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13話 招かざる客

初の1000PV/日を達成しました!

ブックマークも一気に増えまして、ありがとうございます!

第三者視点は今後も挑戦していきますね。


今までのあらすじ

一般人だけど反乱軍の指導者やってます

 今日は珍しく村長と二人きりだ。


 アルカとカルサは村長の代行として近隣の村々の会合へ。

 ミサゴとハイロは任務のために各地へ。


 今日は村の学校がお休みのため家でごろごろしてるつもりだったのだが、村長と二人きりとなると話は変わってくる。

 どこで時間をつぶすか、というかまず朝食はどうしようと思いながら居間に行くとすでに温かいご飯が準備されていた。


「自分で料理をするなんて久々だよ

 味は保証しないが、それでもよければ食べるといいさ」


 村長は俺の分までつくってくれていた。

 いただきますと食べてみると、普通にうまい。

 聞けばアルカとカルサに料理を教えたのは村長だったとか。


「あの二人の両親は、カルサが生まれてすぐに流行病で逝っちまってね

 私がずっと親代わりだったのさ」


 そういえば村長の過去ってほとんどが不明だな。

 アルカやカルサも全然知らないらしい。

 王族やら異世界人と旅してたとか、普通に面白そうだから気になってはいるのだが。


「人のことなんて気にしてる場合かい?

 あんた、もう後戻りできないとこまで来ちまってるんだよ」


「後戻りできないって、怖いこと言うなよ…」


「かっかっか!今更何言ってるんだい

 あたしがせっかく忠告してやったのに、今じゃあんた勇者どころか英雄様じゃないか

 ”偽王に反逆する英雄””偉大なる反乱軍の指導者”なんて国中の有名人さ

 むしろどうやったら後戻りなんてできるってんだい?」


「マジかよ…。

 秘密の指導者どころか、そんな状態になってたのか…」


 絶望である。

 むしろ捕まって処刑される運命しか見えてこない。

 銃殺とか電気椅子はないから、やっぱ無難に吊るされる感じ?嫌すぎる


「まだバレちゃいないさ

 ただ元々あんたはこのへんじゃ有名人だからね

 感づいてるやつは多くいるだろうさ

 …まあ、幸か不幸か、今は王への憎悪が高まってる

 口を割るやつなんていやしないよ

 むしろ、割ろうとしたら周りに殺されちまうさ」


 そう、憎悪は高まってる。

 鈍感なよそ者の俺でもわかるくらいに。



 もう季節は秋。実りの秋。収穫の秋だ。

 にもかかわらず今日も食卓は寂しい。

 昨年の備蓄の残りを切り崩しているのが現状だ。

 なぜか?全て税として収奪されてしまったからだ。


 江戸時代の七公三民ですらまだやさしい。

 収穫高の実に九割が奪われてしまったのだ。

 残るのはもはや来年植えるための種籾程度。

 しかし種籾を食べれば来年は完全に何も残らない。

 どう考えてもまともなやり方ではない。


 アルカ達が会合に行ってるのもそれが理由だ。

 この尋常ならざる自体に村々として統一見解を出し、代官に直訴するためだ。


 ミサゴとハイロが二人共出かけているのもそうだ。

 むしろ今にも爆発しかけない各地の憎悪を抑えに行っている。



「あいつも、昔はあんなやつじゃなかったのにねぇ」


「今の王のことも、知ってんの?」


「ああ、仲間の弟だからね

 昔は「兄上、兄上!」って兄についてまわる可愛いやつだったよ

 それが今じゃその実の兄を殺し、うちらの種籾まで奪おうとするクズに成り下がっちまった

 時の流れってのは残酷さね」


「あたしも老いぼれちまったしね」なんて苦笑いしている。


「あたしゃ今のカルサのちょっと上ぐらいの歳に村を飛び出してね

 ”自分は治癒魔法を使える特別人間だ、だからこんな村にいるべきじゃない”

 なんて馬鹿なことを考えてたもんさ

 まあ、確かに特別な冒険をしたよ

 大陸中を旅して、もう行ってないとこはないってくらい色々まわったもんさ

 仲間だってたいしたもんだよ?

 王族に異世界人、それどころか天使や魔族までいたさ!

 そしてついには魔王を倒し、天上の神様に会ってきたんだ!

 かーっかっかっかっかっかっか!!」


 いきなり話を盛ってきた。

 これが本当なら、勇者様御一行じゃないか。


「まあ、そんなわけでもうとっくに死んでると思われた村長一族の娘が腹をでかくして帰ってきたもんだから皆びっくりさ

 先代が死んだ直後だったからそのまま村長に就任し、跡継ぎも生まれて村は万々歳

 …親の死に目に会えず、孫も見せてやれなかったのは、申し訳なかったけどね」


 後悔しているのだろう。

 親孝行な人だ。

 孫を見せるどころか永遠にできる予定もないのに平気な顔してる俺とは大違いである。


 しかしアルカとカルサのお母さんか、父親は誰なんだろう。

 …もしかしてアルカやカルサも王族だったりして。


「娘はね、そりゃもうかわいかったさ

 そしてあの子はこの村が大好きだった

 村で生まれて村で恋して結婚し、村で子供を産んだんだ。それも二人も

 我が娘ながらたいしたもんだよ

 あんなつらいこと、あたしの倍もやり遂げたんだからね」


 顔が誇らしい。自慢の娘だったんだろう。

 しかし一転、その顔は暗くなる。


「神様ってのは残酷だよ

 村を飛び出して好き勝手やったあたしがこんな長生きしてんのに、村で慎ましく生きてたあの子をさっさと連れて行っちまうんだからね

 あの子が逝ったときほど、悲しかったことはないさ…」


 村長のこんな表情を見るのは初めてだ。

 自分の親ももしかして寂しがってるのかな。そんなことをふと思った。


「はっ、話が辛気臭くなっちまったね

 まあ、あたしが言いたいのは、あんたはもう後戻りできないとこまで来ているってことさ

 そこんとこ覚悟して、いつか()ってやつがきたら、振り向かず最後まで走りぬくんだよ

 それが今のあんたにできる、あたしからの最後の忠告さ」


「…最後って、そんな縁起でもないこと言わんでくれよ」


「何言ってんだい。眼の前にいるのは明日をもしれない老婆だよ?

 こちとら毎日、今日が人生最後って覚悟しながら生きてるのさ

 だから忠告はありがたーく受け止めておくんだね」


「…はーいはい」


「はいは短く。そして一回で」


「はい!」


「ちゃんとできるじゃないか。偉い子だ」


 村長はニヤニヤ笑ってる。

 やはりこの人はこうでないと。

 さっきみたいな顔より、ずっといい。



 そのまま村長とだらだら話をし、昼食も一緒にとってから仕事に出かけようとしたところで来客があった。

 来客というか、ノックもなしに扉がいきなり開かれた。


「先生、たいへんです!!」


 何事かと思ったが、現れたのはジェンガである。

 驚いて損した。


 いや、驚くべきは次の言葉であった。


()()()()()()()()()()!!」


 王、つまり先王の弟で、ミサゴとハイロの父親の仇。

 俺たちが偽王と呼ぶ、倒すべき敵。

 それが、この村に来たのだ。

村長の昔語りでした。

この人の人生はそれだけで一つの作品になりそうです。


次回、偽王が登場します。

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