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第五話 海上戦闘Ⅱ

前に一話投稿しておりますので、先にそちらをお読みください






 それは突然の出来事だった。



「ぐあっ!」と言う声が後ろ、甲板の中央付近から聞こえ、振り返ってみると、俺と同年代くらいの少女が、長い金髪をたなびかせながらそこに立っていた。

 辺り一面を海で囲まれた船の上に誰にも気づかれることなく乗り込んだ少女が。

 足下には悲鳴の主であろう船員がくずおれている。



「大丈夫。峰打ちだから」



 ふと手元を見てみると見慣れない武器を持っていた。

 片刃の剣。それも非常に鋭利な刃を持った剣だ。

 刀身は雪のように白く、それはまるで穢れのない純潔のような。



「遅い」

「なっ!?速っ!ぐあっ!」



 少女の背後に音もなく忍び寄っていた信春さんは、いつの間にかその背後へと移動していた少女に打ち倒されていた。



「あなたが勇者の息子……」



 赤と青のオッドアイの瞳で周りを見回していた少女はそう言いながら、こちらにその視線を固定する。



「彼の息子と言うからどんなのかと思ったけど、期待はずれみたいね」

「父さんを知ってるのか!?」

「ええ、そうね。少しは……世話になったわね」

「何を言って」

「反応すら出来ないなんて……なんて弱い」



 首筋に冷たい物が当たっている。それが目の前で話していた少女であり、今この瞬間、目で追えない速さで隣に移動した少女であることに驚きを隠せなかった。

 アルノーさんと船室で話していたアイテルさんと真司さんも甲板での事態に気づいたらしく急いで出てきた。



「お前は一体何者だ?」



 真司さんは襲撃者である少女に問いかける。

 その答えは、隣にいたアイテルさんからもたらされた。



「まさか……ミーナ……なのか?」





 〜アイテル視点〜




「まさか……ミーナ……なのか?」

「ん?アイテル、知っているのか?」



 隣にいる真司が問いてくる。

 ここにいるはずのない……どこにいるのかさえ分からなかった妹が目の前にいることに動揺しつつ、何とか答えた。



「あ、ああ。あれは……行方不明の妹だ」

「ふふふふふ。久しぶりですね、兄さん。十年ぶりかしら?」

「ミ、ミーナ。お前は今まで……どこにいたんだ!?」

「どこに?」



 俺の問いかけにミーナは……妹は答えた。



「結社」



 それを聞いた真司は即座に戦闘態勢を取る。それを見て、俺は……



「アイテル。例えお前の妹だとしても結社のメンバーであるというのなら……ここで倒すぞ」

「倒す?……殺すではなくて?ふふっ……出来るのですか?」



 瞬時に真司の下へと移動したミーナは鋭い斬撃を浴びせる。

 それに反応出来たのは俺だけだった。

 ミーナの剣を俺は腰に挿していたデュランダルで受け止め弾く。二の太刀を浴びせようとした時には、ミーナは数m後方へと移動していた。



「真司。ここは任せて貰えないか?」

「……いいだろう。今の動きに俺は反応出来なかった」



 俺は真司から了承を得たことで一歩前に出てミーナと対峙する。



「結社を抜けて……戻ってくる気はないか?」

「ありませんよ。でも、お父様とお母様には久しぶりに会いたいですね」



 同時に動いた両者は甲板の中央付近で剣を何重にも打ち合わせる。



「その刀はいったい!」

「私が第十二席に取り立てて貰った時に創主(グランドマスター)より戴いた物よ!」



 その言葉に驚き、動きが一瞬止まった所で剣を弾かれ、そのまま胴体へと振るわれた刀を飛び退ることでなんとか回避する。

 それから幾度となく斬り結ぶが、巧い。

 どんな斬撃も逸らし流されるせいで、技術は俺よりも上なんじゃないかとさえ思えてくる。

 いや実際そうなのかもしれないが、気になるのは反撃をしてこないこと。

 護りに特化していて反撃する余裕がないだけなのか、それとも手加減しているのか。

 手加減されているようには見えないが。



「どうですか!私の剣は!」

「何故、結社の使徒マスターなんかに!?」

「そう。兄さんは私を認めてくれなかった。でも……結社は……結社だけは私を認めてくれた!そして私は十二席になったわ」



 俺はミーナの目を見る。ミーナの目に映る俺は苦しそうな顔をしていた。



「別に認めなかったわけじゃ……ない。お前にはただ……」

「ただ?」

「剣なんて振らない普通の少女になって欲しかっただけなんだ」



 俺の言葉を聞いたミーナは……激怒した。



「ふざ……けないでッ!私はッ!……私は剣を振りたかった。兄さんの隣に立つのが夢だったッ!……でも、私から剣を奪った……そんなくだらない理由で……ッ……!」



 俺は言葉に詰まる。ミーナからそんな話を聞いたことがなかったからだ。

 後悔という二文字が頭をよぎるがもう遅い。ミーナを含めない()()()()で決めたことだ。今更後悔なんて……意味が無い。



「雪月花。月・解放(ルナ・リリース)



