


 その言葉が、心を、体を、満たしていく


 だが


「いやあ、君、強いねえ」


 かつて人類を救った英雄は、

 こんなところでは終わらなかった。


「…息があるのか?」


 さすがに予想外だったらしく、ルドルフの声に驚きの色が混ざる。


「なんとかね。この程度で私は死なない。死ねないんだ」


「すごいだろ?」などと笑いながら

 彼女は、生きていた。


「これぐらいじゃないと、たかが人間が千年も魔族と戦えたりはしないよ」

「なるほどな。それが、貴様が神から与えられた異能というわけか?」


 柊の口元に笑みが浮かぶ。

 それは決して苦笑いなどではなく、誇らしげに彼女は笑う。


「ご明察。これは私が大魔王を倒してことで与えられた、奇跡の力。私が愛した人が生きた世界を守り、私の子どもたちが生きる世界の行く末を見届けるために得た、神の恩寵さ」



 ---



 柊が両断された体をつなぎ合わせて立ち上がったと同時

 今度は別の方向で両断される。


「休む暇もありはしないねえ?」


 体が真っ二つになっているにも関わらず

 その口調はまるで何事もなかったかのようだ。


 だが


「不死ではあるが、完全なものではないようだな」


 たったの二撃。

 それだけで、ルドルフは何かを理解していた。


「…わかっちゃうもんかい?」


 柊の口調は先程までの余裕綽々のものから変わっていた。

 それは焦り、そして呆れ


「たった二回切っただけで、どうしてわかっちゃうのかねえ?」

「斬れば、大概のことはわかる。余にとっては、特別なことではない」

「なるほどねえ…」


 理外の範疇を超え、もはや呆れ返るしかないかのようだ


「千年、人間にしては十二分に生きたろう。余が、楽にしてやる」


 ルドルフが構える。

 さっき、やつは言った。

「本気ではなかった」と。


 ならば今度は本気だろう。

 本気の一撃で、柊の命を刈り取る気なのだ。


 今度こそ終わり


 そう思った時、さらなるどんでん返しが起きる。


 俺が最も信頼する男

 俺を最も信頼してくれる男

 俺を最初に見出してくれた、最初の部下


「じじい。孫をおいてくたあ、ひどいんじゃねえかい?」


 ジェンガが、戻ってきた!!



ブクマと評価、ありがとうございます!

まだの方、面白いと感じられたらぜひよろしくお願いいたします!

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