俺はまだベッドの上にいたい(仮)
あなたにとってベッドとはなんですか?
もちろん誰もがこう答えるでしょう。
『癒やし』であると。大事なことなので二回言いましょう。『癒やし』です。
そう全人類はベッドに屈するのです。
よって俺、人類であるクロア=アータムもベッドに屈します。
「さあ我に安らかなる二度寝を…」
バギっ! ビギっ!
「ん? バギビギっ!?」
ドガーン…
俺はただ今寝ていたところを呆然と眺めるしかなかった。そして怒りが頂点に達し、壊したやつに言ってやった。
「俺の安らぎの場が破壊されてしまった…誰だ! こんなことしたやつ! 許さんぞ!」
「誰が誰を許さんのだ? んんん?」
「ひっ!? リリアさん…今日もまた赤い髪が怒りにより真紅に変わられてお綺麗ですね…」
リリア=ファルはいわゆる幼馴染で真っ赤な髪と少し釣り目な美少女だ。ちなみに今は怒り状態で全身が赤いオーラに包まれているような幻覚が見えるが気のせいだと思いたい。ちなみに性格は言わずもがなである。
「あなた今何時だと思ってるんですか? 召喚式典は9時からだとあれほどいいましたよね? ええそれはそれはもう耳にタコができるくらい言いましたよねえ? それなのになぜまだベッドの上にいるんですか?」
「すいません…許してください…だからあと少し寝かせてくだ『シュッ』『ぶべら!?』」
閃光のような蹴りで俺は意識を刈り取られた。
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意識を刈り取られた俺は何故かぷわぷわ浮いていた。周りは見渡す限りシャボン玉のようなものが浮いていて不思議な空間だ。そしてなぜだがとても心地がいい。
「ここならもう一回寝れる…ああ幸せだな…ってここどこだよ!」
「ここは世界の中心。いわば神の世界です」
「今なんかシャボン玉がしゃべらなかったか?いやーついに頭がおかしくなったかな? 蹴られる位置悪すぎたのかな? いやそんなことないか…喋るシャボン玉がこの世にあるとして諦めよう…」
「懸命な判断ですね。ちなみに頭はおかしくなっていませんよ? あなたにはシャボン玉が話しかけてるように見えますから」
そう言うと喋るシャボン玉は俺の前まで来た。その後に続けてこう言った。
「いま世界がどんな状況か知っていますか?」
「えーと話のスケールがポップなものからでかくなりすぎてイマイチ把握できないのですが…?」
「現在世界は悪しき神によって滅ぼされようとしているのはしっていますね? なのであなたが救ってくださいニコッ」
「えっ無視!? そして俺にさらっと笑顔で世界を托した!?」
「ではよろしくお願いしますね?」
「えっちょっまっ…」
その喋るシャボン玉は最後にフフッと笑い夢は終わった。
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目が覚めるとそこは広場だった。
何やら人だかりができており、一喜一憂の声が聞こえる。
「お前の召喚したやつ雑魚じゃん! プフっ!」
「お前こそちんちくりんな豚みたいなやつ召喚しやがって! そっくりだな!」
「おお! 偉人を召喚したぞ! こいつはすげええええ!」
そんな会話が聞こえてきた。
「やっと起きたかクロア。お前の意識を刈り取り、ここまで連れてくるのに苦労したんだぞ?さあお前も召喚の順番までちゃんとベッドに戻らず待てよ?」
「意識刈り取る必要なかっただろ!」
今俺がつれて来られてるのは"永遠召喚式典"と呼ばれるものだ。毎年15歳になるものが一斉に"永遠召喚"と呼ばれることをする。
"永遠召喚"とは読んで字のごとくである。
ただ通常の召喚と違うのは、人生で一度のみという点だ。
この永遠召喚を行ったら最後、召喚されたものは何であれ死ぬまで永遠のパートナーなのである。だからこの式典にみんなは命をかけているのだ。
そうこうしているうちにリリアの番だ。
「次! リリア=ファル!」
「はい!」
リリアはそう言い、広場の中央まで歩をすすめ、魔法陣の中に入る。するとリリアの体に光が溢れ、輝き始める。広場がうめつくされそうになるぐらいの光だった。そう幾千もの"真名"がリリアを求めている証拠だ。
「こっこれはすごい! 未だかつて見たことがない光じゃ! では永遠召喚を! "真名"を唱えるのじゃ!」
すると彼女リリア=ファルはこう紡いだ。
「円卓の騎士よ! 彼に剣を預け、われに力を授けよ! いでよ! アーサー王!」
びがあああああああああああああああ! 魔法陣がかつてないほどの光を放つ!
