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第4話 妖精郷


俺が目を開けた時に見た光景は、小さな生き物が走り回るものだった。

小さな生き物の姿形は様々で、人型や動物、人型の一部に動物の特徴を持つ者(所謂獣人型)など多岐に渡った。

背丈は大体15〜25cmくらいだ。


俺は、今まで居なかったはずの生き物が存在する、少なくとも自分が見ていた範囲には居なかった者達が存在している事に、唖然としていた。


俺が余りにもずっと生き物達の方向を見ていた為か、訝しげな表情をしてこちらを見返す者が出始めた。


それでも見ていると、


「ねぇ、彼処あそこに居る人僕達を見えてるんじゃない?」


と、仲間?と思しき者に声を掛けた。


「それはないでしょ?私達は世界樹ユグドラシルに認めてもらって、加護を授けられないと視覚的・聴覚的・嗅覚的に認識出来ないようになってるんだから」


青を基調としたドレスを纏った小さな生き物(人型)の、その一言で小さい生き物達は黙り込む。


そして、--あっ・・・加護:『世界樹ユグドラシルの加護』、称号:『世界樹に気に入られし者』を獲得しました。

と脳裏に響く。


「(多分神様がスキルとかの獲得の時に教えてるんだろうなぁ・・・。あっ、って聞こえたしなぁ。場面見てるっぽいし、意外と暇なんかねぇ・・・。んで、この生き物達背中に羽が生えてるっぽい奴も居るし、精霊と定義しておくか)」


『世界樹の加護』がどのようなものか気になるが、後で確認することにする。


「で、でもよぉ・・・。明らかに見えてるような感じだぜ?こっちから声かければ反応するんじゃねぇか?」


全身が赤い色合いの獣人型の精霊が、そんな提案をする。


「ん〜、取り敢えず全員集合!!」


どうやら、青い人型の精霊がこの集団のリーダー的な存在らしい。

ワラワラと精霊達が、青い人型の所へ集まっていく。


頭をくっつけ合って何やら話をしているようだ。


数分後、結論が出たらしい。

慌ただしく動き始める精霊達。


「鑑定持ちの奴を連れてきなさい!『ステータス』の確認をします!」


数人がバラバラの方向に走っていった。

そして、残りの精霊達は俺の周りをぐるっと囲んだ。


どうやら『ステータス』にある加護を見るまで逃げないように囲んだらしい。

と言っても、奏翔には逃げようとする気は全く無いわけだが。


「(『偽装』あるけどそれ使ったらなんか面倒くさそうだしなぁ・・・。使わないでおこう)」




しばらくして、なんかキラッキラしてる奴が世界樹から出てきた。

他の精霊と比べて頭一つ分大きい背丈を持つ人型の精霊だ。(と言っても、大体30cm程だが。)

