ブレーカーとリップ
掲載日:2017/12/22
今日は夜からお出かけ
準備に大忙しよ
今日は外でディナーなのに
置いていく家族のために
作らなきゃいけないの
美味しい晩ご飯
うっかりしてた今夜の食事当番
前もって代わってもらうの忘れてたんだ
ご飯を炊いてる間に
お風呂に入って
ドライヤーをかけて
化粧を念入りに
下地 コンシーラー ファンデ マスカラ チーク
最後に一番お気に入りの色のリップ
鏡の前で構えた瞬間
バチン
…………
暗闇に包まれた洗面台
鼻の下にはオイリーな固体の感触
ああ
見るのが怖い
まさか 五分も惜しいこの時に
まさか やり直しなんてことは
ないと言って
頼むわメイクの神さま
「どうしたの?」
十歳下の末っ子がブレーカーを上げる
あたしと目が合うと
たっぷり十数秒
沈黙の後 こう言った
「……手伝うよ。ねーちゃん……」
あんた出来た弟ね
それとも、あたしはそんなに情けない顔してた?
お礼に時間厳守で帰ってくるから
それまで待っててね
門限は十一時
お土産はショコラケーキがいいかしら




