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81話 ダラスの戦い・後

 実にあっけないものだった。


 ゲンシン率いるタキダ騎士団。

 彼らは瞬く間に連邦竜騎兵を蹴散らし、その返す刀で混乱する敵軍本体まで引き裂いてしまった。


 そこからはまさにあっという間。

 目の前で自軍最強の部隊が敗北し、しかも陣形まで崩された連邦軍。

 身も心も砕かれた彼らはすのまま一気に潰走してしまった。


 本陣でドキドキしながら待ってた俺はその光景を見ることは出来なかったが、何人もの伝令が次から次へと教えてくれた。

 何度も聞きすぎてそらで内容を言えるようになってしまった。



 漆黒の竜騎兵に真正面から衝突するタキダ騎士団の赤備え

 それはまるで黒き盾を貫く一筋の赤き矢。

 この瞬間、彼らは大陸最強となった。


 そしてそれだけには留まらない。

 草原を埋め尽くす連邦軍。

 赤き矢の次なる目標は、この人の海。


 十重二十重に組み敷かれた強固な防衛陣。

 先程まで何人たりとも通さなかった無敵な構え。

 しかし、赤き矢の前には何も意味をなさなかった。


 縦横無尽に引き裂かれる人の海。

 まるで無人の野を行くか如く突き進む赤き騎士団。

 そして誰もが確信する。

 この戦いの終わりを。

 その勝者を。



 なお、この後は俺への賛美が続くので割愛する。


 英雄王リク・ルゥルゥ

 どこまで話が大きくなるんだろう…。



 ---



 戦争というものは勝敗が決まってからが大事らしい。

 掃討戦で敵の数を減らし、次の戦いへの参加者や意欲を減らすのだ。


 特に今回のように戦闘中は一進一退の攻防だった場合、死傷者の数は互角。

 掃討戦で差をつけておかなければ、せっかくの勝利が台無しになってしまう。


 残酷だが、これが戦争というものか

 そんなことを思っていると、司令部が慌ただしくなってきた。


 さっきまで順調だった掃討戦だが、逆に返り討ちにあう部隊が出てきたらしい。

 最初は敵の殿軍がよほど優秀なのかと思われたが、どうも違う。


 目撃情報はの姿かたちはほぼ同一。

 よほどの少数精鋭か。

 あるいは 


「敵の数、確認できました!!」


 さらに少ない。それはつまり


「一人です!!」


 これが、敵の切り札か。




 ---



「何よあれ…」


 カルサの口から漏れ出るのは驚愕。

 俺も全く同じ思いだ。


 敵は隠れるのを止め、草原のど真ん中に出てきたという。

 その姿を見ようと高台に来てみると、そいつはいた。



 身の丈の数倍はあるであろう、巨大な漆黒の大剣。

 それをまるで重さがないかの如く振り回す。

 一振りするたび、数十人の兵の体が両断される。


 遠巻きにしての弓矢と魔法の一斉掃射。

 だが全ての矢を難なく撃ち落とされた。

 そしては魔法には魔法を。

 その手から放たれた魔法はこちらの魔法を相殺どころかかき消して、そのまま弓兵と魔法兵は壊滅させられた。


 近寄れば大剣で

 遠くにいては魔法で

 いつしか誰もそいつに近づくことはできなくなってきた。


 いや、違う。

 誰も一歩も進めなくなっていた。

 やつをすり抜けて敵兵を追おうとすれば、その瞬間狙われる。

 つまり、やつの目的はこちらの足止め。


 こんなことができる個人は、人類に四人しかいない。


 対魔最強、聖王国国王アオバ・オウル

 対人最強、ルゥルゥ国元帥ジェンガ

 対国最強、魔法王ランシェル・マジク

 そして、

 対軍最強、ヒュドラ連邦大将軍エキドナ・カーン


 文字通り、たった一人で軍隊を殲滅する女。

 やつが、ここにいる。




 ---




 エキドナとルゥルゥ軍のにらみ合い。

 それは東側戦線からの連邦軍の撤退が終わるまで続いた。


 ジェンガや馬路倉が対峙する提案もあったが、その場合間違いなくエキドナはこちらの兵士を盾にしてくる。

 それでは意味がないということで攻撃は中止された。


 西側戦線を通過するときにそれなりの数は減らされるだろうが、当初の目論見よりは大分減るだろう。

 次回の戦いに向けてこれは大きな痛手だ。

 しかもそれがたった一人の手によるものとすればなおさら。


「リク・ルゥルゥ!!」


 草原に響き渡るような大声。

 一気に意識が現実に引き戻される。


 声の主は、いまだ構えをとかずにこちらをにらみつける女

 エキドナ・カーン


「今回の戦いは貴様の勝ちだ!」


 全軍が同じ言葉を聞いている。


「だが、戦いはこれで終わりではない!」


 だが、この言葉を向けられているのは俺ただ一人。


「私がいる限り、連邦に敗北はない!!」


 そうか、これは


「貴様は、私が必ず討ち果たす!!」


 これは、彼女の俺への宣戦布告だ。




 そのまま彼女は姿を消した。


「て、転移魔法…?」

「まさか、連邦にも使える者がいるとは…」


 周りがずいぶんとざわめているが、頭に入ってこない。

 エキドナの姿、その言葉で頭がいっぱいだ。


 ここまで真正面に敵意を向けられたのは初めてだ。

 味方からは英雄王などと祭り上げられていたが、連邦にとっての俺は不倶戴天の敵。

 それをようやく身を持って理解できた。


 俺にとっても本当のスタートラインということか。

 だが、今更引き換えることなどありえないし、する気もない。

 俺を信じる皆のために、俺はゴールまで、勝利まで突っ走る。


 エキドナ・カーン、お前がそれを邪魔すると言うならば…


「やってやろうじゃないか」


 俺は、負けない。

リクは後方にいるので戦場の様子を直に見ることはないのであっさりでした。

むしろエキドナが大活躍でしたね。


前回の話は個人的にはうまく書けたつもりでしたが、反応は良くなく反省してます。

次回は81話に対してのハンニバル視点の幕間か、エキドナの幕間となります。

来週は全く時間とれそうにないので、なんとか更新できてよかったです…。

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