するとそこには、金髪の美青年が立っていた。その美青年は全身白銀の甲冑姿で顔だけは出してる感じだ。そしてまるでリリアに忠誠を誓うかのようにかしずいていた。
「幾年生きるときも病めるときも、我アーサー王と円卓騎士団は今このときより貴方様のものです。貴方様のためなら思う存分力を振るいましょう」
一瞬広場が何が起こったのかわからず静まり返ると、次の瞬間「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉ!」」」」」
広場がどっと盛り上がった!
「これで偉人を召喚できたのは二人目だ!」
「この街の希望だ!」
「あの子めっちゃ可愛いな…それに偉人とか…俺のお嫁さんになってくれないかな…」
なんか変なこといってるやつもいたが、これはかなりすごいことだ。
偉人は"永遠召喚"の中でも偉業をなせるような器にしか召喚できないといわれており、めったに召喚されないのだ。中には、神を召喚しちまうバケモンもいるっちゃいるが、それは何十年に一度とかの話らしい。
「次はえーと? クロア=アータム君! こちらへ来なさい! さあ魔法陣の中へ!」
「ヘーイ」
彼が歩き出すと広場からクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「おいクロアだぜ…落ちこぼれのクロアだ…」
「授業は全部寝ていて、テストは全部0点…ぷふっ」
「おいっ…あいつがかわいそうだろくっふふ」
そんな声があちらこちらから聞こえてくる。
(落ちこぼれか…まあたしかにな…授業なんてめんどくさいし、テストなんて出るだけ無駄だしな)
「では魔法陣の中へ!」
「はいよ」
俺は魔法陣の中へ入った。
(さあ!まばゆいばかりにかがやけ! さあ!)
シーン
「ん? いまひかりました?」
(俺の気のせいかな…)
「ううむ〜もう一回はいりなおしてもらってもいいかね?」
(あれ? 儂の気のせいかの?)
俺は魔法陣から出て、もう一度入る。
シーン
「うそでしょおおおおおおおおお!?」
おれの悲痛な叫び声は広場にこだました。
「まあこんなこともあるじゃろ…ウォッホン…さあ"真名"を唱えるのじゃ?」
「なぜに疑問形!? 唱える真名がないとでも思ってるんですか!?」
「こうなりゃもうヤケクソだ! いでよベッド! 我に安らかなる睡眠と永遠の癒やしを我に授けよ!」
(((((あっこいつ馬鹿だ)))))
シーン
「あれーおかしいなー? せめてちょっとくらい光ってくれてもいいんだよ!?」
クロアは前かがみになり魔法陣を確かめるようにもう一度見る。
そしてそれは突然起こった。
びがあああああああああああああああああああああああああああああああああ! 魔法陣が突如まばゆい光を放つ!
「ぎゃあああああ目がああ! 目があああああああ!」
ボン!
「ん? 今なんか出た?」
クロアは自分が永遠召喚したものをじっと眺める。銀髪で少し背は高め、目は大きいがどこか眠たげだ。じっくり見てると眠たげな彼女はこう答えた。
「…ここはどこ…あなたが…私の主…?」
のちのクロアはこう語る。あれが運命の分岐点で、俺の怠惰生活がおわりを迎えた瞬間だったと。
どうも喜々鸚哥です。
一応もう一作品書いてみたいということで書きました。
なんかうん…かなり長くできました。
まだ拙い作品ですが皆さんよんでいただきありがとうございます。
そしてこの作品をよろしくおねがいします!