第四話 海上戦闘Ⅰ
PV数が少しづつ少しづつ伸びてきて嬉しいです
三話連続更新です。一話一話は短いですが、その分楽しめていただけたらなと思います。
誤字脱字報告や感想などをお待ちしております
※2018年7/6ハスタムとジャベリンですが、ジャベリンに統一します。
港町を出航してから、魔法師団の方々と自己紹介を交わす。
鋭い目つきをしていて、六人の中ではリーダーとして指揮を務める小宮 真司。
ツンツン髪でガタイが良く豪快な性格をしている八島 信春。
小柄で中性的な顔立ち、幼少期にユニオールから来たというジーン・トルーマン。
ジーンの妹で同じく小柄なリリー・トルーマン。
おどおどしていて、目もとが前髪に隠れている南 詩織。
長い髪を後ろでまとめポニーテイルにしてる勝気そうな性格の伊勢 晴香。
六人とも聖アレイシア学院小等部で知り合い、今もこうして仕事を続けているとのことだった。
南 詩織とリリー・トルーマンが後衛、ジーン・トルーマンと伊勢 晴香が中衛、八島 信春が前衛、隊長の小宮 真司が遊撃を務めている。
この中でも小宮 真司は別格で、下位種とはいえSランクの魔物を単独撃破したことがあり、魔法師団北方支部でも副司令の肩書きをもつ人物だ。
「そのような方が何故ここに?」
「敬語は不要だ。何故ここにいるのかという質問にはこう答えるしかないな。ジオール連邦国での任務だ」
「任務ですか?」
「流石に任務の内容は言えんぞ。それと、俺の呼び方は何でもいい。好きにしろ」
真司さんはそう言うと、浩介たちと談笑している隊員たちの元へと向かった。
「あの身のこなし……一流だな。彼の拳は何があっても受けたくはない」
「アイテルさん」
「どうした?」
「真司さんは武器を使わないのですか?」
「そうみたいだ。推測するに、彼は拳と脚に魔力を集中させ、高速移動からの一撃を加えて離脱。つまり一撃離脱っていう戦法を得意とするんじゃないかと思う。まあ普通に肉弾戦もしそうだけど」
「よ、よく分かりますね」
「多少はな」
港を出航してから一時間と少しが過ぎた。
魔物の襲撃もなく、青く穏やかな海が広がっている。
空は少しばかり雲を被っているが、概ね平和だ。
「何も起こらなければいいのにな」
「そうだね。そうすれば誰も傷つかずに済むもんね」
千夜が気づいたら近くに来ていた。
さっきまで隣にいたアイテルさんもいつの間にかいなくなっていたので、辺りを見回してみると、真司さんと話している姿が目に映る。
浩介と夕陽はまだ仲良く魔法師団の人たちと談笑中のようだ。
「ラファエルさんはまだ?」
「うん。船酔いまだ治らないみたい」
「辛そうだったもんな」
ラファエルさんは出航して幾ばくかもしないうちに気持ち悪さを訴え船員に連れられ部屋で横になっている
顔を青くし息も絶え絶えな状態だったのが和らいでたらいいなと思いながらも話を再開する。
余談だが、空を飛ぶのと船に揺られるのでは感覚が違うらしい。……本当なのかはよく分からない。
「あの人達の話を聞いてみてどうだった?」
「ためにはなったかな」
「そうなんだ」
「素早く動く魔物や魔獣には"エアーマイン„を周囲に発動して動きを制限するとか、色々な話を聞けたよ。あとは」
「あとは?」
「真司さんはあの中でもやっぱり別格だって」
魔物にも上位と下位が存在する。下のランクに近い場合は下位、上のランクに近い場合は上位と区別している。下位と上位の中間くらいの強さをもつ魔物を通常種、本来のランクよりも上のランクとなっている魔物を変異種と呼称している
例えば、本来はCランクの魔物がBランクになっていたなどである
「非公式だと、Sランクの通常種も倒してるって」
「…………え?」
「いや、だから、通常種を倒してるって」
「英雄に匹敵する実力を持ってるってこと?」
「そうなるんじゃないかな」
真司さんの強さを知り、慄いている頃。
「Sランクの魔物は表皮が非常に硬く、普通の攻撃、中級以下の魔術はほとんど効かないだろ?素手でどうやって倒しんだ?」
「簡単だ。自分の魔力を衝撃波に変換し、相手の内部に直接叩き込んだ」
「ははっ……えげつないな」
「対魔物用に編み出された近接格闘術なんてそんなものだろ」
近接格闘術はその名の通り、近距離での殺し合いを想定して生み出された戦技だ
普段は攻撃を受けてもある程度は威力を緩和できるように無意識の内に自身の身を魔力で覆っている。
それを意識的に拳と脚に魔力を集中させることで、一撃の威力や移動速度を向上させたりするという技術だ。
極めると相手の攻撃は掠りもしなくなる。
しかし、これにはデメリットもある。
自身の身を覆っている魔力を拳と脚に集中させるため、胴体への一撃等をくらうと即座に戦闘不能へ追い込まれる危険性がある。
「通常種も倒したってことは極めたのか?」
「極めてはいない」
「ん?だがそうすると、どうやって?」
「瀕死の重症を負って倒れていてな、魔物ももう動けないと油断したんだろう。近づいてきた瞬間に残っていた魔力を叩き込んだ」
「え……その後、どうやって帰ったんだ?」
「任務行動中の出来事だったからな。雑魚を倒し終えたあいつらにおんぶされながら南方支部に戻った」
「いろいろあるんだな」
「ああ。いろいろあるんだ」
昼休憩も終わり、和やかなひと時。このまま何も起こらないと思われた矢先にそれは起こった。
