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76話 反撃開始

「ようやく、こちらの番ってわけですね!!」


 俺は単に長時間待たせたことについて指摘しただけだったのだが…。

 なるほど、ジェンガのような考え方もあるわけか。


 乗っからせてもらおう。


「その通りだ」


 できるだけ威厳をこめて。


「雌伏の時間は終わりだ

 諸君らの待ちに待った()がきた」


 全員の顔が引き締める。


「これより、反転攻勢を開始する!」

「「「「おおおおおおお!!!!!」」」」


 謁見の間が震えた。

 やる気がまるで質量を伴っているかのようだ。

 さあ、この皆のやる気をうまいこと導いてやらないと。


 何か作戦の概要でも提示してあげないといけないが、誠に遺憾ながらジェンガやボードと事前打ち合わせはできていない。

 この場でいきなり作戦を言えというのも無茶振りすぎる。

 何より彼らが待っているのは俺の言葉。

 俺の代理の言葉ではない。


 俺が、言わないと。



「連邦は西方と南方の守りのため、軍を分けた

 これですでにやつらの数は半減」


 自分のためにも状況整理。


「それだけではない

 使役していた奴隷たち、我らの同胞たちが反乱を起こしてくれた」


 俺の奴隷解放宣言の嬉しい副作用。


「反乱の鎮圧、軍の再編成でやつらは大混乱だ

 我らに向けられる戦力は更に半減している」


 半分の半分で四分の一だ。


「今や連邦軍に数の優位はなくなった

 もはや我ら東西南の精兵が敗北する要素は存在しない!」


 自分で言ってて勇気づけられた。

 一番の問題だった数の圧倒的差がなくなったのだ。

 精兵うんぬんは置いといても、多勢に無勢でなければいくらでも何とかなるはず。


 みんなも沸き立ってるし、これなら勝てる気がしてきたぞ。


「陛下、恐れながら」


 空気を読まない、優しく冷徹な声が響く。


「あくまでそれは東西南連合軍での話

 ですが西方と南方の軍はどこにおりましょう?

 現地ではございませんか?

 だからこそ、連邦は全軍を割ったと陛下ご自身がおっしゃられたと存じておりますが…」


 左大臣パータリの発言。

 それは指摘を受けるまでもなく当然のことで、調子に乗って適当なことを言ってしまったと一気に血の気が引いた。


 だが、場は静まるどころかさらに沸き立っている。


「陛下、ぜひ我らにご教示ください

 いかにして東西南の連合軍を形成するのかを

 いかにしてその奇跡を成し遂げられるのかを!」


 五天将ズダイスの問いかけ。

 ルゥルゥ国随一の名将が信頼に満ちた目を向けてくる。


 遠く離れた軍を一瞬で統合する奇跡。

 俺ならそれを実現できる。

 そんなとんでもない前提があったので、みんなは俺の言葉で興奮できていたわけか。


 どこに軍がいるのか考えもせず発言したなんて、とても言える雰囲気ではない。

 そもそもそんな魔法みたいなこと、俺に期待しないで欲しいのだが…。


 ん?魔法?


「陛下、僭越ながら」


 威厳に満ちた声。


「私に説明させていただけないでしょうか?」


 俺みたいな即席の王様とは違う、三百年もの年季が入った王様の声。


「許す。話すがいい、魔法王」

「恐悦至極にございます。陛下」


 魔法と言えば魔法王。

 どうやら、俺に成せない奇跡を実現してくれそうだ。



 ---



 馬路倉の説明は簡潔明瞭だった。


 転移魔法の存在。

 それによって遥か遠くから一瞬で移動ができること。

 それが魔法国の秘中の秘であったこと。

 ゆえに俺が詳細の公開を躊躇していたこと。


 ワープという概念など持っていない、そもそも魔法の知識すら乏しい人々にもイメージができるような素晴らしい説明だった。

 四番目の誤解以外はもう完璧すぎ。

 魔法王、すごい。


「陛下、我が国のことをご懸念いただき申し訳ございません」

「そんなことはないぞ」

「お心遣い、感謝申し上げます」


 本当にそんなことないのだが、伝わっていないようだ。


「それに、転移魔法は実は公開されても問題ないのです」


 そうなの?


「転移魔法の習得難易度は全魔法の中でも一二を争います

 例え公表しても、使用できる者がどれだけいるか…」


 マジか

 たしかに転移魔法使えるのって、馬路倉とカルサと、あのエドっていう馬路倉の腹心の三人しか見たことないけど。


「まして軍の移動のような大規模転移魔法となれば、私同等の魔法使いでなければ実現不可能でございます」


 魔法王同等。

 そんな存在がそこらにいてたまるもんか。


「転移魔法が秘中の秘であったのは、漏れることを警戒していたからではございません

 無用な警戒を抱かせないため、でございます」


 なるほどね。

 転移魔法で簡単に攻めてこられると勘違いし、それこそ死に物狂いで魔法国を滅ぼそうというやつらも出てこかねない。

 それを避けるために秘密にしていたわけか。

 やっぱ賢いな、馬路倉。


「秘中の秘を明かしてくれたこと、感謝するぞ。魔法王」

「恐れ多きことにございます

 陛下のもとに世界は統一されるのです

 もはや秘する必要もございません」


 そううまくいくといいのだが…。

 まあ、悲観してもしょうがない。


「ズダイス、もう大丈夫だな?」

「無論にございます

 あとは戦場にて、我らの責任を果たさせていただきましょう」


 実に心強い。


「パータリ、納得したか?」

「陛下のお言葉には全て揺るぎない裏付けが存在する

 そのことを改めて確認させていただきました

 このパータリ、忠義が万倍にも増した思いにございます」


 0は何倍しても0だけどね…。

 納得してちゃんと働いてくれるならいいだろう。


「では魔法王。西方と南方の軍の転移、任せるぞ」

「大任、承りましてございます」


 西方と南方の軍が国境沿いに集結しているのが逆に功を奏したな。

 お互い仲が悪いから、あまり顔を合わさないよう注意してもらおう。


 では、そろそろ〆ようか。



「諸君、舞台は整った」


 若干緩んでいた空気。

 それが一気に再び引き締められた。

 張り詰めたような空気の中、その全ての視線が俺に集中している。


「天の時、地の利、人の和

 それら全てが揃った今、連邦は我らの敵ではない」

「「「「おおおおおお!!!!」」」」


 再び謁見の間が震える。

 この熱量の向かう先はもう示した。

 ならばあとは、号令をかけるだけ。


「リク・ルゥルゥの名のもとに命ずる!」


 精一杯、声を張り上げて


「反撃開始!!」

視点変えようかと色々悩んだ結果、やはり本編はリク視点だろうと結局もとに戻りました。

更新が遅くなって申し訳ありません。なかなか時間がとれず、危ないとこでした…。


今回で全体だと100話目となります。

前回の更新直後はブクマや評価いただけなくて微妙だったのかなと思っておりましたが、尻上がりで評価いただけてとても喜んでおります。

総合評価3000にたどり着きました。

ブクマ1000の大台も見えてきました。

皆さん、本当にありがとうございます。

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