女剣士は覚悟の程を問われる
告白を受け入れた晩、アタシは寝る前にタークのことを思い返してみた。
ターク・ジェドウィック、アタシより4つ年上。両親を早くに亡くし、
叔父夫婦に引き取られてこの街にきた。アタシの両親と彼の両親に交友
があったらしく、彼が叔父の手伝いを始める年齢になるまではよく家で
一緒に遊んでいた。
そんな彼は加護にも恵まれたのか、同世代の中ではいち早く独り立ち
していて、腕っぷし(というか体力)以外はほとんど持ってるいい男に
なっていた。一方のアタシは小さな頃から剣術の真似事ばかりをしてい
て、そのまま剣術に纏わる加護を得て両親を悩ませていた。
アタシが加護を得る少し前くらいから、彼と街で会う機会が増えた。
というか剣術の鍛錬で生傷が絶えないアタシが、彼の作っている薬の世
話になるようになったからだが。始めは昔話、近況報告、将来の夢など
を語り合いながら、いつの間にか結婚しようって事になっていた。その
事を両親に話したらなんか安堵した顔をされたっけ。
だけど、婚約が決まってから彼の態度が少しづつ変わっていった。ア
タシへの接し方が女の子に対するものより、なんというか美術品、それ
も壊れやすい彫刻系に対するものになっていったのだ。なんか違う、こ
ういう付き合い方はヤダ、というのを言い出しかねている時、魔王の出
現・それに対抗するための特化加護持ちの招集があった。破魔剣士とい
うピッタリの加護を持ったアタシは、ここ最近のモヤモヤを振り切るか
のように皇国へと向かった。彼お手製の薬をしこたま持って。
翌朝、皇都に向かう馬車の中、アタシと勇者以外のパーティ(御者役
の斥候の姐さん以外)の表情が硬くなっていた。しばしの沈黙の後、一
番年上の魔法使いのお爺さんが口火を切った。
「2人とも若いから感情の赴くままの行動というのも分からんでもない。
が、その行動がどう波紋を広げてゆくか、ちょっと考えてみようかの。」
皆さん、昨日なにがあったか察しているようだ。まぁ、パーティ内で一番
年下の勇者と1つ違いのアタシのことなど、他のメンツからすればまさに
子供だろう。アタシに一番年が近い斥候の姐さんでも6つ違いだし。
「まずは当事者の許婚君。こういうことをいきなり切り出されても、とり
あえず対処できるような人?」
神官の小母さんの問いかけにちょっと考えてから答える。
「聞き終わった瞬間に斬りかかるとか目の前で自害するようなことはない
...と思います。」
「彼が婚約解消を認めなかったら?」
「......」
アタシが言い澱んでいると、勇者がアタシの手を握り締めながら絞り出す
ように呟いた。
「...その時は最低の手段を取ってでも。」
「その覚悟はあるわけね。じゃ次。」
「セナリオの方は多分もういないだろうから、フレイの両親にはどう説明する?」
神官の後を継いで重騎士の小父さんが問いかける。勇者の出身のロイエン国は、
1年前に魔王配下の疫病撒きという魔族に襲われ、以降音信不通となっている。
その名が示すようにいまだ人が立ち寄れないのだろう。
「アタシの方は話し終えたら即親子の縁を切られて終了です。」
これはほぼ間違いない。両親達の絆はかなり深いものだったみたいだから、その
立場からすればこの裏切り行為は許し難いことだろう。アタシの言葉にみんなが
ちょっと驚いた顔をした。
「うむ、覚悟の程は分かったし、近いところにも気を配っておる。夕飯の後はも
う少し遠くの話をしようかの。」
お爺さんが話を締めくくった時、姐さんが声を掛けてきた。
「道が思ったより良かったから、予定より先のロイエン国の国境沿いまで行くぜ~」
セナリオは一瞬表情を険しくしたが、すぐ元に戻して姐さんに返事した。
「安全運転でお願いします。」




