女剣士は告白を撤回される(後)
村長さんの話は結構長かった。タークが作った特効薬の製法を各地に知らせる
ため、救援隊の皆を送り出した後、この村に一人残って全員が完治するまでの
半年間、色々な武勇伝(?)を築いていたようだ。その中でも足りなくなった
材料を樹海入口に取りに行った際、駆け出し冒険者や肉体系仕事をしている村人
なら楽勝の角兎と激戦を繰り返していた話は、本人を知らない人には笑い話でも、
アタシには胸と胃が締め付けられる事だった。
話が終わって用意された寝室へ。借り物の寝巻に着替えてながら姐さんが話し
掛けてきた。
「フレイから聞いてたより熱い男だな、腕っぷしは聞いたまんまみたいだけど。」
「そうですね。アタシもタークがこういう事に参加したというのが意外です。
でも、自分からやる と決めた事はやり切ってましたから、ある意味ターク
らしいかな。」
「いい男じゃねえか。しかし、病人全員救った、ねぇ。」
「え?」
姐さんの寝付く前の一言が心に引っかかった。
翌朝、家族と一晩過ごしたセナリオと合流して村を離れる。セナリオの表情が
家族の無事を確認できたにしては冴えないのが気にかかる。今日の御者はアタシが
一番手。
馬車の中は昨日の村での話のようで、時折タークの名前が聞こえてきた。アタシは
耳を傾けることをせず操縦に専念して昼食休憩の場所までむかった。
馬車を停めて昼食の支度を始めるが、皆の雰囲気が妙に固い。一体何を話し
合っていたのだろうと訝しんでいると、セナリオが告白の時のような思い詰めた
顔で話し掛けてきた。
「フレイさん、食事の後ちょっといいですか?」
「なにそんな固い喋り方に戻ってるのよ?」
「えぇ、まぁ...」
「ん、なんかよく分らないけどいいわ。」
食後、皆に断りをいれて馬車から少し離れた場所へ。
「で、どうしたの、そんな険しい顔して。」
「...フレイさん、あなたを好きだと言った自分の気持ちは今でも変わり
ません。だけど、村の、いや家族の命の恩人を傷つけてまで一緒に過ごしていく
覚悟が僕には持てません...」
あ~、これか、昨夜の姐さんの一言がひっかかったのは。
アタシは告白を受け入れた時に家族との縁が切れることを覚悟できたけど、
セナリオは告白後にその辺りの環境が大きく変わった。しかもこれから立ち向か
おうとする相手が家族の命の恩人だと知って、かなり悩んだのだろう。そして
出した答えがこれか。
「先日の求婚、撤回させてください。」




