リリアの決意 そして…
私はただ一心不乱に走った。助けてと声のする方へ。
リリアは考えていた。先にアッシュさんに知らせて助けを求めたほうがいいのではないか。それが正しい判断なのではないかと。
(くそ! 何を考えている! 知らせに行く間に死んでしまっては意味がないではないか!)
だんだん声が近くなっていくのがわかる。だが声が近くなっていくと同時に私の不安もより大きく膨れ上がっていく。額から汗がにじみ出る。
「大丈夫ですか? リリア様?」
先程召喚したアーサーもこちらを見て心配そうにしている。
「ああ大丈夫だ。心配ない」
リリアはそう言うがただの強がりでしかないことは自分でもわかっていた。でも今はなくなるかもしれない命を助けたいという一心でひたすら己を鼓舞し、足をすすめる。
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声のする現場につくと、そこは血の海だった。
おそらく殴られ、潰され、斬られ、食われたのだろう。
「うっ……おえええ」
リリアはその惨状を見て、その場にうずくまり吐いてはいけなとわかってはいたのだが反射的に吐いてしまっていた。この惨状を見れば生き残っているものもいまい……そう判断してもおかしくないくらい悲惨だった。
「大丈夫ですよ。きっと生き残っているものもいます」
そう言いアーサーが背中をさすってくれて少し落ち着いた。同時に後悔が胸を打つ。
(くそっ! 救えなかった!)
後悔という感情が行き場を失い、その場に拳を打ち付け自分の胸をぎゅっと抑えた。
そう思った矢先のことだった。
「誰…たす…」
少し遠くで声が聞こえたような気がした。はっきりと聞こえたわけではない。
それでもリリアにとってまだだれか生きているかもしれないという希望を抱かせるには十分だった。
(まさか! まだいきているものがいるのか!)
そう思った瞬間リリアはまた走り出していた。
希望の声がする方へと!
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走り出して、数分後。
数人の子供たちがコボルトと戦っているのが見えた。あたりには動けないものもいた。しかしコボルトならこれほどの被害になることはない。なぜだ。
その原因はすぐわかった。体長3mにもなろうかという巨体に、ひときわ大きい棍棒。一歩で地面がめり込み、足型がくっきり残っている。
キングコボルトと呼ばれるコボルトの上位種が子どもたちの前に立ちはだかっていたのだ。
「燃えろ! 火球!」
「凍てつけ! 氷の吐息!」
「阻め! 大地壁!」
もう魔力も残り少ないのか、足止めで精一杯な状況だ。ましてや動けないものを守りながらでは動ける者まで死んでしまう。
(それなら!)
「動ける者は先に逃げて、アッシュさんたちに知らせてくれ! こいつらは私が食い止める!」
「でもおまえ! 死んじまうぞ!」
たしかにそのとおりだった。まだ見習い召喚士にもなってないものが動けないものを守りながらキングコボルトに挑むなど馬鹿のすることだ。でも、彼らが死ぬよりはいいと思えたのだ。
「早く行け! お前たちだけでも生き残るんだ! 早く!」
怒気を込め叫ぶと彼らは渋々助けを呼びにその場からいなくなった。そしてリリアは覚悟を決めた。
(確かに勝てるはずもないな…でもこの場で逃げるよりはマシだ!)
「頼んだぞアーサー!」
「はっ! リリア様!」
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リリアが戦い続けて、何分経過しただろうか。
そこら中には、コボルトの死骸が無数にあり残すはキングコボルト一体となっていた。しかし私はといえば、もう魔力が底をつきかけ、アーサーを維持するので精一杯だ。
一方キングコボルトは傷一つついていない。
もう動くこともできない私の髪を掴み、ブンと投げ飛ばす。私は、何も抵抗できず投げ飛ばされてしまう。
ベギ!
大木が真ん中から折れ、威力がどれほどのものか用意に想像がつく。私は何本か骨が折れた感じがした。
「ぐは……」
そんな嗚咽などお構いなしに、今目の前の敵を殺すと言わんばかりのオーラを放ちキングコボルトが迫ってくる。
(もう……だめかもな……)
そう思うと何故か笑みがこぼれる。同時になぜかクロアの顔が思い浮かぶ。
(ふふっ……なぜだろうな……最後にクロアの顔をもう一度見たいと思ってしまうな……)
キングコボルトがその大きな棍棒を振りかざし、私に向かい振りぬく。
(ビンタしてごめんって最後に謝っとけばよかったな…)
それを最後に、彼女は死んだ。
まずは謝罪を。
短い……申し訳ございません……本当に申し訳ございません。
次に感謝を!
評価 感想 ブックマーク本当にありがとうございます!
今後共よろしくおねがいします!
悲惨な話すぎる……でも次の話は結構コミカルになると思います。この状態からどうやってするねんとか思ってる人!私も思ってます。