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122話 ガリバー襲来

 ルゥルゥ軍の前に立ちふさがる、巨体


「あれが、ガリバー…」


 司令部は決して前線にあるわけではない。

 だからといって後方でもないが、最前線からはそれなりの距離がある。


 にもかかわらず、その化け物をはっきりと見ることができた。

 これほどの距離があるのに、たやすく視認できる大きさ。

 文字通り、天を衝くその身体。


 大陸最大の生き物

 大陸最大の化け物


 それが魔王、ガリバー。


 ガリバーが一歩踏み出す。

 それだけで多くの兵士が、俺の部下たちが、死んでいく。


 ガリバーが再び足を上げる。

 今からでは、ここからでは何もできない。


 だがその瞬間、俺の横を熱線がかすめていく。


 ガリバーの頭に直撃。

 巨体はバランスを崩し、大地へと倒れる。

 そして起きる地響き。

 地面が揺れ、一瞬身体が浮き上がった。


「なんとか、一瞬だけ、時間稼ぎを…」

「馬路倉!?」


 そこにはベッドで横になっているはずの馬路倉の姿があった。

 転移直後の一撃で魔力を使い果たし、すでに魔法は使えないはずなのに。

 あんな一撃を放つなんて!


「少し寝て、回復した分、だけですから…」

「魔法王陛下…」


 カルサが肩を貸してなんとか立ち上がる。


「カルサ、馬路倉は?」

「生命維持の必要な魔力は使ってない。これは本当。でも、それ以外は全部…」

「わかった。馬路倉を連れて行ってくれ。次は警護の人員から魔法国出身者は外すように。ミサゴ、近衛から頼む」

「うむ。任されたぞ」


 ガリバー来襲を聞いて、馬路倉は無理やり飛び出してきたのだろう。

 苦笑いしている。

 だが、その笑みに力はない。


「馬路倉」

「なんですか、先輩」

「ありがとう」


 また力ない微笑みを浮かべながら、馬路倉は去っていく。


「馬路倉のつくってくれた貴重な時間、無駄にはしてないだろうな?」

「はっ。まもなくかと」

「ならば良し」


 ガリバーが起き上がろうとしている。

 起き上がれば、再び動き出すだろう。

 動くだけで、虐殺が始まる。


 だからどうか、間に合ってくれ。



 ---



「魔王ガリバーは、いまだ成長を続けております。ゆえにランシェル様、ヒイラギ様、お二人が出会った頃よりも()()()やつは大きくなってございます」


 さらに、をずいぶん強調しながらその男は話をする。


 男の名は、ギド

 大陸をまたにかける大商人

 俺がこうして成り上がる、一つのきっかけとなった男


 折に触れて姿を表すこの商人、今回俺が買う商品は形はない

 今欲しいのは、情報

 魔界の情報を得るために、この男はここにいる。


「私が会ったときも十分おおきかったんですけどね…」


 馬路倉がため息をつく。


「魔法も打撃も効きづらい性質らしく、まともに戦うのは諦めて大穴を掘って埋めちゃいましたよ。あのまま土の中で過ごしてくれればよかったのに…」


 落とし穴で魔王を倒したのか…。


「ガリバーめを利用したがる者は多いからな。貴様が当時の大魔王めを倒した直後に救い出されておったぞ。だいたい、顔だけ出てたからうるさいことこの上なかったしな」

「…頭まで埋めちゃえばよかったのかな」


 ワーズワースが事情を教えてくれる。

 彼もそれなりに知ってるが、ギドほど詳細は知らない。

 ゆえにギドがいる。


「当時ガリバーを助けた者は魔王を名乗りましたが、すぐにガリバーに踏み潰されてしまいました。かの者を使いこなすのは、なかなか難しいようですね」

「そもそもいるのかい?使いこなせるやつなんて」


 柊が問いかける。


「私がルゥちゃんたちと会ったときでも、すでに山よりおおきかったよ?それより大きくなってるなんて、考えるだけで頭痛がするんだけど」

「柊さんは戦ったんですか?」

「冗談。戦う意味がないから、避けて通ったよ。私が会ったときの大きさじゃ、穴も無理だったしね」

「たしかに、山より大きい穴はさすがに…」


 柊と馬路倉が難しい顔になってしまった。

 しかしギドはいつものように笑顔。


「そんな化け物を唯一使いこなしているのが、現大魔王でございます」

「どうやったのだ?」

「ワーズワース、そう焦らないで。もちろんちゃんとお教えしますとも」


 ワーズワースとギド

 この二人も顔なじみなのだろうか?


 俺がそんなことを考える中、話は続く。


「調伏した方法は実に簡単で、力でねじ伏せました」

「あのガリバーを?」

「ええ。大魔王が殴ればガリバーの顔は腫れ上がり、蹴りつければ背筋が折れ曲がる。最後は足蹴にされ、わんわんと泣きわめいておりましたよ」


「そのとき湖ができました」などと淡々と口にする。

 涙で湖ができるような化け物を力でねじ伏せるとは。

 ガリバーは規格外だが、大魔王はそれを上回るありえなさだ。

 そんなのと戦うのかと、改めて戦慄する。


「我々に、そのような手は現実的ではありますまい」

「ええ、もちろんですとも」


 ガリバー対策、魔界進行作戦の総責任者たるボード

 彼が気にするのはガリバーを倒すための現実的な手だ。

 それ以外は、ただの補足情報にすぎない。


「ガリバー、かの者は先程ランシェル様がおっしゃったように魔法も打撃も効きづらいのが特徴です。大魔王のような例外はございますが」

「つまり、消去法でいけると?」


 ボードの問にギドは笑みを深くする。


「いかにも。やつの弱点とはいわずとも唯一効果的なのは、斬撃、にございます」



 ---



 ガリバーが足を踏み降ろす瞬間

 赤い飛沫が、大地を染めた


 大地を震わす咆哮

 泣き叫び、再び倒れ込む


「よくも好き勝手やってくれたじゃねえか、デカブツ!!」


 そこに立つのは、一人の男


「今度は、俺が相手をしてやる!!」


 人類最強、ジェンガ・ジェンガ


 愛刀斬鉄剣を手に、魔王の前に立ちふさがる。



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