 雪月花と呼ばれた刀が金色の光を帯び、周りを同じように金色の光る魔力マナの粒子が飛び交っている。



「デュランダル。一部制限解除(リリース)



 そして、力の一部を解放されたデュランダルが光り輝き、周囲からも光が集う。

 どんどん俺の魔力が吸い上げられる。

 未だに慣れないその感覚に胃からこみ上げてくるものがあるが、吐き出さずに飲み込む。



「いいんだな?」

「ええ」



 俺はミーナへ向けて、デュランダルを振るった。



「アポストロディカ・グラーディオ!」



 デュランダルから放たれた空間を裂く光の奔流がミーナへと届く直前────



「────反転(リバース)……一閃(ストライク)!」



 ミーナの振るった刀がその光を反射した。



 反射された光が俺を襲い、船内へと吹き飛ばす。止まった時には船内の一部が破壊されていた。

 ミーナを見ると、やはり完全には反射・防御が出来なかったのだろう。

 あちこち血が滲んでいる。時折、顔が苦痛に歪むことからどこかの骨が折れている可能性があるが、刀を支えに笑みを浮かべて立っていた。



「ゲホッゲホッ……はぁはぁ。流石は……兄さんですね。……私も……まだまだです」





 〜聡視点〜



 今の自分では目で追えない速さでの戦い。いや、魔力を目に集中させることで一時的に視力を上げているからギリギリ見えている。見えてはいるが……。



 ミーナの一撃を飛びずさり避けたアイテルはミーナと言葉を交わし、



「雪月花。月・解放(ルナ・リリース)

「デュランダル。一部制限解除(リリース)



 金色の光の魔力が周囲を飛び交うミーナ、周囲から光が集うアイテルさんの二人の姿は幻想的だと思った。



 アイテルさんから放たれた光の奔流をミーナは返す。

 返しきれなかった光は周囲に飛び交う蒼白い魔力にほとんど防がれていたが、それでも防ぎきれなかった分がミーナを襲う。



 そして、アイテルさんは船の一部を壊しながら船内へと吹き飛ばされ、ミーナは体のあちこちから血を滲ませながら刀を支えに立っていた。

 ミーナの剣に俺は憧れを抱いた。

 何故か。

 アイテルさんの剣はデュランダルが大剣と言うのもあり、技術も凄いがどちらかと言うと剛の剣と言える。

 しかし、ミーナの剣は巧い。ただただ巧い。

 それは、俺の目指す剣で、完成形。



 アイテルさんが甲板に出てきた。

 ミーナはふっと笑うと



「ゲホッゲホッ……はぁはぁ。流石は……兄さんですね。……私も……まだまだです」



 刀を鞘に収め



「分かってはいましたよ。兄さんが私に幸せになって欲しいと思っていたのは……」

「ミーナ……」



 ミーナはアイテルさんをさっきまでとは違い、どこか愛おしそうに見る。



「そろそろ、戻ります」

「待て!ミーナ!待ってくれ……ッ!」

「兄さん。また会いましょう」



 そう言葉を言い残し、その場から忽然と姿を消した。

 ミーナが立っていた場所を凝視していたアイテルさんに真司さんが近寄り、声をかける。



「大丈夫か?」

「……あぁ。ミーナは昔とあまり……変わってなかったよ」

「そうか」



 しばし無言の時間が流れる。



「俺は……剣を交わして、ミーナが戻ってくる気がないって分かった」

「諦めるのか?」



 アイテルさんは苦笑し



「いいや。ミーナがただいまって言って帰ってくるのを待つだけさ」



 こうして、結社のミーナの襲撃は終わった。

 俺にはこんな予感がする。

 これから先、ミーナも含め結社と深く関わっていくことになる……と。



 第一章〜完〜

戦闘シーン、分かりづらかったらすみません。

単純に作者の技量やら何やらが足らないせいです。

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