「索敵に反応あり!前方300度の方向!ここから8kmの地点!数は二十!あ、いや、二十一、二十二…………二十八です!」
「あとはいないな!」
「3m級が五!4m級一!他は2m級です!」
「アイテル」
「3m級は全て請け負う。4m級は頼んだ」
「分かった。総員戦闘準備!」
それは突然の出来事だった。
ジーンの"索敵„に魔物が引っかかったのだ。
全員が油断なく構え、魔物の出現を待ち構える。
「キエェェェェェェ」
辺りに甲高い鳴き声が響き渡り、前方に飛んでいる魔物が見え始めた。
目は落ち窪み、体は紫色をした鳥の魔物だ。
鳥が魔へと変じた姿、怪鳥。それ単体ではDランクとされているが、基本的に五体以上の群れで行動し人を襲う。
そのため、群れで行動している場合のランクはD+〜C+。通常種の大きさは体長2mでくちばしの長さは50cm。上位種は3mの1m。稀に存在する変異種はB-ランク、4mの1m50cmと巨大である。
「詩織!リリー!」
「「了解!」」
真司さんに名前を呼ばれた詩織さんと、リリーさんは怪鳥を見据え魔術を発動する。
「"ウインドボム„!」
「"アクアパイル„!」
二人が発動した魔術は通常種を三体程巻き込み爆発し、上位種一、通常種四を海面から出てきた杭が貫いていた。
「残りは二十体か」
「変異種が統制しているようです。発動する直前に何か支持を出してました」
「やはりか。ん?障壁展開!」
「"前方魔力障壁„ !」
「クァァァァァァァァ!」
変異種が翼を羽ばたかせ"ウインドカッター„ を発動したが、船に届く直前にタッチの差で信春さんが障壁を展開。
ウインドカッターを無傷で切り抜けた。
「クアッッッ!クアッ!クァァァ!」
「「「「「「クアッ!」」」」」」
変異種が鳴いたと思ったら、他の怪鳥も風の刃を障壁へと叩きつけ始める。
怪鳥による魔術の一斉攻撃を受けて、障壁が徐々に削られ始める。
「マズイな」
「マズイですね」
「お前らは通常種を相手しろ!変異種と上位種は俺とアイテルで叩く!」
アイテルさんと真司さんは同じタイミングで海へと飛び出す。
二人とも海の上を走りながら怪鳥へと近づいていく。
「それじゃあ私らは通常種を落とすよ〜」
「準備は出来てる」
「詩織。指揮はお願いね」
「分かりました。それでは始めましょう」
詩織は夕陽と同じく戦闘になると冷静になり、的確な指示をだすようになるらしく、この戦いは一方的となっていた。
「残りは七体。晴香、ジーン、信春!下がって!リリーお願い!」
「オッケー。決めてみせるんだから!"魔を滅せよ浄化の光„!」
リリーが詠唱を終えたのと同時に、詩織さんの指示通りに三人ともリリーの後ろまで下がる。
そして、空中に展開されていた巨大な魔術陣から魔を浄化する光が無差別に放たれ、残っていた通常種を殲滅した。
「はぁ疲れた」
「お疲れ様〜。でも、もう少し狙いつけようよ。後で真司から小言貰っちゃうよ?」
「それは嫌だな〜」
「あ、ほらこっちに戻ってきてる」
晴香の指さした先には、アイテルと真司がこっちへ走ってきていた。
「よいしょっと」
「隊長お疲れ様です」
「ああ。リリー!」
「は、はい」
「あれはなんだ!魔術は狙いをつけて撃てと言っているだろう!」
「え?あ、いや、ごめんなさい」
「陸に着いたら説教な」
「それだけは勘弁してください」
「ええい、引っ付くな」
戦闘が始まった瞬間に、信春が飛び出し一体の首を切り落とし、翼を広げ突撃してきた怪鳥を軽くいなしてそのまま首を切り落とす。
晴香は"捕縛の鎖„ で二体の動きを封じ、その間に信春が三体を風爆に巻き込み倒す。
ここまでで約一分。
捕らえた二体を信春が斬り伏せ、上空に飛び立った一体を詩織の"ファイヤショット„ を頭に命中させて落とし、リリーが詠唱を終わらせたのを見計らい詩織が三人を下げ、リリーの魔法で残りの七体を撃ち落とす。
ここまでで約二分の出来事である。
この間、アイテルは上位種二体を同時に斬り伏せ、離れていく二体をライト・ジャベリンで貫く。
真司は魔力を集中させている脚を変異種の頭に踵落としの要領で叩きつけ粉砕した。
「す、凄い」
「これが上の戦い」
「最初の指示は全部」
「うん、アイコンタクトだった」
「最低でもあのレベルにはならないと駄目なのか」
「四人ともそう悲観するな」
「アイテルさん、でも」
「確かに、最低でもあのレベルにはなってもらいたいけど、それは今すぐってわけじゃない。終焉魔王との決戦までに出来るようになればいいんだ。だから、そう暗い顔するな、な?」
四人で顔を見合わせ、
「分かりました!」
と、頷いた。
その後は怪鳥の襲撃も無く、日が沈んでから風流、水流操作役の人は代わり、夜が更けていった。
明日、あんな事が起きるとも知らずに……。
補足
魔法師団と騎士団の違い
魔法師団も剣などを使えるし、騎士団も魔術を使うことが出来ます。それなら、違くする必要ないと思うかもしれませんが理由があります。
理由
魔法師団は魔法メインで騎士団は接近戦メイン。騎士団は魔術と言っても身体強化や防御魔術に秀でていて、魔法師団はそれらも含め魔術を総合的に扱える。
魔法師団
王城に本部があり、王城から南の地域に南方支部を、北の地域に北方支部を置いています。
王城の位置は皇居の辺りだと思って頂いて結構です。