キラッキラしてる奴は、青い人型の精霊と何やら喋っており、時折頷いたり首を横に振ったりしていた。


「皆ー!その人は『加護』を授けられてるから問題無いわ!囲うのを辞めなさい!」


どうやら『鑑定』で『加護』があることを確認し終えたらしく、青い人型の精霊が号令を出し、包囲が解かれた。


そして、青い人型の精霊とキラッキラした奴が俺の所にやって来た。


「え〜と、私達の話してる言葉を理解出来てる?」

「・・・問題無いよ」

「そう、ごめんなさいね。私達は『精霊』だからね、無闇に人間に近づけないのよ。勝手に『鑑定』したのも事情があったから。そこは理解して欲しいわ」

「事情が有ったんなら仕方ないな(乱獲でもされたのか?)」


俺が読んだ小説の中には乱獲された精霊の話とかも出てくるので、そう言う風に考えた。


「私の名前はウェンティ。隣に居るキラキラしたのがウェルティ。私の兄よ。無口だから私から紹介させて貰ったわ。貴方は?」

「俺の名前は波多野 奏翔。奏翔って呼んでくれ」


ウェンティとウェルティをよく見れば--ウェルティのキラッキラオーラっぽいしたのが邪魔で見難いが--そっくりだった。


「分かった奏翔ね。ところで、称号に『異世界人』って有ったけど、別世界の人?」

「そうだよ(さっき、ウェルティと話してたのはそういう事か?)」

「そう、『世界樹の加護』も授けられてるし信用出来るわね」


俺は、『世界樹の加護』を授けられてると何故信用出来るのかが理解出来なかった。


「何故?って顔をしてるわね。『世界樹の加護』を授けられるには条件があるの」

「条件?」

「そう。条件は2つある。1つ目は『世界樹』と深く同調して自分をさらけ出すこと。そして、『世界樹』に気に入られること、の2つね」

「って事は、俺は『世界樹』に気に入られたのか?」

「そういう事。1つ目の同調で過去に自分がしてきた事を『世界樹』に見られるの。そして、それが『世界樹』にとって好ましいものなら『加護』が与えられるのね。そして、『加護』の与えられると色々恩恵が有るんだけど、その中の1つに『精霊』の認識があるの。貴方の先程の様子からの推測だけど、多分急に私達を見える様になったでしょ?」

「なるほど、そういう事だったのか・・・(急に見える様になったのは分かったが、『世界樹』にとって何か好ましい事なんてしたか?)」

「・・・『世界樹』が好むのは他者を思いやる心。もしくは、自分を投げ捨てても他者を助けようとする心だ」


無口な筈のウェルティが急に喋った内容により、思い当たる事があったのを思い出した。


「・・・理解したよ(あの事故か)」

「なら良かった。あ、奏翔。精霊王様が呼んでいるから、精霊王様の所まで来て欲しいの、いいかしら?」

「精霊王?いいけど、何処に居るんだ?(マジか、このタイミングで精霊王と会うとは思ってなかったぞ・・・。会うのは、普通中盤くらいじゃね?)」

「『世界樹』の中よ」


その言葉を聞いて、人が通れるような穴とかが有るのかと、世界樹を見るがそんなものは無い。


「穴とか無いけど、どうやって中に行くんだ?」

「私達と一緒に行けば問題無いわ」


確認のため、ウェルティを見るとウンウンと頷いてる。

本当に問題無いらしい。


「分かった」

「じゃ、絶対に私達から離れないようにしてよ?変な所に飛ばされるかもしれないし」


飛ばされる・・・おそらく転移か何かするのだろう。絶対に離れないようにしようと、心に刻む。


2人(匹?とりあえず、人として扱うこととする)は宙を滑るようにして移動していく。(羽があるから飛んでいるのだ。)

慌てて立ち上がり、ジジイから貰った贈り物を拾い上げて追いかけると、2人は世界樹の幹に沿うようにして反対側へと向かう。

多分俺が座り込んでいた正反対の位置て止まると、2人はウェンティは左手を、ウェルティは右手を世界樹の幹に手を添えた。

そして、もう片方の手を俺に差し出してきた。

手を掴めと言う事らしい。

手を掴み2人の顔を見ると、


「絶対に手を離さないで」


とウェンティに釘を刺された。

頷いた瞬間に自分がグチャグチャになり、自分が立っている場所もグニグニしているような感覚が襲ってきた。

しばらくしてその感覚は消えたが、凄まじい吐き気がやってきた。

思わず座り込み、吐き気を堪えていると不意に背中に暖かいナニカ・・・を感じた。すると吐き気がスーッと消えていった。

ウェンティかウェルティが魔法か何かをしてくれたのだろう、礼を言おうと後ろを振り向いた俺が見たものは――――――――――――――――誰が見てもSAN値直葬間違いなしのバケモノだった。




2mを超える大きな体躯。その全身は筋肉で覆われており、まさに筋肉の鎧と呼ぶのが相応しい。

頭は後頭部辺りの髪のみを伸ばし三つ編みにしており後ろに垂らしている。それ以外の髪は剃りあげられている。所謂、辮髪べんぱつという髪形をしている。

服装は何故か和服。髪形と全く合っておらず、違和感MAXである。

そして背中からはウェンティやウェルティと同じ羽が生えている。もちろん、体に合わせたサイズである。


ここまでならまだ耐えきれたのかもしれない。

だが、やたら体をクネクネさせており、手を合わせるように組み、下半身のとある部分を(どことは言わない)を凝視してくる。


その熱視線を浴び、唖然としていた俺は正気を取り戻した。それがいけなかったのであろう。


「妖精たちの楽園、『妖精郷アルフヘイム』へようこそ!」


その一言とともにされたウインクが俺の精神に止めを刺した。


そこから後の記憶が全くない。



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今話獲得したスキル・称号・加護等一覧

加護:『世界樹ユグドラシルの加護』

称号:『世界樹に気に入られし者』


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