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1 空飛ぶ王女様

これは竜や魔法の存在する異なる世界のお話。

とある異世界の、とある小国の、ふわふわでぽわぽわな優しく可愛い小さな王女様の物語です。


***


その国の名は、ラヴィニディア。

空に一番近い国と呼ばれる王国。

そびえたつような高いラヴィ山の上に栄える国です。


切り立った崖や深い河に外界から隔たれた辺境の国。


辺境の国…と言うとものすごく田舎のように聞こえますよね?

でも小さな国ですがその国はとっても文化的で平和で美しい国でした。


外界から隔絶してはいるものの山河の恵みは豊かで、気候は温暖。

水も食べ物も豊富で、人口も多過ぎず少なすぎず、独特なガラス工芸や機織りなども盛んで自国内だけでも、人々は、とても潤っていました。


そんな豊かな国の人々はとても大らかで優しく王様やお妃様もとても呑気で穏やかなお人柄でした。


そしてお二人のお子様、ポーリン王女はそれはもう可愛らしく、その姿を遠くから見かけるだけでも誰もが幸せな気持ちになれました。


「「「我が国の王女様は世界で一番可愛くて愛らしい!」」」


皆がそう口々に言います。

まるで天使か妖精のような可愛らしさ愛らしさでご両親である王様やお妃様はもちろん国民達からも、それはそれは愛されておりました。


え?王女様だから皆、へりくだって褒めているだけだろうって?

そんな事は全くありませんよ!


何しろ皆、余裕のある満ち足りた生活をしておりますからね!

王族と国民の距離もとっても近くて皆がとっても仲良しなのです。

なにせ、この国では、人としても最低限のマナーさへ守っていれば、多少の事は許されます。


例えば、うっかり貴族でもないものが『王様ってば、おっちょこちょいなところがあるよね』とか言ったりするとします。


この世界では、よその国だとそれだけで首が飛んじゃう国もあるらしいのですが、この国ではそんな事はあり得ません。

王様が、『あはは、そうなんだよね~僕、おっちょこちょいなとこあるから、皆、助けてね~』と穏やかに笑うに留まる感じでしょうか。


ええ、そうなんです。

平和です。


人としての最低限のマナーって何かって?

そうですね、一概には言えませんが、ポーリン王女が王様(おとうさま)王妃様(おかあさま)からずっと言われてきた教えは、こんな感じでした。


『ありがとう』と『ごめんなさい』を忘れない。

そして『自分がされて嫌なこと』は人にしない!


そう、たったこれだけです!


そしてポーリン王女は大好きな両親からの、この教えを常に心にとめていました。

食事を作ってくれるコックや自分の着替えを手伝ってくれるメイド達やお勉強やダンスを教えてくれる家庭教師たちにも、いつも「ありがとう」と感謝の言葉を伝え、自分が何か失敗したり反省するような事があれば素直に「ごめんなさい」と頭を下げました。


そんな素直で可愛らしい王女が皆、大好きなのです。


この世界で王族が頭を下げるなんてこの国だけでしたが、この国ではそれが普通で当たり前の事でした。


山に住まう生き物たちすらも、主に植物を食べる草食動物や魚や虫などを食べる雑食動物で特に人を襲うこともありません。

動物同士も天敵がいないせいか、警戒心も少なく人懐っこく皆が仲良しです。


まさにこの世の天国…といったところでしょうか。



けれど、その国に訪れたことのない他国の人々はこの国を魔王の棲む国と噂し恐れていました。


なにしろ、その国に行こうとするには、大きな大きな河を濁流を乗り越えて尚、絶壁の崖を乗り越えていかなければならず山の途中にはいつも霧のような雲がかかっているのです。


ラヴィニディア王国は、その雲の上にあるので、そそり立つ高さもさながら、その険しい岩肌や時折雲の合間から顔を除かせる竜がいて、その大きさと恐ろし気な姿見るだけで他国の人々は竜の棲む国。


恐ろしい竜や魔物を従える恐怖の魔王の君臨する国と恐れられていました。


実際の竜は、恐怖の対象とは真逆の、とても温厚で賢く慈愛に満ちた崇高な存在だったのですが。

下界の国々の民は、そんなことも知りませんでした。


ある日の事です。

五歳のお誕生日を迎えたポーリン王女はバルコニーでペットの翼竜チャミときゃっきゃと遊んでおりました。


するとチャミがいきなり自分の羽をばたつかせ、嬉しそうに報告をしました。


『ポー様!チャミは最近、空を飛べるようになりました』

自慢げにチャミは、胸を張ります。


「えっ!お空?飛べるの?すごいっっ」


『えへん!なのです』チャミは、ポーリン王女の素直な賛辞の言葉に少し照れながらも嬉しさに頬を赤らめて微笑みます。


そしてポーリン王女は、言いました。


「ねぇねぇ、わたしをのせて飛んでみて!」


怖いもの知らずの、まだお子様なポーリン王女は瞳をキラキラさせてチャムにねだりました。


『いいですよぉ~。ポー様、でも僕の背中に乗れますか?』同じく()()()()の翼竜チャムは、しゃがんで伏せをしました。

それが()()()()()()()()など、その時のチャムや王女には考えが及ばなかったのです。


「んしょ!んしょ!ううう~んしょ!どっこらしょっ!」


チャムも王女と同じで、まだ五歳なので竜としてはまだまだ小さかったのですが、既に体長は二メートルほどあり伏せた状態でも背中の高さは八十~九十センチくらいはあり、まだ五歳のポーリン王女が上りきるには中々、大変でしたがなんとかかんとか首の低いところから足をかけ、またがることが出来ました。


そしてチャムは、ポーリン王女を乗せ勢いよく飛び立ちました。

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