表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

第1話 サヨナラ



キィン、キン、リィン、ガリッ、キンッ、ガギッ!


剣と剣がぶつかり合い、澄んだ金属音が響く。

時折、鍔迫り合った時特有の剣が噛み合う音も聴こえる。


そんな音が響き渡る場所は、黒を基調としたシックな広い、とてつもなく広い平坦な部屋だ。

だが、天井は高く、ざっと6mくらいはありそうだ。その天井には水晶と思わしき物で作られた巨大なシャンデリアが釣り下がっている。


その部屋の奥の方にとてもシンプルだが、不思議と威圧感を覚えるような、玉座のような物が据えられてるから『謁見の間』と言うべきか。


この『間』は入口(大扉)から玉座まで約30m。

左端から右端まで20m。面積にして600㎡と言う広さ。


先程から響き渡っている音の発生源は、その部屋のほぼ中央にいる2人だった。


1人は、身長180cm程の大きな体躯を持ち、精悍な顔をしている。だが、今はその顔を厳しく引き締めている。

その体には黒い威厳溢れる鎧を纏い、その背には黒いマントを羽織っている。

手に持つは、シンプルな形状をしているおり、禍々しさを滲ませる、明らかに名品だと分かる両刃の黒い剣だ。

--この剣の銘は、ミストルティン。神すら殺す神殺しの魔剣である。

その凶悪な魔剣を持つ、この人物を一言で表すなら--魔王。

そう皆言うであろう風貌ふうぼうをしている。

実際、この人物は魔王である。


相対するもう1人は、175cmくらいで、相手より少し低い身長。こちらも顔立ちは整っており、普段ならば優しい表情を浮かべているだろう、その顔を歪ませている。その体に纏うは白銀の鎧。魔王と対を成すように白いマントを羽織っている。

手に持つは、こちらもシンプルな形状の片刃の剣。魔王が持つ魔剣ミストルティンが放つ禍々しさとは逆の、神聖さを滲ませている。

この剣の銘は--レーヴァテイン。勝利を導くと伝えられる神剣である。

その神聖な剣を持つ、その人物を一言で表すなら--勇者。

この人物もまた実際には勇者と呼ばれる存在である。


この2人の人物は、今までより一層激しい剣戟を繰り広げて数分、突如、呼吸を合わせるかのように引き下がった。

そして、


「・・・そう言えば勇者よ。貴様の名を聞いていなかった、名を教えて欲しい」


唐突に魔王が発した言葉に、戸惑いを隠せぬ勇者。


「・・・何故名を知りたい?この戦いが終わればどちらかの命は失われる。それ故に名を聞く必要は無いと思うが」


勇者は魔王の発した言葉の真意を掴めなかった。

故に問いに対し問いで返した。

すると魔王は、


「別段、何かをしようと言う訳ではないさ。そう警戒しなくてもよい。今迄、我が戦ってきた奴等は皆正々堂々と己の力と技、駆け引き、それを戦おうともせず、姑息な手段ばかりを使ってきた。例えば・・・人質を取る、などな。だが、汝は違った。己の力と技、駆け引きそれのみを使って、我とここまで戦っている。それ故に、興味が湧いた。名が知りたくなった。ただ、それだけなのだ」


そう、魔王は答え、ニヤリと男臭い笑みを浮かべた。

その答えを聞き、様子を見て何か理解出来たものがあったのだろう。


「・・・俺の名は、100代目勇者、✕✕✕✕だ。俺もアンタの名を聞きたい」


魔王は、その言葉を聞き少し意外そうな表情を浮かべると、


「我の名は100代目魔王、✕✕✕✕✕。✕✕✕✕よ、やはり汝は面白い。普通なら名を答えず、我の名を問うてくることすらせず、襲い掛かってくるだろう。だが汝は答え、それどころか我の名を問うてくる。他の人間共とは異なるようだ」


その言葉が聞き、✕✕✕✕は苦笑を浮かべて答える。


「そりゃ、俺達勇者は魔王との言葉も通じないし価値観も人を殺せば殺すだけ褒め称えられるし、褒美すらも出すクズったもんだと、協会の連中に教え込まれてきたらな」

「なんだその勝手な思い込みは・・・おかしいであろう」


呆れた様子で呟き、ため息をつく魔王。


「ま、そういうもんだろ」

「そうであるな」


互いに苦笑を浮かべ、場が張り詰める。


「「次で終わらせねぇとな(ねばならぬな)」」


真剣な表情で、終わりを宣言した。

俺は・・いつの間にか魔王と勇者、両者の視点から見ていた。


「いくぞ、魔王!」

「来い、勇者!」


俺達・・は同時に駆け寄り、



「「ウオォォォォォォ!!」」



ぶつかり合う。



直後、白い光が全てを埋め尽くした。




そして---




「何がウオォォじゃ、起きんかバカタレェェ!!」



バッシィィィン!!ゴンッ!!


