女剣士は婚約者と話し合う
セナリオの告白撤回後、皇国に着くまでの車内は、皆が会話が途切れないように
するのに必死だった。お陰様(?)でかなりの耳年増になったと思う。と同時に
タークの変心についての予想が5指を超えたりしたが。
皇都で討伐報告をして、それに続く祝賀会やらなんやらをこなしていく間に、
セナリオとはほぼ普通に話せるようになった。とはいえ、ここで別れたらおそらく
会う機会はもうないだろう。
「それじゃ、皇都での生活に慣れるまでは大変だろうけど、頑張ってね。」
「フレイさんも、その...お幸せに」
アタシ達は抱擁でも握手でもなく、拳を突き合わせて別れた。
先触れがいっていたのか、街の入り口には大勢の人が出迎えてくれた。ざっと
見渡したが、タークの姿はなかった。街の人たちに挨拶をして、懐かしの我が家
へ。まずはタークが無事にロイエン国から帰ってきているかを確認する。弟の話
では、帰還後からかなり忙しくなり、滅多に街には出て来れないとのこと。近況
を聞いたアタシは、タークの家に行く前に今回の告白騒動を家族に正直に打ち明
けて、こんなアタシでも受け入れてくれるかだろうかと不安を口にする。
「あ~、ターク君の態度が妙な感じになったのは、私達の方にも原因があるからなぁ...」
「あなた、ここはターク君の判断に任せましょう。」
父がタークの変心に心当たりがあるようなことを言い、母が寝室から小さめの木箱を持ってきた。
「フレイ、これをターク君に渡して、中身の事を話すかどうかはあなたに委ねます、と伝えて。」
アタシは普段着に着替えてから、タークの家へ向かった。
タークの家は薬草園を近くに持つため、街の外周近くにある。歩きながら、自分
のスカート姿はこの街を出る前日以来だと思い出した。そして服から覗く素肌に薄
らと浮かぶ傷跡に顔を顰める。今さらといえばそれまでだが、よくこんな傷だらけ
になる女と結婚しようなどと思ったものだ。あ、その辺を気にして美術品扱いに
なったのかな、などと車内での予想のうちのひとつが思い浮かぶ。
途中商人風の人と何度かすれ違った。タークが忙しい、というのは本当のようだ。
やがてタークの家が見えてくる。3年前より倉庫や温室が増えているな、と感心し
つつ玄関へと足を運ぶと薬草園の方からタークがやってきた。ロイエン国での一連
の出来事のせいか、体つきが逞しくなっていた。
「「おかえり(なさい)」」
2人同時に声をかけ、その息の合い方にホッとしつつ改めて挨拶。
「ただいま戻りました。」
積もる話がお互いたくさんあるけれど、アタシは真っ先に告白騒動を切り出した。話の最後に母から渡された木箱をテーブルの上に置いて、タークに尋ねた。
「この箱の中身がアタシを美術品扱いにする理由なの?」
「...ちょっと違う。フレイへの接し方が変わったのは確かにそれのせいだけど、美術品扱いは僕の空回りというかボタンの掛け違いというか...」
「ん?よくわからない。」
「詳細は話せないけど、その中身はフレイの気持ちに関係なくフレイを僕に縛り付ける物なんだ。」
両親同士が知り合いだとは思ってたけど、ウチの方が立場が下だったのかな?
「それの存在を知ったというか聞かされたのが婚約の話をしにいった日の夜。で、縛るというか下に見るというのが嫌でああいう態度になったと。今はそれが間違えた行動だったって分かるけど、あの時はそこに思い至らなかったんだ。」
「話してしまうと関係が壊れてしまう物なんだね、それ。」
「そう。そのせいで嫌な思いをさせちゃってごめんね。」
「ううん。方向性はともかく、アタシを大切に思ってくれてるってのは変わらなかったんだ。そこをちゃんと押えとけば...」
「ま、3年前の僕たちじゃ色々足りなかったんだよ。」
「そうだね。よし、スッキリした。他の積もる話はまた明日以降に。」
「あ、送っていくよ。」
2人して立ち上がったところで、アタシはよろめいてしまいタークの方に倒れかかった。
「おっと大丈夫?」
アタシの顔はタークの胸の中へ、タークの手はアタシの背中にまわされた。帰りの車内で得た知識ならここからいい雰囲気になるところだが...
「ありがと...」
顔をあげてタークを見ると、彼の表情もアタシと同じく強張っている。お互いが服越しに触れた所に感じた傷跡の深さが次の言葉を躊躇わせていた。
「ひとつ提案があるんだけど。」
しばらく見つめ合った後、タークが切り出した。
「初夜の前にお互いの傷の報告会しない?」
「...確かに必要かも。」
そういいながらアタシ達はキスをした。
後日談という蛇足を今週中に