そんな声と共に後頭部に衝撃が来た直後に、おでこを打ち付け、しばし悶絶する。

(なお、前が叩かれた時の音で、後が机に頭を打ち付けた音である。)


「いってぇ・・・」


そんな声を上げながら、体を机から起こした人物こそ俺こと、波多野はたの 奏翔かなとである。


「目が覚めたか?」


俺の状態を冷淡な様子で見ながら、聞いてくるのは、黒影くろかげ 一徹いってつ先生である。

このクラスの担任であり、国語と世界史、日本史の教科を受け持っている。

なお、先ほど手に持っているクラス名簿でぶっ叩いた人でもある。


「・・・うす。気を付けます」


起こすためだけに、思いっ切りぶっ叩いた事に抗議をしたいところだが、授業中に寝ていて、恐らく結構な大きさの声で寝言を言っていたようなので、何も言えないのだ。


「そうか。次、やったら廊下な」


そう言いつつ、黒影先生は教壇の方へ戻っていく。

因みに、他の連中は呆れた様子であったり、馬鹿にしてる様子であったり、笑っている様子、と同情するような者は誰も居なかった。当たり前か。


その後は特に何かあった訳でもなく、普通に授業は終わった。



問題が起こったのは学校が終わり、帰り道の事だった。



「毎日よくあの・・一徹先生の授業で寝られるよなぁ〜。尊敬するわ」

「好きで寝てるんじゃねぇよ。勝手にまぶたが下りてくんだよ」


俺が会話してる相手は、屋空野やぞらの 逸史いっしである。


顔は爽やか系イケメン。髪は茶髪。背は170cmと標準的な高さで引き締まった体型をしている。

彼女持ちの典型的なリア充である。爆発しろ!

なお、自分で俺はフツメンだから、等とのたまうので、よく男子の連中からメンチを切られる。

俺?勿論切るに決まってるだろ?


ま、メンチを切られることは合っても、運動もでき、勉強も出来るため、何かと頼られる事が多い。

勉強がヤバイから教えてくれと頼むと、本人も復習出来るからいいぞ、と言って教えてくれたりするため嫌われることはない。

リア充の鏡である。爆発四散しろ!


そんな事を考えていると、


「なんだかんだ言って、一徹先生はお前を気に入ってるんじゃねぇの?」


と、意味の分からん事を言ってきた。


「はぁ?一徹先生が俺をか?バカ言ってんじゃねぇよ、イケメンが。死ね禿げろ」

「いや、ちょ、お前だってイケメンじゃねぇか!」

「何言ってんだか、髪引っこ抜くぞ?」


フツメン(自分主観)に対して、イケメンと言ってくるイケメン。


「髪は抜くもんじゃねぇよ!話が逸れたじゃねぇかよ・・・。だってそうだろ?普通だったら無視して評価下げるだけじゃねぇの?」

「確かに、評価は何故か5なんだよなぁ・・・。テストの点と提出物は出してるとはいえおかしいよなぁ・・・」


因みに、俺が通っている学校はありふれた5段階評価を採用している。


「だろ?」

「ううむ・・・」

「ま〜考えても分かんねぇか。気に入ってるって事でいいだろ奏翔」

「そうだな」

「あ、そう言えばよ・・・」


思考放棄して別の話を初めて5分くらい経ち、逸史の彼女が合流してすぐの事だ、事件は起きた。


トラックがコッチに突っ込んで来たのだ。

逸史とその彼女は道端にいた猫を可愛がっており、全く気付いていない。

俺は少し離れた位置からその様子を見ていたため、気付くことが出来た。


気付く事が出来たが、距離がかなり近くになってからの事だったため、起こせる行動は限られていた。



自分は助かって2人を見殺しにするか。

2人を助けて、俺が死ぬか。



この2つしか無かった。



もう少し時間があれば全員何とかなったかもしれない。


Q:暇な時に見ているネット小説ならどうするか?

A:助けるに決まってんだろ(大抵)


「うおっ!」「きゃっ!」


立ってる逸史を思い切り突き飛ばし、座って愛でてる彼女を抱え上げ、突き飛ばされたせいで倒れ込んだ逸史目掛けて放る。

ついでに猫も放る。


「うげっ!」


彼女が逸史の腹の上にヒップドロップしたため、苦しげな声を出した逸史。

直ぐに誰が突き飛ばしてきたのか分かったのだろう。

怒った口調で、問うてくる。


「おい!奏翔何「ごめんな」・・・なっ!」


が、途中で割り込み謝る。

怪訝な顔をされ、驚愕の表情を浮かべる。


俺の方向に突っ込んでくるトラックを見たらしい。


何か言うことをないかと考えようかと思ったが、そんな時間も無さそうだった。

その時、頭に浮かんだ言葉があった。


「幸せを願っている」


笑顔でそう言ってやった。

逸史の奴は、泣きそうな顔をしていた。

彼女の方は、呆然としていた。


トラックの方を向いた。トラックが俺にぶち当たるまで約2m。


俺は目を閉じた。


体を途轍もない衝撃が襲い、俺は意識を手放した。



お読みいただきありがとうございました。

レビュー、ブックマーク等頂ければ嬉しいです(笑)

よければ、Twitterのフォローお願いします。

@Ishiyama_kakeru

更新した際の報告、小説に関わる報告等をしていく予定です。

アンケート等を行うことがあると思います。(例:クリスマスとかの季節的な閑話を作るか、どのキャラの閑話を作るかなど)

様々なアンケートを行おうと思っていますので、していただけたらなと(汗)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